【アウディ】排気量アップの恩恵は? 迫力顔で凜々しくなったA3スポーツバック[試乗レポート]

4世代目のアウディA3スポーツバックは、大幅マイナーチェンジを2024年12月に国内で発表した。この第4世代のA3スポーツバックのデビューは、2020年3月に欧州で発表され、日本には翌年2021年4月に導入している。

プラットフォームはMQB EVOを採用したモデルで、ご存知のようにゴルフ8と共通で、ゴルフはA3よりも約半年早く2024年7月にビッグマイナーを行ない、世間ではゴルフ8.5と呼ばれている。そうなるとアウディA3スポーツバックは4.5になるのか。

A3はセダンとスポーツバックの2タイプあり、今回試乗したのはスポーツバックモデル。セダンと同様、ラインアップはA3、S3、RS3と3モデルがあり、ベーシックなA3スポーツバック30 TFSIに乗ってきた。車両サイズは全長4335mm×全幅1815mm×全高1435~1450mm、ホイールベース2635mmでCセグメントだ。

このベーシックな30 TFSIにもさらにグレードがあり、アドバンスドとアドバンスドをベースにしたシグネチャー・エディションという特別仕様車があり、そしてSラインという3グレードになる。いずれのグレードもパワートレインは共通で、装備やエクステリアの違いになっている。試乗はその中のSライン、「A3スポーツバック 30 TFSI Sライン」に乗ってきた。

エンジンは1.5L 4気筒ターボ+マイルドハイブリッドに

今回のMCのハイライトのひとつは、パワートレインが変更されたことだ。MC前は1.0Lの3気筒ターボ+マイルドハイブリッドを搭載していたが、今回、1.5Lの4気筒ターボ+マイルドハイブリッドへと排気量がアップしている。出力の違いを見ると、前型は110ps/200Nmだったが、今回排気量が500ccアップし出力も116ps/220Nmへとわずかにアップしている。いわゆるライトサイジングエンジンというわけだ。

マイルドハイブリッドのシステムに変更はなく、48VのBSG(ベルトドライブのスターター/ジェネレーター)。アイドルストップからの復帰は滑らかで、振動なく再始動する点や、燃費の領域で活躍する裏方ハイブリッドだ。

エンジン本体は気筒休止とコースティングが、ドライブモードにもよるが、自動で稼働する。つまり燃費を稼ぐ仕様に仕立ててあるわけ。4気筒が2気筒で走行し、その違いをドライバーが感じることはほぼ不可能。そしてコースティング(慣性走行)は、エンジンが停止し、走行慣性で走行するモードで、滑空モードとも言われている。その際も48V MHEVが走行をアシストしている。トランスミッションは変更なく7速DCTのSトロニックを搭載。前型のときは駐車場などでの低速移動時にDCTの半クラッチがうまくつながらずギクシャクすることもあったが、今回のMCではそうしたシーンはなかった。

またアクセルのリニア感も前型よりはリニアな方向になり、飛び出し感はなくなった。ただ、わずかに出力アップしたとはいえ、高速領域になるとパワー不足を感じるシーンは出てくる。特に120km/h規制の高速道路が増えてきていることもあり、そうした速度域での加速に力強さを感じることはなく、速度があがるのを待つことになる。また勾配のあるワインディングでも少し物足りなさを感じるシーンはあった。

気になるのはシステムの介入度合い

ハンドリングは車線維持と先行車との車間距離を自動調整する機能が通常はONになっているため、意図しないハンドル操作が入ることがあり、システムの信頼性をどこまでドライバーが許容するかになると思った。こうした安全装備は機能をオフにしてしまっては元も子もない。が、ONにしていると、勝手にハンドルが動きやがると思う時もある。

この辺りはブランド・アイデンティティになるかもしれないが、A3はスポーティなイメージを出しているモデルだけに、システムの介入しきい値の設定が難しいところだ。個人的にはもっとドライバーを信用するシステムでもいいと思うが。これはブレーキも同様であり、先行車との車間距離が短くなると自動で減速する。が、そこもドライバーを信用してもいいと思っている。

今回のMCではインフォテイメント系やそうした運転支援、安全機能系のアップデートが行なわれているのもハイライトの一つになる。ACCの操作は前型と同様のステアリングコラムから生えているレバーで設定するが、これが盲パイできるので使いやすい。ステアリングのアームにあるスイッチより、圧倒的に使いやすいのだ。

走行中、レバー先端をプッシュすると、そのときの速度でACCが稼働する。レバー本体を上に上げると設定速度が上がり、下げれば速度は落ちる。車間距離もレバーの表面にあるトグルスイッチを上下に動かすだけで決められる。レバー本体をハイビームのように手前に引けばリジュームになり、レバー先端を押し込めばキャンセルされ、このように手元を一切みることなく操作できる。

クラス以上の迫力を感じるデザインは魅力的

さて、今回のMCでは、エクステリアの変更もまた、ハイライトのひとつだ。フロントグリルは大きく変化し、フレームレスのシングルフレームとなり、またアンダースポイラーは左右いっぱいに広がっているように見え、車高が低く見えて存在感はクラスを超えた迫力があるのだ。デザインは大変好ましい印象だ。もちろん、パネル同士の組み付け精度の高さは維持され、組み立て精度がNO1であることに変わりない。

しかしながら、Cセグメントのスポーティモデルを謳い、本来のライバルはAクラスと2シリーズグランクーペ、となるが。前型同様、どうしてもゴルフと比較して「格は上だな」と思っている時があり、ライバルはゴルフじゃないだろうと思いつつも、ゴルフと比較するほうが優位に立てる気楽さがあり、他社ライバルと比較するにはどこか憂鬱さがある。

おそらく、制御系の進化によるデジタル感が随所にあるため、ドライバーとクルマとの一体感を感じにくいのかもしれない。ライントレース性の気持ちよさを得る前にレーンキープアシストが入り、コーナーを追い込んでブレーキングと思う寸前に減速Gが立ち上がるといった「人はミスをする」前提が前に出過ぎていると感じてしまうのだ。

S3やRS3には試乗していないので、このあたりの制御の違いは確認したいところだ。A3に求める性能とS3やRS3に求める性能は当然違ってくるわけで、その味付けの違いができていることを確認したい。デザインや質感、といった見た目、触感は大衆車ゴルフとの違いは感じられるものの、ダイナミック性能における違いはあまり感じられなかったのだ。

◆試乗車スペック
A3 Sportback 30 TFSI S Line

ボディサイズ:全長4355mm×全幅1815mm×全高2635mm
ホイールベース:2635mm
駆動:FWD
最小回転半径:5.1m
カタログ燃費(WLTCモード):17.9km/L
カタログ燃費(市街地モード):13.9km/L
カタログ燃費(郊外モード):18.4km/L
カタログ燃費(高速道路モード):20.0km/L

試乗走行距離 168.7km
平均実燃費 15.8km/L

直列4気筒インタークーラー付きターボ
最高出力:85kW(116ps)/5000-6000rpm
最大トルク:220Nm/1500-3000rpm
トランスミッション:7速Sトロニック
タイヤサイズ:225/40R-18(全輪)

◆価格
A3 Sportback 30 TFSI Advanced 399万円
A3 Sportback 30 TFSI Signature Edition 426万円
A3 Sportback 30 TFSI S Line 427万円

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