アウディ本社は2024年2月6日、新型の超高性能モデル「RS6 アヴァント GT」を発表した。RS6はシリーズの頂点に君臨するスーパースポーツモデルで「RS6 アヴァント GT」は最高峰に位置する特別なモデル。世界で660台が販売され、デリバリーは2024年第2四半期から開始される予定だ。
■コンセプトとデザイン
このスペシャルモデルの構想は、2020年にクワトロ誕生40周年を記念した、ネッカーズルム工場の研修生グループによるプロジェクト「RS6 GTOコンセプト」に遡る。
ボディワーク、車体構造、車両メカニック、塗装工、金型工としてアウディで働いていた12人の研修生が、アウディ・デザイン部の支援を受けて、6か月間このプロジェクトに取り組み、1989年に登場した伝説的な「アウディ90 クワトロ IMSA GTOレースカー」からインスピレーションを得てこのモデルを製作した。
RS6 アヴァント GTは、「RS6 GTOコンセプト」をベースに、さらにエクステリアを強調することで、シリーズの他のモデルであるRS6 アヴァント、RS6 アヴァント performanceを超える存在感がある。シングルフレームとエアインテークはハイグロスブラックで仕上げられ、より低く、より幅広い印象を与える。フロントエプロンの垂直ブレード、新しいインテークグリル、バンパーに統合された力強いフロントスプリッターがシャープな外観を強調する。
22インチ大径ホイールの後方に統合されたエアアウトレットにより、ホイールアーチ内のエアが効果的に排出され、ブレーキの冷却性能が向上。ボンネットと同様、大径ホイールを収納するフェンダーも、今回初めて完全にカーボンファイバーで製作され、画期的な試みとなっている。
ボディサイドは、サイドスカートのインサート、グロスカーボンのカバーを備えたドアミラー、専用の22インチ・6スポーク・デザインのホイールが特徴だ。このスペシャルエディションのリヤは、ブラック仕上げの「RS 6 GT」エンブレム、ローディングエッジを視覚的に低く見せる専用デザインのテールゲート、車両の幅広さをさらに強調する垂直センターリフレクターを備えた機能的なディフューザー、モータースポーツからヒントを得たダブルウイングが特徴だ。
ダブルウイングは、研修生によるコンセプトカーに装着されていたものとほぼ同じものが採用されている。また、Audi RS6 アヴァント史上初めてルーフレールを廃止することにより、よりフラットでスポーティなシルエットを実現している。
インテリアカラーはブラックで、ステアリングホイールのステッチ、センターコンソールのサイドセクション、センターアームレスト、ドアアームレストには、レッドまたはカッパー(銅)の専用カラーアクセントが採用され、フロアマットには「RS6 GT」のレタリングが配されている。
さらに、レザー/ダイナミカマイクロファイバーを組み合わせた新しいRSバケットシートも装備され、ヘッドレストのすぐ下にも「RS6 GT」のレタリングが配されている。シート中央のハニカムステッチには、コントラストカラーのエクスプレスレッドが採用され、バケットシート外側の縫い目はカッパーカラー仕上げとなっている。
アームレスト、ダッシュボード、サイド部分を含むセンターコンソール、ドアウエストレールの生地はブラックのダイナミカ製で、装飾インレイには、ディープブラックのダイナミカが採用されている。装飾インレイは、オプションとして、素地が露出するオープンポア仕様カーボンツイルを選択することも可能。シートベルトのカラーには、人目を惹くクリムゾンレッドが採用され、さらにセンターコンソールには、このモデルが660台限定のリミテッドエディションであることを示すシリアルナンバーが刻印される。
■圧倒的なパフォーマンス
RS6 アヴァント GTに搭載されるエンジンは、最高出力は463kW(630ps)、最大トルクは850Nmだ。これは、ベースモデルとなるRS6 アヴァントと比較して、22kW(30ps)、50Nmのパワーアップである。
0~100km/h加速は、シリーズのトップモデルとしての実力を示し、ベースモデルよりも0.3秒速い3.3秒。0~200km/h加速は11.5秒。最高速度は305km/h。ブレーキは、RSモデルに標準装備されるセラミック・ブレーキシステムを搭載している。
4.0 TFSIエンジンにはシフトタイムが最適化された8速ティプトロニック・トランスミッションを介してクワトロ・フルタイム4輪駆動システムに伝達される。またセンターデフ部には最新バージョンのロッキングセンターデファレンシャルが搭載されている。
この軽量かつコンパクトなデファレンシャルは、エンジンパワーをフロント、リヤに40:60の比率で配分する。ホイールスリップが発生した場合、より多くの駆動トルクが、よりグリップの高いホイールに自動的に配分され、トラクションを向上。この場合、最大70%をフロントアクスルに、最大85%をリヤアクスルに配分することができる。
設定が見直されたセンターデファレンシャルによってドライビングダイナミクスがより向上し、正確なコーナリングを実現し、限界走行時におけるアンダーステアの傾向を軽減させている。
また、リヤアクスルのクワトロ・スポーツデファレンシャルには、専用チューニングが施されている。俊敏性の向上を狙い「ダイナミック」モード選択時にはリヤアクスル重視のトルク配分をする。これにより、スポーティでありながらもニュートラルで精度の高いハンドリングを実現している。
そしてRS6 アヴァント GTには、今回初めてアジャスタブルコイルオーバー・サスペンションが標準装備されている。このサスペンションは、Rベースモデルと比較して車高を10mmローダウンし、優れたダイナミクスと快適性を完璧に融合。より高いスプリングレート、3段階に調整可能なダンパー、より硬いスタビライザー(フロントで30%、リヤで80%アップ)により、ボディのロールが減少する。
さらに、ダイナミックライドコントロール(DRC)機能を備えたRSスポーツサスペンションプラス、またはRSアダプティブ・エアサスペンションをオプションで選択することもできる。
タイヤは、コンチネンタルSport Contact7(サイズ285/30 R22)で、ダイナミックなドライビングに必要な高いグリップ性能を確保。乾いた路面と濡れた路面の両方で優れたグリップを提供すると同時に、高速でコーナリングする際のアンダーステアを抑制し、あらゆる速度域でより正確なハンドリングを実現する。さらに、この新しいタイヤにより100km/hから停止するまでの制動距離が最大2m短縮されている。
■最高レベルのモノ作り
RS6 アヴァント GTはベースモデルとは異なり、ネッカーズルムの生産ラインだけでなく、ベーリンガーホフ工場でも組み立てが行なわれる。この工場では、R8、e-tron GT クワトロ、RS e-tron GTといったモデルが少量生産されている。ネッカーズルム生産拠点の近くに位置するこの柔軟性の高いベーリンガーホフ工場は、グループ内でも独特な生産拠点なのだ。
最終組み立ては、この特別な限定モデルのために設置された3か所のステーションで、7人の経験豊富な従業員によって行なわれる。
各車両は、そこで丸一日かけて作業が行なわれ、ボンネット、フェンダー、ロッカーパネル、ダブルウイング、フロントおよびリヤエプロン、アジャスタブル・コイル・サスペンションが手作業で取り付けられる。
ベーリンガーホフ工場では、カーボンニュートラルな方法で生産が行なわれ、再生可能エネルギーによるグリーン電力と熱を使用している。再生可能エネルギーだけでは回避できないCO2排出量は、認定された環境プロジェクトのカーボンクレジットを使用して相殺されている。