ベントレーモーターズ ジャパンは12月21日にコンチネンタルGTのオープンモデル「コンチネンタルGTC」と2012年1月に北米で開催されるデトロイトショーでワールドプレミアを予定している「コンチネンタルGT V8」をひと足早く日本で初披露を行った。
コンチネンタルGT V8はフルタイム4WDで、搭載されるエンジンはアウディとの共同開発で誕生した4.0L V8型直噴ターボエンジンを搭載している。開発のトピックには、2008年ジュネーブショーで約束した2012年までにベントレーのハイパワーとトルクという伝統を損なわず、これまでと同等のパフォーマンスを持ちながら燃費とCO2排出量を40%削減するという目標があり、まさに、今回お披露目されたV8モデルがこのモデルとなる。
このV8型モデルはコンチネンタルGTとGTCに搭載され、W12気筒6.0Lモデルのダウンサイジングモデルとして、既納のユーザーではなく、新規ユーザーの獲得を目指す基幹モデルとして導入ということだろう。つまり、従来のW12気筒6.0Lモデルが持つエレガントさ、ラグジュアリーさ、プレステージ性とは違い、若々しさや、アグレッシブさ、そしてベントレーのもつ力強さを求める世代を取り込むということだ。
実際W12気筒6.0Lモデルの575ps/700Nmに対してV8型4.0Lモデルは507ps/660Nmという見劣りのしないスペックになっている。さらにダウンサイジングエンジンということで、燃費もCO2排出量も40%低減でき環境性能への配慮もされた、新世代のモデルということも言えるだろう。
エンジン
搭載されるエンジンは4.0LのV型8気筒直噴エンジンで、Vバンク内にはツインスクロールタイプのツインターボが装着され、組み合わされるミッションはZF社製の8速ATである。
このエンジンの特徴のひとつに、低負荷や高速などでのクルージング時に4気筒運転へと可変することである。ベントレーでは可変シリンダーと呼んでいるが、これはカムシャフトが軸方向へスライドすることで、バルブ開閉をさせず、閉じたシリンダーは空気バネとして動いている。これはホンダが開発したエンジンと同じ方式の気筒休止エンジンだ。気筒休止中はインジェクターも停止するので燃料はまったく噴射されないため、省燃費に大きく貢献している。
ターボは、Vバンクの内側に配置されるリバースフロー・コンフィギュレーションレイアウトとしている。エキゾーストマニホールドの排気エネルギーをより効率的に利用するという仕組みで、BMWのV型8気筒エンジンもこのレイアウトを採用している。搭載しているタービンはツインスクロールタイプとし、低回転からのレスポンスを向上させている。過給圧は1.3Barと異例なほど高い。
このツインスクロールタイプのターボチャージャーを2基装備し、1700rpmから最大トルクを発揮するエンジンとしている。
燃料噴射は直噴化されており、吸気にはタンブルフロー・コントロールシステムを採用することで吸気効率、燃焼効率をあげている。つまり、低負荷時にシリンダー内へ流入する気流に縦方向での渦流(タンブル)を発生させることで均質な混合気を生成し、もちろん横方向のスワール過流もコントロールし、タービュランス(乱流)を制御して燃焼を高効率化している。そして直噴化とすることでポンピングロスが少ないというメリットも生まれてくる。
また、エキゾーストでも4気筒、8気筒のそれぞれの運転時では排気流路を可変させている。ソレノイドのスイッチングバルブを装備し、エンジンの運転状況をモニターしながら、最適にチューニングされたバランスチューブと非対称マフラーによって高効率で排気されている。
組み合わされるミッションはZF製の8速ATで、このトランスミッションの特徴のひとつは、6速ATと同じ大きさで8速のギヤが組み込まれているため、小型・コンパクトでありながら変速比幅が拡大できる、というが挙げられる。変速比幅を拡大することで、より低いエンジン回転数でドライブでき、6%の燃費向上があるという。また、飛びギヤシフトができることもこのミッションの特徴で、ベントレーではブロックシフティング・テクノロジーと呼んでいる。これはアクセルを踏み込んだときなどに、ギヤと飛ばしてダウンシフトし5速→3速というシフトチェンジをする。
また、専用の冷却クーラントサーキットを採用しているため、ホットなクーラントをウオームアップ時に送ることができため、摩擦抵抗低減に役立っている。
これらの最新テクノロジーを搭載することで507ps/6000rpm、660Nm/1700rpm〜5000rpmというスペックを搾り出し、W12気筒6.0Lエンジンにも引けをとらないハイパフォーマンス・ユニットに仕上げてきている。トップスピードは290km/h以上、0-100km/h加速は5秒以下という性能にあわせて、フルタンク(数値未発表)で800kmの航続距離をもつという省燃費も同時にアピールしている。
エクステリア・インテリア
ディメンションはまだ、未発表である。こちらはデトロイトショーを待たねばならないが、ベントレーのスポーツモデルには伝統的に赤バッヂを採用しており、このV8モデルにはボンネットのBマーク、4本のホイールセンターキャップに赤色のBマークが装着されている。
W12気筒モデルとの外観上の違いではこの赤バッヂ(W12気筒は黒バッヂ)以外に、フロントグリルがブラックグロスのマトリックスグリルになっており、バンパー部もワイドに広がりがあるデザインになっている。リヤビューではテールパイプがW12気筒の楕円に対して8の字を横にしたデザインになっている。リヤバンパー下部にあるディフューザーもブラックアウトされ精悍さの漂うデザインである。インテリアではフロントのアームレストがシングルになり、専用のウッドパネルを採用。センターコンソールはW12よりショートタイプとなっている。
価格はもちろん、未発表だが2000万円前後が予測され、導入時期が待ち遠しいモデルである。
コンチネンタルGTCがデビュー
2011年8月24日にコンチネンタルGTCの二代目が発表され、クーペモデルであるコンチネンタルGTのコンバーチブルモデルがこのGTCで、9月のフランクフルトショーでワールドプレミアされていた。それが、この日国内導入ということで発表された。
発表されたコンチネンタルGTCは、時代を超越した美しいデザインと相まった高いパフォーマンスと実用性を持った唯一無二の4シーターコンバーチブルとして発表している。伝統継承と最新技術の融合、パフォーマンスと実用性、力強さと洗練性、スポーティさと快適性という相反する要素を調和させたモデルとしている。
まず、エクステリアではグランドツアラーとしての役目を損なわないためにも、トランクスペースを犠牲にしない多層ファブリックルーフというソフトトップを採用している。とはいえ、遮音性を高めるために、ボディ下からのノイズを低減するためにアコースティック・ホイールライナーの採用やアンダーシートを採用し、またフロントウインドウ、サイドウインドウに静粛性の高いアコースティックガラスを採用することで、室内への遮音性を高めている。
また、エクステリアの造形では、500度に熱したアルミパネルを空気圧で成形するというスーパーフォーミング技術をフロントフェンダーで採用し、継ぎ目がなく、高剛性、軽量、そして職人技のような複雑な造形が可能になっている。ディメンションは全長4806mm×全幅1943mm×全高1403mm、ホイールベース2746mmで車両重量は前モデルに対して、-25kgの2495kgとなっている。
インテリアでの主要要素として、ルーフ格納時にエクステリアとインテリアが完璧に調和するするスタイルとすることで、キャビンはフロントからリヤにかけてひとつの流れとしてデザインされている。
そのキャビンデザインではベントレーのモチーフである広げた羽を巧みに取り入れたインパネからはじまり、ハンドステッチされたレザー製のトノカバーまで及んでいる。シートにはヘッドレスト一体型のコブラスタイルデザインが採用され、前席は初代のGTCより-25mm薄く、そして、後席のニースペースは35mm広くなっている。
採用されるインテリアカラーは17色のソフトタッチレザーハイドがあり6種類の組み合わせで提供される。さらに、6種類のウッドパネルでも彩りを添えている。
パフォーマンスユニット
搭載されるエンジンはW12型6.0Lターボエンジンで、初代の560psから575psへとアップ。トルクも50Nm増え700Nmとなっている。また、このエンジンはE85バイオエタノールにも対応し、混合燃料のどの割合でも走行可能となっている。最新の燃料品質センサーを搭載し、使われる燃料の割合は常にモニターされているという。
駆動方式はコンチネンタルシリーズ全車共通のフルタイムの4WDで、初代のGTCが前後トルク配分が50:50であったのに対し、新型では40:60と、リヤへの配分が多くなっている。組み合わされるミッションはZF社製の6速ATで、200mm/secという素早いクイックシフトが可能になっている。また、ダブルダウンシフトが可能で6速→4速というダウンシフトができる。
これらを採用した結果0-100km/h加速は4.8秒、最高速314km/hが達成されている。こうしたパフォーマンスをオープンボディで支えるために、世界最高のねじれ剛性を持ち、静的剛性で22500Nm/°を誇る。この高剛性のボディは、Aピラーとサイドシルを補強し、フロントとリヤのサブフレームをつなぐクロスビームを追加することで剛性をあげ、オープンボディでよくあるブルブルとしたスカットルシェイク振動を抑えている。これにより、精密なサスペンション制御もでき、CDC(連続可変式ダンピングコントロール)の4種類のモードも正確に作動できる。高強度のアルミ鍛造サスペンションは拡大したトレッドをしっかりと支え、ハンドリングレスポンスと安定性において力を発揮するモデルとなっている。
装着されるタイヤ&ホイールは標準が275/40-20、オプションで275/35-21が用意されている。タイヤはピレリのP ZeroでコンチネンタルGTC専用に開発された専用タイヤを装着する。
国内へのデリバリーは2012年第二四半期からということで、7月以降に2640万円で販売されることになる。