アウディ 新型「Q5」、「SQ5」 そのエンジン、シャシーのテクノロジー詳解 vol.2

2017年9月20日、アウディ・ジャパンは8年振りにフルモデルチェンジし、第2世代となるミッドサイズのSUV「Q5」、「SQ5」を発表。2016年9月のパリーショーで「Q5」はワールドプレミアを行ない、2017年のニューヨークショーでSQ5がベールを脱いだ。いずれも従来のインゴルシュタット工場生産から最新のメキシコにあるサンホセ・チアパス工場に移管、生産される。

▼新型アウディ「Q5」「SQ5」徹底解説
vol.1:アウディ 新世代ウルトラ技術を満載した「Q5」「SQ5」を発表
・【本記事】vol.2:新型「Q5」「SQ5」 そのエンジン、シャシーのテクノロジー詳解
参考:新型アウディQ5の250台限定モデル「Q5 1stエディション」を発売

アウディQ5 リヤイメージ

ボディサイズは全長4680mm、全幅1900mm、全高1665mm、ホイールベース2825mmで、従来型と比較すると、全幅は同じで、全長は50mm長く、全高は5mm高い。ホイールベースも15mm延長されている。新しいテクノロジー・プラットフォームであるMLBエボの採用により、軽量設計を徹底した結果、重量は60kgも削減されている。またエアロダイナミクスの面でも、Cd=0.30(欧州仕様)を達成するなどセグメントをリード。メインとなる2.0 TFSIエンジンもパワーアップと同時に燃費を11%改善している。

アウディQ5 コックピット

ヨーロッパではディーゼルの2.0 TDIが3種類、3.0 TDIと、ガソリンエンジンは2.0 TFSI、そしてSQ5用の3.0 TFSIがラインアップされているが、日本にはガソリンエンジンのみが導入される。なお2018年にはプラグインハイブリッドも追加される予定だ。

■エンジン解説

2.0 TFSI、3.0 TFSIエンジンともに、ダウンサイジング、直噴、ターボ過給による高過給の技術を駆使した最新エンジンだ。いずれのエンジンも可変バルブタイミング+アウディ可変バルブリフト(AVS)、直噴と間接噴射を組み合わせたデュアル・インジェクションシステムで、シリンダーヘッドと一体化された排気マニホールドや2系統の冷却回路と可変式の電動ポンプを用いた精密な温度コントロールシステムを導入して、パワーの向上と燃費改善している。

アウディQ5 エンジンルーム 2.0TFSIエンジン
2.0 TFSI エンジン

2.0 TFSIの4気筒16バルブ・エンジンは、最高出力252ps、最大トルク370Nm/1600-4500rpmを発生。従来型に比べると、パワーで22ps、トルクは20Nm向上しており、2.0Lクラスでトップレベルの性能を達成。新型クワトロ(7速Sトロニック採用)は0-100km/h加速は6.3秒、最高速も237km/hに達する。その一方で、燃費は13.9km/(JC08モード)と、従来型に対し11%改善している。

SQ5に搭載する新設計されたV6型3.0 TFSIターボは、高出力、大トルク、俊敏なレスポンス、官能的なサウンドと燃費性能を融合した新時代のスポーツエンジンだ。排気量2995ccで、最高出力は従来型と同じ354psながら、最大トルクは従来比30Nmアップの500Nm/1370rpm-4500rpmを発生する。このため0−100km/h加速を5.4秒最高速は電子リミッターが作動する250km/に達する。一方で燃費は11.9km/L(JC08モード)と、従来比で8.6%改善している。

アウディSQ5 エンジンルーム 3.0TFSI V6 3.0Lターボエンジン
SQ5用のV6・3.0Lターボ、3.0 TFSIエンジン

この3.0 TFSIは、「Bサイクル」と呼ばれる新しい燃焼方式を採用している。これは、ミラーサイクルを採用し、圧縮比を11.2と高く設定し高過給圧と組み合わせたものだ。そのため、可変バルブタイミング+可変バルブリフト(6mm/10mmを切り替え)機構を装備し、ターボの過給圧は1.5Barと極めて高い。また燃料噴射は250Barとし、燃焼室中央に燃料噴射することでスワール(横渦)効果を得ている。

この3.0 TFSIはインサイド排気レイアウトのためターボVバンクの谷間に配置され、ターボもツインスクロール式を採用している。

アウディSQ5 3.0TFSIクワトロ フロントイメージ
SQ5 3.0 TFSIクワトロ

アウディSQ5 3.0TFSIクワトロ リヤイメージ

■トランスミッション、クワトロ・システム

Q5のトランスミッションは、新開発の7速Sトロニックを搭載。従来よりフリクションロスが低減され、軽量化されている。また、遠心振り子を備えたデュアルマス・フライホイールを採用し、極低速でもよりスムーズに走行できる。この新しい7速Sトロニックは、抵抗を減らすために、2組の多板クラッチを従来のように同心円状にではなく、同軸上に配置している。もちろん7速という多段ギヤにより、ワイドな変速比幅になっている。

一方SQ5は、より強大なトルクに対応して8速ティプトロニックATを採用。この8速ATはエフィシエントモードでは、アクセルオフ時にコースティングを行なうことができる。

Q5のクワトロ・システムも最新の世代に進化した。メカニカルなデフ・ユニットを使用したアウディ伝統のシステムに、インテリジェントな制御システムと前後2ヶ所の駆動トルク断続機構を追加し、実走行における駆動抵抗を減らしている。このクワトロ・システムは伝達効率を大幅に改善したシステムで、日本向けのモデルとしては、A4 オールロード・クワトロに続いての採用となる。

アウディQ5 クワトロシステムイラスト

とりわけセンターデフの多板クラッチと、リヤデフに内蔵した断続クラッチを使用して4WDにもFF駆動にも変化する特徴がある。FF状態の場合はプロペラシャフトとリヤデフはホイールから切り離されており、駆動抵抗は最小限となるのだ。

また、制御システムでは数多くのセンサーからの情報をもとに、インテリジェントな制御システムが車両の走行状況を常に先読みして、より多くの駆動力が必要となる直前に2ヶ所のクラッチが素早く接続。4WDモデルならでの走行性能が発揮される。また前後輪だけでなく左右輪の駆動トルクも自動的に制御されるトルクベクタリングも実現している。

アウディQ5 クワトロシステム トルク制御のイメージ

なお、システムの制御プログラムは、ドライブセレクトのモード選択を介して、ドライバーが任意に調整することができる。トラクションとハンドリング特性の最適なバランスを図ったオートモード、ダイナミックモードを選ぶとリヤへの切り替えがより早期に行なわれ、後輪へ分配されるトルクも多めの設定になっている。また、オフロードモードを選ぶと常時4WD状態で走行できる。

SQ5は従来からのメカニカルなセルフロッキング式センターデフと電子システムのホイールセレクティブ・トルクコントロールが組み合わされている。通常的な運転状況では、トルクの60%をリヤに、40%をフロントアクスルに振り分けているが、路面条件や走行状況に応じて、最大フロントに70%、リヤに85%までトルク分配できる。

■ボディ

新型アウディ Q5は従来型に対して車両重量を60kg軽量化しているが、大きな貢献をしているのが従来型より20kg軽量化し、このセグメントで最軽量となったボディの存在だ。

ボディは複数の軽量素材の組み合わせにより大幅な軽量化を実現している。特にアルミ素材を多用し、例えばフロント・クロスメンバーにはアルミの押し出し材を採用し、インスツルメントパネル下のモジュールクロスメンバーも、アルミ押し出し材とアルミシートを組み合わせた設計になっている。

アウディQ5 ボディ構造説明イラスト

フロントサスペンションのストラットタワーもアルミ鋳造パーツを一体化した構造で、軽量化だけでなく、フロントサスペンションの支持剛性、ハンドリング特性向上にも役立っている。その他にボンネット、テールゲートにもアルミ素材を採用している。

キャビン回りには、強度に優れた熱間成形の超高張力鋼板を多用することで、衝突時の乗員保護能力を向上。熱間成形スチール材はフロントエンドとインテリアの連結部、ルーフフレームのフロント側、Bピラー、サイドシル、フロアの一部に採用されるなどボディ重量の20%が熱間成形材が採用されているだ。またこれら熱間成型の超高張力鋼板の多くには、テイラードロールドブランクと可変差厚鋼板とし、通常のスチールを使った場合と比べて、4.6kgもの重量が削減されている。

またピラーには、部分熱処理という製法を採用。場所によって程度の異なる冷却を施すことで、強度を調整し、サイドクラッシュの際には、ピラーの下方は変形して衝撃を吸収する。一方、上部はたわみにくい設計にして乗員の頭部を保護するといった役割を果たしている。

■シャシー

サスペンションは前後とも5リンク式で、サスペンションのマウントは、横方向の力に対しては硬く、前後方向の力に対しては柔らかく吸収するように設計。さらに、液体封入式マウントなどを用いることで、振動を徹底して抑制。快適性と運動性能を両立させている。

フロント・サスペンションでは、すべてのリンク、ピボットベアリングに鍛造アルミを採用。そのほか、鋳造と鍛造のパーツを複雑に組み合わせている。リヤの5リンクサスペンションは、従来のトラペゾイダル式にから変更され、フロント同様にリンク類はすべてアルミ製で、さらにスタビライザーを中空タイプにすることでバネ下重量を減らし軽量化されている。サブフレームは高張力スチール製で、ラバーマウントを介してボディに取り付けている。

アウディQ5 リヤサスペンション 5リンク式
リヤ5リンク・サスペンション

Q5はオプションとして車高調整機能を備えたアダプティブ・エアサスペンションが設定されている。Q5としては初のシステムで、フロントサスペンションは、エアスプリングとダンパーが一体化した設計で、リヤはそれらが別個に設置されている。

エアサスペンションのコンプレッサーは、リヤホイールの中央に設置され、そこからドライバーシートの下に置かれた平たい形のリザーバータンク内に送られて蓄圧される。そしてリザーバータンクから、エアスプリングに素早く圧力が伝えられる仕組みになっている。

このアダプティブ・エアサスペンションは金属バネを用いたモデルに対して、最大22mm車高を下げることができる。車高は、どんな場合でも最適に保たれ、アウディドライブセレクトでリフト/オフロード・モードを選んだ場合には、通常のレベルより45mm高くなる。

アウディQ5 エアサスペンション

ブレーキはフロントが338mm径のベンチレーテッドディスクに4ポット式モノブロック・キャリパーを組み合わせている。タイヤは235/60R18が標準で、オプションで21インチサイズまで選択できる。

SQ5は、ダンピングコントロール機能(CDC)付きのスポーツサスペンションが標準装備されており、ドライバーはドライブセレクトにより好みのセッティングを選ぶことができる。新開発のCDC(連続ダンピングコントロール)ダンパーは、ピストンの内部に設置された電子制御の電磁バルブの働きにより、ダンパー内のオイルの流速を変化させ、連続的に減衰力が調整される。高い演算能力を備えたシャシー中央制御ユニットにより、多数のセンサーからの情報を瞬時に解析し、4輪のダンパーのそれぞれを独立して減衰力制御することができるようになっている。

SQ5のタイヤサイズは255/45R20で、オプションで21インチサイズも選択できる。ブレーキは350mm径/6ポット・モノブロック・キャリパーが装備される。

■価格

アウディQ5 SQ5 価格表

アウディQ5 SQ5 諸元表

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