アウディA5 Q5に新しいマイルドハイブリッドシステムを搭載

アウディの新型A5、Q5シリーズはそれぞれ2024年7月と11月に欧州で発表されているが、注目はマイルド・ハイブリッドシステムが新しいテクノロジーとなり、PPC(プレミアム・プラットフォーム・コンバッション)プラットフォームに搭載してデビューした。

アウディが新開発した48VのMHEV plusは、PTG(パワートレインジェネレーター)とBAS(ベルト駆動式オルタネータースターター)、それにリン酸鉄(LFP)バッテリーを組み合わせたシステムだ。

マルドハイブリッドだがEV走行が可能

特徴のひとつは、エンジンと切り離しが可能なPTGで、部分的なEV走行、無動力走行を可能にするマイルドハイブリッド・システムだ。

MHEV plusは、新型A5およびQ5に搭載され、主に以下の3つの主要コンポーネントで構成されている。

まず、コンパクトに設計された統合型パワーエレクトロニクスと永久磁石同期モーターを搭載し、48Vシステムのコンポーネントは液冷方式を採用している。

効率性に関しては、例えばA5 2.0 TDI(150kW、前輪駆動/クワトロ4輪駆動)の場合、最大で10g/km、また、V6エンジンを搭載した3.0 TFSI(270kW、クワトロ4輪駆動)では、最大で17 g/kmの燃料節約がWLTP走行モードで達成されるのだ。

強力なPTG駆動モジュール

MHEV plusシステムのもう一つの大きな利点は、駆動性能と乗り心地を向上させることだ。このコンポーネントは、アウディがこれまで提供してきたMHEVテクノロジーとの大きな違いがあり、従来のMHEVテクノロジーは、ベルト式オルタネータースターターのみを使用していたが、PTGはトランスミッションの出力軸にダイレクトに統合型パワーエレクトロニクスを備えた、コンパクトなユニットとして取り付けられ、最大18kW(24ps)の出力を供給する。

このモジュールは、トランスミッションの出力で、最大230Nmのトルクを発生させ、車両始動時から駆動トルクとして直接利用することが可能となっている。最高140km/hの速度までPTGを活用して最大限の効率向上を行ない、それ以上の速度域になるとPTGは内蔵のドッグクラッチを介して駆動系から切り離されるのだ。

PTGの重量は約21kgで、出力シャフトで最大5550rpmに達する。これにより、モデルや駆動バリエーションによって、130~140 km/hの速度に対応できる。

トランスミッション出力部と電動モーターの統合をし、ギヤボックスのすぐ後ろに配置したことで、メリットがある。たとえば、PTGが発揮する18kWの駆動力、最大25kWの回生ブレーキ力は、無駄なく直接車軸の出力直接利用することができる。この構成により、PTGは前輪駆動とクワトロ4輪駆動の両モデルで、手を加えることなくモジュラー方式で使用することができるようになっている。

ニーズを重視した開発

新しいMHEV plusによる利点として、スタートストップ機能の進化による快適性の向上、排出ガスを出さない無動力走行、エネルギー回生、電動パーキングや低速走行時の部分的なEV走行、そして内燃エンジンを電動サポートすることによる性能向上などが挙げられる。

この技術により、完全EV走行が可能になり、例えば、都市内を低速で走行する場合や、郊外での渋滞中、あるいは市街地に近づく際など、内燃エンジンを長い時間停止させたままにすることができる。さらに、PTGが低速時でも最大230Nmの駆動トルクを発揮するため、車両のスタートアップ時の応答性が大幅に向上し、よりスムーズで俊敏な動きを実現する。

静止から最高140km/hの速度域では、PTGが内燃エンジンをサポート。これにより、MHEV plusは最大18kWの追加出力を生み出しし、内燃エンジンが可能な限り効率的に動作できるようになる。

この速度域から車両が停止する際には、減速ブレーキ回生を通じてPTGは最大25kWのエネルギーを回生。通常は摩擦ブレーキを使用することなく、最適な回生ブレーキを実現。また、電動エアコンプレッサーを採用しており、信号待ちなど内燃エンジンが停止中でもエアコンシステムを継続的に作動させることが可能だ。

BAS、リチウムイオンバッテリー、iBRS(統合ブレーキ制御システム)のコンビネーション

MHEV plusテクノロジーの構成では、BASはエンジンの始動やバッテリーへの電力供給を担当する。ベルト駆動はピニオンスターターに比べて音響面での利点があり、内燃エンジンの始動をより早めることにより、燃費が向上するとともに、快適な始動を実現。また、BASはエンジン停止中にエネルギーを回収し、再始動時に最適なシリンダー位置を確保する役割も果たしている。

バッテリーは、LFP(リン酸鉄リチウム)を使用しており、約1.7kWhに相当する37Ahの容量を持っている。最大放電出力は24kW。なお、アウディがマイルドハイブリッドシステムにLFPバッテリーを採用するのは、今回が初となる。

iBRSは油圧力をかけないブレーキを実現し、機械式ブレーキを使用せずに回生ブレーキによる減速を行なう。ブレーキペダルを強く踏み込んだ場合のみ機械式ブレーキが作動。しかもこの協調システムは、ブレーキフィールにも何ら違和感はない。

ハイレベルのマイルドハイブリッド・システム制御

ハイブリッドシステムでは、バッテリーのSoC(充電率)が50~60%の状態が最も効率的とされている。。このMHEV plusハイブリッドシステムの目的は、電動走行距離ではなく、バッテリーを素早く放電・充電するサイクルにある。これにより、可能な限り多くのエネルギーを回収し、迅速かつ効率的に、駆動用として再利用することが狙いなのだ。

システムの稼働制御は、選択されたモードやアクセルペダルの操作量をセンシングし、例えば、「D」モードでは、PTGによる最大18kWの追加出力が、アクセルペダルの約80%以上、またはキックダウン時にのみで発生する。一方、走行モード「S」では、アクセルペダルの踏み込み量が少ない段階から18kWの追加出力を利用可能だ。

Dモードでは、高速道路や郊外の道路を内燃エンジンで一定速度で走行する際に、85km/h以上でPTGを切り離すことができる。しかしSモードでは、最大許容回転数が5550rpmに達するまで、PTGは常に接続された状態を維持する。そして市街地に近づくと、完全にEV走行が可能で、PTGを活用して速度を維持する。

内燃エンジンはBASとPTGを組み合わせて、必要に応じてSoCを上げる、すなわち充電することができる。ただし、渋滞時の低速走行または駐車の場合など、EV走行の際には該当せず、ターゲットSoCよりはるかに低い状態でも維持される。

一方、SoCがターゲットSoCを超えている状態では、内燃エンジンはより遅れて始動する。より多くの出力が要求されるタイミングで始動し、48VバッテリーがターゲットSoCレベルまで意図的に放電し、エネルギー回収フェーズで十分なエネルギーを吸収できる状態を確保。つまり速度が上がるほど、内燃エンジンで走行する割合が増加するわけだ。

ガソリン、ディーゼルにかかわらず、パワートレインの効率向上によって車両の全体的な航続距離が大きく改善されることはいうまでもない。

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