アウディTT試乗記 3代目も指名買い要素満載だ

マニアック評価vol375
2015年8月に発表された3代目アウディTTに試乗してきた。欧州デビューは2014年のジュネーブショー。そして欧州販売が同年7月なので、国内には約1年遅れで導入されたことになる。試乗コースは神奈川県の葉山マリーナ周辺の一般道と高速道路で、台風来襲さなかの試乗だった。<レポート:髙橋 明/AkiraTakahashi>

アウディTTS

アウディTTS

9年ぶりとなるアウディTTはフルモデルチェンジを行なった。先代のアルミスペースフレーム構造は当時、革新的な技術として注目を浴びたが、今回の3代目はフォルクスワーゲンの進めるモジュール化を採用したMQBで、なかでももっともコンパクトなサイズで構成している。詳細はこちらを一読いただくとわかりやすい。

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したがってエクステリアデザインにも大きな変化があり、短い直線と横への広がりをデザインし、フラッグシップモデルのR8やWECマシンR18へのオマージュも含めたものになっている。たとえばアウディの4リングスはグリル内ではなく、ボンネット上に配され、LEDヘッドランプにはR18に採用している縦2本のLEDが新型TTに採用している。レーシングカーやフラッグシップモデルとの親和性の高さを感じさせ、所有欲をそそる。

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またアウディTTは独特の世界観のあるモデルで、ある意味ライバル不在で、指名買いモデルという特徴がある。あえて言うならポルシェ・ボクスターやケイマンユーザーが気にするモデルかも知れない。他のプレミアムモデルのラインアップではセダンが中心で、派生モデルにハッチバックやステーションワゴンがあり、さらにAMGやMなどのエボリューションモデルがある。

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アウディのようにフラッグシップにR8のスーパースポーツがあるのはAMG GTやSLSと同様だが、TTのようなプレミアムのエントリークラスにもピュアスポーツカーをポジションさせていているのはアウディだけだ。こうしたこともブランドイメージ向上にはプラスに働く。

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2.0LターボのTFSIエンジン。出力に差がある2タイプを用意

国内導入されたTTに搭載するエンジンは2.0LのTFSIで、230ps/370Nmと286ps/380Nmの2機種。ハイパワーエンジンはTTSにだけ搭載される。ミッションは全モデル6速Sトロニック(DCT)を搭載する。JC08モードでは230psのTFSIは14.7km/Lでロードスターは14.4km/L。TTSクワトロに搭載される286psTFSIは14.9km/Lともっとも燃費がいいというデータになっている。

アウディTT
アウディTTクーペ。2+2タイプ

国内導入のモデルバリエーションはTTクーペのFFとクワトロ、TTロードスター(クワトロのみ)、そしてTTS(クワトロのみ)の4モデル。TTロードスターはオープンボディゆえに、サイドシルからリヤホイールハウスまで補強され、部材もアルミを採用するなど、剛性面でも違いがあるが、今回は残念ながら試乗できなかった。

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アウディTTS。ハイパワーバージョンのクーペで2+2

試乗車はTTクーペとTTSでともにクワトロ。前述のようにエンジンの出力には差があるモデルだ。ともにMQBプラットフォームを採用し、アルミと超高張力鋼板の複合材というボディで、2代目とは全く異なるボディ構造の2モデルだ。

インプレッション

注目はバーチャルコックピットとよばれるインテリア。メーター周りとMMI、アウディコネクトを駆使し、さまざまなインフォメーションが得られる。インターネットとは常時接続され、Googleアース、ストリートビューなども表示可能。さらに車内がWifiスポットとなるため最大8個の端末と接続が可能で、ネットサーフィン、メールも使える。が、今回は試す余裕がなく、見た目のインパクトが大きいナビゲーションだけを体験した。

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メーターパネル内に表示される2眼式のデジタルメーターの間にマップを表示するのが、クラシックビューモードで、速度計、回転計を小さく表示しマップを最大限に表示するのがプログレッシブビューモードと呼んでいる。切り替えはステアリングのスイッチひとつででき、視線移動の少ないナビ操作はドライバーの負担を減らす。<次ページへ>

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インテリアの印象はプレミアムスポーツカーに相応しい豪華さと、スポーティさがあり、またアウディらしくインテリアの存在感、高級感の演出も好ましい。余談だが、ボディ剛性を高くするためサイドシルは分厚く、またスポーツカーゆえに着座位置が低いため、乗降時にはスカッフプレートにふくらはぎが触れる。雨の試乗会だったので、おかげでズボンのふくらはぎ周りはビショビショになった。

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走行性能で注目したのはアウディドライブセレクトとプログレッシブステアリングの機能。アウディクワトロはオンデマンドの4WDで前後のトルクベクタリングを行ない、最大フロント100:リヤ0、反対にフロント0:リヤ100までトルク変化が可能。だが、ドライバーがそのトルク配分の変化を感じることはない。

そのドライブセレクトの5つあるモードの中で、エフィシェンシーをセレクトするとフリーホイールモードが稼動し、スロットルをオフしたときに滑空しコースティングモードになる。

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このときエンジンはアイドリング状態となる。再びアクセルを踏み込むとクラッチがつながるが、その際のショックはほとんど感じない。また、TFSIにはシリンダーオンデマンドを搭載するモデルがあるが、このTTシリーズには搭載されず低負荷時の気筒休止は行なわれない。

もうひとつのプログレッシブステアリングはハンドルの切り込み量が多くなるとギヤレシオが速くなる機能で、駐車場などでの切り返しの際、少ない操作で切り返せる。もちろん一般走行時にギヤレシオの変化を感じることはなく、ステア操作にたいする動きは正確に感じる。

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TTクーペにオプションの19インチを装着
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TTSは標準の18インチを装着

乗り心地では、TTクーペにはオプションの245/35R19サイズのブリヂストンのタイヤを装着していたがコンフォート性は高いと思う。もちろんセダンと比較してしまえば硬いが、ピュアスポーツカーでインチアップしたモデルを考えれば、という意味だ。

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一方、TTSは標準装薬の245/40R18を履いていた。こちらのモデルは「アウディSシリーズ」に属するハイパフォーマンスモデルなのだが、タイヤサイズの影響もありまた、ダンパーにはマグネティックライド(磁性流体ダンパー)を標準装備するため、乗り心地がかなり違う。エフィシェンシーであれば相当なレベルでコンフォート性が高く、スポーツを選べばサーキット走行も可能なアシに変化する。

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いずれにしても、硬めではあるもののそこはプレミアムブランドであるわけで、チューニングカーのようなヒョコヒョコしたような動きをすることはないので、心配無用だ。

さて、エンジン出力の違いについてだが、今回の試乗ルートではその違いについてあまり言及できない。馬力差を感じられるシチュエーションもなく、またトルクではわずか10Nmの差を感じ取るのは難しかった。スロットル開度は10%とか20%がせいぜい。フル加速できる場面もなく、一度トライしたのが高速での合流地点。230ps/370Nmでも1370kgの軽量ボディには十分パワフルで、満足度も高い。また出力特性の違いを大きく差をつけているわけでもないので、どちらも速く、パワフルだという印象しか持てなかった。

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新型アウディTTは、ローンチ後TTSやTTクーペクワトロの販売が好調だという。いわば新型TTを待ち望んでいたユーザーたちだろうと想像するが、これからFFモデルも人気になるのではないかと思う。これだけ個性的なルックスを持ち、アウディブランドのプレミアム感があり、そしてスポーツカーであるという立ち位置に満足できない理由はない。

価格表

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