アウディのフラッグシップSUVであるQ7のフルモデルチェンジが、2016年1月に国内発表され、300kgの軽量化と2.0Lターボ搭載という話題を持って登場した。この3月から発売が開始されたので早速試乗してみた。<レポート:高橋 明/Akira Takahashi>
2006年に初代がデビューし、今回のフルモデルチェンジで2代目となったQ7はボディサイズを少し小さくした。全長5070mm×全幅1970mm×全高173mmで、先代モデルより全長で20mm、全幅で15mmの小型化をしている。それでも見た目の迫力といい、フラッグシップに相応しい、堂々たるサイズで存在感も際立っている。だから都内の狭い路地では持て余すこともある。
ボディ外板の隙間は相変わらず狭く精度の高いプレス技術と組み立て精度があり、全体にシャキッとした印象だ。プレスラインも鋭くエッジの効いたラインが気持ちいい。サイドウインドウとドアパネルの面積比もショートデッキを思わせる印象で、スポーティだ。試乗車にはオプションの20インチホイールが装着されていたが、とてもそのサイズだと思えないことからもボディサイズの大きさはイメージできよう。
フロントマスクはカクカクとしたデザインが印象的で、シングルフレームの綺麗なデザイン処理は、あたかも一体成型かと思わせるほどの精度が見て取れる。ドアを開けるとウエザーストリップが3重に張り巡らされているのがわかる。しかもリヤドアのボディ側にもあり音の侵入が防がれている。
このことは走行してみるとすぐに気づく。「静かだぁ~」という感想が素直に口から出る。そしてドアの開閉音にも高級感を感じ、高級車に求められる静粛性や高級な音質などから、高いレベルで満足感が得られる。
インスツルメントパネルやダッシュボードまわりは直線基調でシンプル。全体的にメタル感のあるインテリアで、クール。ナビモニターもポップアップ式で、停車時はなおさらシンプルな印象を受ける。机の中がきれいに整理整頓された引き出しのようで、几帳面なA型みたいだ。
2列目のシートはリクライニングとスライドができ、快適な広さを持っている。また40:20:40の3分割にもなるのでユーティリティは高い。オプションの3列目も併せてフルフラットにもなるので、リムジンのようなスペース、乗り心地、静粛さを持ちながら大きな荷物を運んだりできるSUVらしい機能も満載だ。
小ぶりになったボディサイズとは逆に、室内は広くなっている。とくにヘッドスペース、ショルダーまわりはパッケージングの改善で広がり、室内長も拡大している。オプションの7シーターパッケージの3列シートは、いざと言う時に役立ちそうだ。ちなみに3列目シートのセットアップは電動式なので、ワンタッチ操作だ。
搭載するエンジンは2機種で、3.0TFSIのV型6気筒3.0L直噴スーパーチャージャーは333ps/440Nm、2.0TFSIの直列4気筒2.0L直噴ターボは252ps/370Nmというスペック。駆動方式は全車クワトロ4WDとなる。試乗車は後者の2.0TFSI。このCYR型エンジンは従来エンジンの改良型で、コースティング走行もする。組み合わされるのは8速ティプトロニック。JC08モード燃費は12.6km/Lだ。実際の試乗では200kmの走行距離で高速と一般道、ワインディングは走行せずで、9.8km/Lだった。
300kgもの軽量化の恩恵か、市街地での走行で排気量不足やパワー不足を感じる場面は少ない。出足も軽快でトルクフルに走れる。そして、とても20インチとは思えない穏やかでしっとりとした乗り心地は、高級車を手にした多幸感に浸れる。
高速道路でも十分な加速力と静かなロードノイズで、快適この上ない。また、アクセルを抜くとクラッチが切れ惰行走行をし、燃費も稼げる(これがコースティング走行)。このとき、エンジンは停止せずアイドリング状態でのコースティングとなる。ブレーキに触れたり、再加速したりすれば直ちにクラッチはショックを感じさせずつながる。
ゆったり穏やかに高級車を走らせるのがいつもの運転であれば、全く不満はないだろう。少し気になるポイントとして、アクセルペダルの全閉からの踏み直しをしたときのレスポンスが悪く、ワンテンポ反応遅れがあった。制御領域なので意図的なものかもしれないが、しっとり、滑らかな走りを堪能できるだけに、もったいない印象があった。
また、ステアリングのダイレクト感が薄いというのも気になる。最近のEPSの流れからフィードバックも作り込む世界に代わったので、エンジニアの志向とドライバーの好みが合致するか否かということになってきた。個人的な好みとしてフィードバック感はもう少し欲しい。タイヤとハンドルとの間にどこか距離感を感じてしまうからだ。