アウディA1フェイスリフト試乗記 愛着心湧く魅力的な1.0L TFSIエンジン

マニアック評価vol358

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1.0L3気筒エンジンを搭載したA1に箱根で試乗してきた

アウディは2015年5月12日にA1、A1 Sportsbackのフェイスリフトを発表し、同年6月18日から発売されたA1に試乗してきた。最大のトピックとなる1.0L・直列3気筒ガソリンエンジン搭載モデルは、アウディらしいのか?<レポート:髙橋 明/Akira Takahashi>

試乗はいつもの箱根・御殿場周辺で勾配のきついワインディングもあるエリアだ。A1はアウディのエントリークラスではあるが、プレミアムブランドというポジショニングに変わりはない。そのアウディのエントリークラスの中にさらに、エントリーモデルとして今回の1.0L TFSI・3気筒エンジンを搭載したモデルが投入されたわけだ。したがって価格も249万円というお手頃価格。これまで281万円が最廉価だから、かなり安くなった。

今回のフェイスリフトでの変更点などの詳細はコチラの記事を参考にしてほしい。

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さて、A1というBセグメントのモデルはアウディ・ジャパンにとっても重要な商品で、2011年の国内販売開始以降、販売比率の占める割合が高く、順調に推移しているという。これまで1万7000台以上の販売をし、幅広いユーザーの獲得に成功している。

そして、今回の最廉価モデルとして投入したA1、A1スポーツバックによって間口を広げ、国産車からの乗り換えユーザーをさらに増やしたい狙いだ。そしてA1シリーズの中でのヒエラルキーとしてベースモデルに位置し、新たな顧客開拓の使命を背負っている。その上にはシリンダーオンデマンド搭載となった1.4L TFSI搭載モデルがあり、その上にスポーティな外観と高級なインテリアを持つS-Lineがある。そして頂点にクワトロとMTだけの組み合わせというパフォーマンスモデルのS1があるという構成になっている。

したがって、新規顧客開拓のためのポイントは安くなっても、プレミアムブランドの価値やアウディらしさはあるのか?ということだと思う。アウディに乗り換えるのだから、そのアウディの価値はちゃんとあるのか?という、このあたりを考えて試乗してみた。

試乗車は5ドアのA1スポーツバック。駆動はFF方式で、エンジンは注目の1.0L・3気筒TFSI。それに7速Sトロニック(DCT)が組み合わされ、シフトレバーの+-でマニュアル操作ができる。サイドブレーキはレバーを引き上げるタイプだが、ヒルスタート機能があるので、坂道で下がることはない。もちろん、アイドリングストップも装備だ。

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走りだしは1500rpmで最大トルクを発揮するこのエンジン、力強く感じる。とても1.0Lだとは思えない。そのまま巡航速度まで、ストレスなく力感を感じさせながら加速する。ちなみにスペックは95ps/160Nmで驚くような数値ではないが、特性のつくり方が上手い。スロットルの早開きなども感じず、リニアな加速は気持いい。

そしてなによりも個性的なエンジン音に惹かれる。なんと表現したらいいのだろうか? 言葉では難しいが3気筒エンジンは国内でも軽自動車や一部のリッタークラスに採用されているが、いずれもエンジ音に関しては「聞こえなくていい音」の部類だが、このA1に搭載する3気筒は「聞きたいエンジン音」なのだ。ぜひ、試乗してみてほしい。きっと好きになるだろう。<次ページへ>

 

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試乗すれば必ず気に入るであろう「エンジン音」を奏でる3気筒エンジン

そして勾配の厳しい箱根のワイディングを走る。ハンドリングはアウディらしく、ナチュラルでどこまでもニュートラルであると感じる。コーナーの途中でアクセルのオン・オフ、ブレーキのオン・オフ、など何をやってもステア方向にクルマが動き、アンダーやオーバーといった動きを片鱗も見せない。そしてリヤタイヤの接地感が非常に分かりやすく、限界がつかみやすいのも安心して攻めることができる走りの材料だ。

静粛性や乗り心地に関して、プレミアムモデルに相応しい静粛性を持っていると思う。それは、聞きたい音は聞こえるようにし、聞きたくない高周波なノイズは消すということができているということ。高周波を消すには吸音材をたっぷり使う必要があり、きちんと処理している印象だ。

また、185/60-15というタイヤサイズもベストマッチだ。ルックスだけを言えば17インチの大径であるほうが見栄えはいいかもしれないが、乗り心地の良さをスポイルする。その点、15インチで60というエアボリュームはプラスに働き、モデル本来の性能を引き出しているように思う。

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ボディサイズは全長3985mm×全幅1740mm×全高1425mm、ホイールベース2465mmは狭いワインディングすらも、気持よく軽快に走り抜けることができるコンパクトさ。エンジン音、コンパクトボディ、ダイレクトなハンドリング、どれをとってもアウディの拘りを感じる部分であり、キャッチコピー「Vorsprung durch Technik~技術による先進~」を強く感じる。

一方インテリアではどうか。アウディの特徴はインテリアの豪華さやセンスの良さが他のドイツプレミアムにリードしていると言われているだけに、エントリーモデルの最廉価モデルでどうなのか?

ドアを開けシートに座るとアウディらしい風景が広がる。それは、すっきりとしたフロントの視界、見やすいメーター、しっくり座れるシートポジションなどで、国産車にあるエントリーモデルならではの安物感は微塵もない。ただ加飾を減らし樹脂素材を活かすことによって、上級モデルとの区別をしている印象だ。つまり、土台は一緒のものでそれを豪華に見せるか、魅せないか、という違いだと感じた。

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それでもシフトブーツやステアリングにはレザーが使用され、部分的にシルバーの加飾もされている。ナビ画面も手動だが開閉できるタイプで、ユーザビリティを考慮している。

そしてアウディの特徴のひとつでもある、組み立て精度の高さもこのA1から感じることができる。例えばエクステリアで、フェンダーとボンネット、ヘッドライト、グリルなど複雑にパーツが組み合わさる部分での均一な隙間やチリの合わせなどに狂いがなく気持いい。室内の樹脂製品でも同様に均一な隙間やチリ合わせが見事で、きっと数年乗ってもガタピシの音は出ないんだろうなぁという印象をもった。

短時間の試乗だったが、エントリーモデルだからという懸念どころか、エンジン音から生み出される愛着心みたいなものまで感じさせるモデルで、クルマ好きならヒエラルキー関係なく積極的に選んでみたいエントリーモデルだった。

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