2016年3月のジュネーブショーでワールドプレミアしたアウディQ2だが、国内デビューは1年遅れの2017年4月。そしてやや遅れて1.0Lモデルも発売され、「プレミアムモデルで1.0Lターボはいかがか?」という気持ちもあり、ようやくその1.0Lモデルに試乗することができた。<レポート:高橋 明/Akira Takahahsi>
欧州でのラインアップはガソリンエンジンが3種類、ディーゼルが3種類。全部で6種類からエンジンが選べる。ガソリンは1.0L、1.4L、2.0Lのいずれもターボ過給の3種類で、このうち1.0Lと1.4Lのガソリンが国内導入されている。1.0Lは3気筒ターボで116ps/200Nm、1.4Lは気筒休止をするシリンダー・オン・デマンドを備えた150ps/250Nmの4気筒モデル。2.0Lは最新のBサイクルエンジンと呼ばれる新燃焼方式で190psの高効率エンジンだ。
ディーゼルの国内導入は現在のところ予定されていないが、1.6L TDIと2.0LのTDIでこちらは出力違いの2種類になっている。また、クワトロに関しても国内モデルはFFのみで導入は見送られ、7速Sトロニックのデュアルクラッチモデルだけの導入になっている。
■アウトライン
試乗モデルは1.0 TFS sportでボディサイズやパワートレーン系は標準車の1.0L TFSIと同じで、タイヤサイズの違いと装備違いがある。価格は標準車の1.0TFSIが299万円でsportが364万円と65万円の差がある。そして1.4LのTFSIは405万円というプライスだ。
このsportグレードはタイヤサイズが16インチから17インチへアップされ、装備類は上級の1.4Lモデルとほぼ同等の充実ぶりで、ベストチョイスはこのモデルではないだろうか。
ボディサイズはQ3よりやや小さいという印象で、A1のSUV版ではなく、フォルクスワーゲンゴルフと共通のプラットフォームMQBを採用いしてるためCセグメントと同等のサイズになっている。全長4200mm(4400mm)×全幅1795mm(1830mm)×全高1500mm(1615mm)、ホイールベース2595mm(2605mm)というサイズで、立体駐車場にも対応する日本にジャストフィットするサイズだ。*()内はQ3のサイズ。ちなみに、今後Q3はサイズアップしC/Dセグメントへとシフトする。
従って、ラゲッジスペースも大きく5人乗車時でも405Lあり、60:40の分割リヤシートや後席を倒した際の容量は1050Lまで拡大でき、ユーティリティも十分な容量をもっているのだ。
新型アウディQ2のポイントはやはりデザインだ。これまでのアウディとは異なるモチーフで、「ポリゴン」と呼ばれる多角形モチーフで、サイドビューのベルトラインにその特徴的なデザインを見ることができる。またフロントグリルも八角形で特徴的だ。そして目を惹くCピラーの処理。ボディと同色としないグレーカラーの処理として、デザイン処理に強いこだわりがあるのだろう。ひとつのアクセントとしてアイキャッチ―になっていることは間違いない。もちろん、全体のシルエットもプレミアムコンパクトSUVらしく存在感の強いデザイン、ルックスを持っている。
■インテリア
シートに座ってみると、ドライビングポジションが乗用車より少し高い位置になった程度にしか感じないスポーティさがある。インテリアデザインでは、アウディに相応しい、高級感のある内装で、試乗車はブラックのクロス仕様のシートだったが、オプションでレザーシートもある。インパネを含め、立体的なデザイン処理を特徴としたデコラティブなインテリアだ。
センタークラスターからメーターパネルにかけて、文字情報が非常に多く、何かをしようとしたときに目が迷う。特にデジタル化されているメーターパネル内には文字情報が多く、時計やラジオ局、後続可能距離などいろいろな情報が表示されている。ある程度は表示しない設定にできるが、その場合隠されたデータは階層の中に入り込むので、走行中にそのデータを見たいと思ったときに、階層を探ることになる。
今は通信機能などの発達で、さまざまな情報をオンタイムで得ることができるようになってきている。そのため、情報の選択、表示がまだ過渡期という現象が各社のインフォテイメントで起きていると感じる。この先自動運転化がより高度化していく中で、必要な情報と常時表示の不要な情報をどうやってシンプルに効果的に乗員に伝えていくのかが課題になっていくだろう。
■パワートレーンフィール
さて3気筒1.0Lターボのフィーリングだが、116ps(85kW)/200Nmの出力。コンパクトなエンジンでアルミ製シリンダーブロック、アルミピストン、鍛造クランクシャフトなどエンジン単体で88kgと軽量設計の最新版だ。ターボ過給はコモンレール式燃料噴射を装備し、250barの高圧噴射が可能で1.6barの過給が可能になっている。そのため、力強い走りが可能で「本当に1.0Lエンジンなのか?」と感じる。
また3気筒エンジンではよく、問題とされるサウンドと振動だが、特に気になるレベルはない。特にサウンドではドライブセレクトで「ダイナミック」を選択すれば、やや太めのサウンドになり、スポーティ感を味わえるサウンドになる。
トランスミッションは7速のDCT(Sトロニック)を搭載。気になったのはアイドリングストップとの相性があまり良くないことだ。信号などで停車中、アイドルストップしてから再スタートでは、ギヤの噛み具合なのか、ワンテンポ出遅れる印象だ。アイドルストップをしないでエンジンがかかっている状態であれば、なんの不満もないが、その点だけ少し気になった。
ドライブセレクトでエコモードを選択すると、高速走行などではセーリングするモデルがアウディには多いが、この1.0LのTFSIエンジンは滑空走行はしなかった。100km/h走行時のエンジン回転は2250rpm付近を指していた。ちなみに、今回の試乗での燃費計測では、都心部を中心に580km走行し14.3km/L、150kmの高速道路中心の走行では17.1km/Lというデータだった。
■操安性能
ステアリングはレシオが変化するプログレッシブ・ステアリングを装備し、速度によっても操舵力を変える設定になっている。が、いずれも違和感を感じるようなシーンはなく、低速時の軽い操舵、高速走行時のしっかりとした直進の安定性など、安心感の高いステアリングシステムだ。
乗り心地もしっかりとしたアウディらしい乗り心地で、比較的硬質な傾向の乗り心地だ。だが、路面からのインフォメーションがステアリングにしっかり伝わるので、ある意味ドライバーズカーとして、かなりのレベルにあるモデルだと思う。プレミアムセグメントのコンパクトと言えば、やはり、スポーティなモデルが多いので、そうした味付けの方向になると思う。例えばMINIシリーズのクロスオーバーなどだ。
ACC関連では0km/hからの設定が可能で、追従機能があるので高速での渋滞は便利な機能だ。車間距離は5段階に調整できる細かさで、ドライブセレクトモードと連携しているので、前走車がいなくなった瞬間の加速力もモードに対応した加速するのが新鮮だった。また、停車から3秒以内であれば自動で再スタートするので、こちらも楽にしてくれる機能だ。
モデルはFFだけの導入で、立体駐車場にも入れられるSUVというモデルはアーバンライフにぴったりなモデルとして女性にも高い人気が得られそうな気がする。ボディカラーも9色あり、イエローやレッドなどビビットカラーもあり、それでいて高級感も強く、走行しては剛性感からの安心感、期待値通りの操舵フィール、静粛性や省燃費性能もあるモデルだった。