アウディ A3 スポーツバック e-tron そうだったのか!プラグインハイブリッド試乗記 

マニアック評価vol381
アウディ A3スポーツバック e-tron

プレミアムコンパクト・クラスで初のプラグインハイブリッド、A3 スポーツバック e-tronが2015年10月7日に発表され、11月12日から発売される。発売に先立って試乗することができたので早速レポートしよう。<レポート:松本 晴比古/Haruhiko Matsumoto>

アウディを含むフォルクスワーゲン・グループは、低炭素社会に向けて独自の戦略を立てている。アウディの場合は「tronシリーズ」を打ち出し、FCVは(h-tron)、天然ガス/水素とCO2から製造する合成ガス(g-tron)、そしてプラグインハイブリッド(e-tron)を展開するとしている。もちろん、これ純電気自動車の「e」シリーズも存在するが、グループ全体での本命はtronシリーズの展開とされている。

そして、燃料電池車のh-tron、g-tron、プラグインハイブリッドのe-tronまで、大きな設計変更なしに搭載できるということを目指し横置きエンジン/FFレイアウト用にモジュラー・ボディ/シャシーのMQBが採用されているのだ。

今回登場したA3もそのMQBを採用しており、A3スポーツバックe-tronに続いて登場したゴルフGTEも、ほぼ共通の構成のプラグインハイブリッド・システムを採用している。グループ内でこの新たなFF用のプラグインハイブリッドはアウディA3をベースにまず最初に開発されているのだ。

アウディ A3スポーツバック e-tronアウディ A3スポーツバック e-tron

A3スポーツバックe-tronは、1.4LのTFSIエンジン(150ps/250Nm)を搭載し、6速Sトロニック・トランスミッションを採用。そしてエンジンの中間に強力な交流同期型モーターとトランスミッション断続用のクラッチを追加搭載している。このため従来からのデュアルクラッチにもうひとつのクラッチを加えた3クラッチの構成となる。ハイブリッドとしてはパラレル式のハイブリッドシステムだ。トランスミッションの上部にインバーターなどパワーエレクトロニクスを搭載している。またこの配置のため、エンジンの搭載位置は標準モデルより60mm右側に移動されている。

アウディ A3スポーツバック e-tron 
アウディ A3スポーツバック e-tron

コンパクト、薄型にまとめられたモーターは定格出力75ps(55kW)、最高出力109ps(80kW)、最大トルク330Nmという強力な力を発揮する。モータートルクはエンジンのそれを上回っているのがポイントだ。システム総合出力は204ps/350Nm。このため0-100km/h加速は7.6秒と動力性能は高く、燃費一本槍のプラグインハイブリッドではなく、走りを重視したシステムといえる。

アウディ A3スポーツバック e-tron 試乗アウディ A3スポーツバック e-tron 試乗

リヤシート下側に容量8.7kWhのリチウムイオン電池のパッケージを搭載。40Lの容量を持つ燃料タンクはリヤのラゲッジスペース下側に配置されている。なおノーマル・モデルのガソリン・モデルは50Lの容量だ。このガソリンタンクのレイアウトにより、ラゲッジルームの床の高さが高くなり、ラゲッジ容量は380Lから280Lに小さくなっているのはやむを得ない。

アウディ A3スポーツバック e-tron 試乗
1.4 TFSIエンジンとパワーエレクトロニクス。モーターと一体のトランスミッションはこの下にある

車両重量は、A3 1.4 TFSIが1330kgで、A3スポーツバックe-tronは1570kg。モーターやバッテリーなどを含め240kgほど重くなってるわけだ。一方、燃費はJC08モードで23.3km/L。バッテリーの電力のみで走るEVモードでの航続距離はJC08モードで52.8km、EV走行での最高速は130km/hとなっている。またガソリン、電力を併用するハイブリッドでの航続距離は900kmを越える。

アウディ A3スポーツバック e-tron 試乗アウディ A3スポーツバック e-tron 試乗

充電時間は、200V充電で最大3時間、100V充電では9時間を要する。なお200V用の壁面取り付けタイプの充電器「アウディ・チャージングドッグ」もオプション設定されている。またこの充電設備の工事費は15万円の補助金を受けることができる。

◆インプレッション

さて早速試乗してみよう。エクステリアはいくつかのe-tron専用装備が加えられ、インテリアにも専用のメータパネルや走行モード切替スイッチが新設されているが、室内のデザインや、質感の高い仕上げ、普通のA3と同様のセレクトレバー、パドルなどの配置になっているため、プラグインハイブリッドという特別感は薄く、普通のA3から乗り換えても戸惑いはまったくない。<次ページに>

ハイブリッドシステムの走行モード
ハイブリッドシステムの走行モード
EV走行モードのスイッチ
EV走行モードのスイッチ

ハイブリッドモードはEV、ハイブリッド・オート、ハイブリッド・チャージ、バッテリーレベル維持という4モードがある。「チャージモード」は文字通りバッテリー充電を最優先し、「バッテリーレベル維持」モードは、半分チャージモードといえる。このため、通常の走行モードは「ハイブリッド・オート」か、必要に応じて「EVモード」のいずれかだろう。

このハイブリッドのモード切替は、センターコンソールのスイッチ、センターディスプレイでの車両設定、さらにセレクトレバーやパドルでも切り替えることができる。セレクトレバーをSモードにする、またはパドルを操作するとEVモード中でもハイブリッド・オートに切り替わるのだ。

アウディ A3スポーツバック e-tron 試乗

どのモードであっても通常の発進はEVで、急スタートでアクセルを大きく踏み込むとエンジン併用のスタートとなる。逆に言えば通常は常にEVを優先する制御になっているのだ。ところが、このEV発進でもアクセルの踏み込み速度が速いと、一瞬タイヤが鳴くほどの加速でちょっとびっくりさせられる。

アクセル自体はけっこうリニアに開くタイプで、市街地での発進や中間加速でのクルマの加速の反応は目覚しいほど気持ちよく、スポーツ感のある走りだ。なお、セレクターレバーでDモードで走る時はアクセルオフでも無動力の惰性走行となり、エンジンブレーキ/モーター回生ブレーキは発生しない。回生ブレーキが欲しいシーンでは、パドルをシフトダウンするように操作すると、回生ブレーキが段階的に強くなるが、これも普通のエンジン車でのシフトダウンによるエンジンブレーキと同じ感覚で操作できる。

アウディ A3スポーツバック e-tron 試乗

ステアリングの操舵フィーリングもCセグメントのハッチバックとは思えない、プレミアム・セグメントにふさわしい質感があり、気持ちよく操作できる。このステアリング・フィーリングとモーターの加速感は絶妙にシンクロして、市街地を走っているだけでもドライビングプレジャーは十分感じられる。

アクセルを大きく踏み込んだり、バッテリーの残量が少なくなっているとエンジンが回り始める。もちろん走行中でもエンジンの断続でのショックなどはなく、気付けばエンジンが回転しているといった具合だ。そしてエンジンの回転数が高くなっても、エンジンノイズだけが高まるといった感じがせず、モーター走行とエンジンが始動した状態での走行で室内の静粛さ、騒音の抑え込みの技はさすがというほかはない。加速力に応じた違和感のない騒音レベルなのだ。

アウディ A3スポーツバック e-tron 試乗アウディ A3スポーツバック e-tron 試乗

乗り心地はさすがに+240kg重くなっているだけあって、ひとクラス以上、上のクラスのようなどっしりしたフィーリングだ。またステアリングを速く切ったりする場面では、リヤが重く感じられる。重量配分的にもリヤにバッテリー、ガソリンタンクを搭載しているために後寄りになっているのだろう。このため少しリヤが遅れて動く感じであり、路面が荒れた場所ならリヤのほうが動きが大きくなる傾向がある。

アウディ A3スポーツバック e-tron 試乗アウディ A3スポーツバック e-tron 試乗

A3スポーツバック e-tronは日常での走行はEVがメインで走ることができ、そのEV走行でも強力なトルクを生かした走りで、スポーツ・モデルといったイメージだ。また充電をメインにした使い方をすればガソリン代も大幅に抑えられるというプラグインハイブリッドのメリットをうまく生かしたクルマでもある。もちろんアウディならではの精緻で質感の高いクルマづくりの味もたっぷり味わうことができ、現時点では独自の価値を持つプラグインハイブリッドだと感じられた。

なおA3スポーツバック e-tronの価格は564万円だが、クリーンエネルギーカー補助金を61万円受け取ることができるため、実質支払額は503万円となる。またA3スポーツバック e-tronは、アウディの販売店の115店舗の中の「e-tron店」(55店舗)での取り扱いとなる。

アウディA3 スポーツバック e-toron 諸元表

アウディ A3 スポーツバック e-tron価格表

アウディ アーカイブ
アウディ A3 アーカイブ

アウディ公式サイト

COTY
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