アウディ 変革をさらに加速する2030戦略「Vorsprung2030」を発表

アウディ本社は2021年9月3日、2030年までに持続可能性、社会的責任、そして技術で業界のリーダーとしての役割を担う決意を発表しました。

アウディは2026年以降に世界市場へ投入するニューモデルは、すべて電気駆動システムを搭載することにしており、2033年を最終期限と設定して内燃エンジンの生産は段階的に廃止する計画です。

2030年に向けての革新

アウディAGのマルクス・ドゥスマンCEOは、「私たちが掲げる”Vorsprung2030″戦略とは、アウディが将来にわたって存続するためのものです。私たちの社会は急速に変化しています。そのため、私たちは独自の変革を加速させています」と語っている。

マルクス・ドゥスマンCEO

アウディはこれまで「Vorsprung durch Technik(フォアシュプルング ドゥルヒ テヒニク:技術による先進)」というスローガンに基づいた経営方針を貫いてきましたが、役員会は数ヶ月をかけて、新たに「Vorsprung2030」戦略を策定しました。

eモビリティを実現するための具体的な期限を定めたこの戦略に基づき、アウディブランドは自動車産業界における革新のパイオニアであり、主導者として改革をさらに加速する戦略と位置づけています。

ドゥスマンCEOは、「CO2の排出や地球温暖化など、世界が抱える主要な問題は、クリーンテクノロジーを活用して解決していかなければなりません。そのため、アウディのスローガンである”Vorsprung durch Technik”の重要性は、今後も変わることがありません。私たちは、顧客の自由とパーソナルモビリティを保証する会社であると自負しています。そのためアウディがゼロエミッションのドライブシステムに焦点を合わせています。私たちは、自分たちの業績を上げるためにテクノロジーを開発しているわけではありません。世界を動かし続けるために、これらのテクノロジーは結果を出し、実効性のあるものでなければなりません」と語っています。

Vorsprung 2030

過去50年間にわたってアウディのDNAを定義するスローガンとして「Vorsprung durch Technik」が使用されてきましたが、それを未来においても継続して行くために、アウディのチーフ・ストラテジストであるジルヤ・ピエと、彼女が率いるチームは、持続可能で未来指向の企業戦略を作り出す新しいプロセスを策定しました。

ジルヤ・ピエ企業戦略担当責任者

彼女は職務レベル全体と、中国や米国といった主要市場を中心に集めた約500人のアウディ従業員とともに、数か月間を費やして全世界においてアウディに関連する2030年代までのモビリティ関連トレンドを分析。

その結果として発見された活動の戦略領域に関して、ここで得られた洞察の中には、すでに明らかなものも含まれていたという。たとえば、販売や利益の中心は従来型の内燃エンジン搭載車から次第に電気自動車へ、ソフトウェアやサービスへと移行し、自動運転車がさらなる成長の可能性を提供する時期が到来するといったことです。

ピエは、「私たちのチームがきわめて心強いと感じたことのひとつは、従業員の多くと役員会は、持続可能性の問題にすでに深く取り組んでいたことです。私たちは責任あるビジネスの重要性をさらに強調し、それらを厳守したいと考えています」。

新しい戦略は、収益性を確保した成長と差別化に焦点を当てるものであり、活動の戦略領域に優先順位を付けるためのガイドラインとなります。それにはさまざまな要素、すなわち従業員トレーニング、企業文化、新しい企業管理システムなどが連携して機能しなければならないとしています。

内燃エンジンを段階的に廃止していく計画に加え、アウディの電気自動車を品質とデザインの面でライバルと差別化し、顧客に対する付加価値を高めることが重要な役割を果たします。

これには、電気自動車や自動運転のためのシームレスなエコシステム(各要素が連携することで収益構造を生成すること)が含まれます。アウディのデジタル化責任者であるジョン・ニューマンは、「アウディはこれらの変化の結果、新しいデジタル技術や製品を使用して、顧客とより緊密かつ頻繁にコンタクトを取ることができるようになるでしょう」と語っています。

アウディはまた、企業としての成功を環境・社会・ガバナンス(ESG)関連基準に基づいて、ビジネスの成功と持続可能な活動をより緊密に連携させることにしています。

これらの基準には、気候変動の緩和、限りある資源の保護、職場での健康と安全、社会的責任、コンプライアンスやリスク管理に関連するコーポレートガバナンス活動などが含まれます。

こうした戦略プロセスは決して固定されたものではなく、継続的に開発されていくことをピエは、この世界、特に交通関連分野は急速に進化しおり、将来的にはさらに迅速に、より柔軟に対応する必要があると述べ、 グループの統合計画プロセスの一環として、アウディは戦略的フレームワークを定期的に分析し、必要に応じて見直しを行なうとしています。

アウディは、プレミアムなパーソナルモビリティと持続可能性への妥協のない取り組みが両立可能であると証明することが目標です。eモビリティ、ソフトウェアへ移行する変革において、フォルクスワーゲン・グループの創造力は、競争において決定的な優位性をもたらすことは自明で、先月フォルクスワーゲン・グループは「NEW AUTO」戦略を発表して優先事項を再定義しましたが、これは「Vorsprung2030」をサポートする戦略となっています。

この戦略ビジョンにより、これから遭遇する困難に対してベントレー、ランボルギーニ、ドゥカティ、イタルデザインという各ブランド内およびブランド・グループの垣根を越えた形で、従業員全員が明確に目標を定めることができます。このコースを早い段階で設定することで、アウディのチームは変革を完了するために必要な課題と、十分な時間を確保することが可能になっていいます。

未来のための新しい構想

アウディスペースフレーム(ASF)、クワトロ(4輪駆動システム)、マトリクスLEDヘッドライト、そしてeモビリティに関係する数多くの特許の数々など、アウディが実現してきたイノベーションは膨大ですが、今後さらに増えて増加トレンドにあります。

AUDI AG技術開発担当取締役のオリバー ホフマンは、「新しいモビリティの時代において、私たちは”Vorsprung”(先進)を世界クラスのエンジニアリング、最先端のデザイン、そして魅力的なデジタル体験として定義するだけではありません。私たちの思考は、自動車という枠にとどまらないのです。将来における焦点は、クルマを取り巻くインフラを含む全体的なモビリティソリューションへと移行していくでしょう」と説明している。

「Audi DNA」プロジェクトを通じて、ホフマンは顧客が体験できるイノベーションに注力することを目指しています。

アウディは、ステアリング操舵角の技術要件、ステアリング操作力、車両の静粛性や音響性能といった技術面の細部を追求し、アウディならではのディテールに拘った感覚を実現するための開発に取り組んでいます。

ホフマンは、「私たちは製品に対し、明確で紛れもないDNAを与える必要があります。将来において、アウディの運転がどのような感覚をもたらすのか、はっきりと語ることができるようになるでしょう。ちなみに、それはきわめて高度な自動運転が実現した時にも適用されるはずです」と語っている。

会社全体と同じく、技術開発部門も史上最大の変革を遂げつつある。今後、自動車業界で最も困難な10年が待ち構えており、その焦点は車両に搭載されるソフトウェアや自動運転技術です。

将来的には、顧客は購入後の車両アップグレード、サブシステムのアップデートや新規インストールなどが必要に応じて可能になり、さらに世界各国に存在する内燃エンジン搭載車のオーナーにも、車両のライフサイクル全体にわたって新たなサービスが提供されます。

新しい「Vorsprung2030」戦略では、子会社のCARIAD社が重要な役割を果たすことになります。フォルクスワーゲン・グループでソフトウェア開発を担当するこの子会社は、フォルクスワーゲン・グループの全ブランドを対象として、標準化されたOSを活用し、クラウド接続を備えた大規模なソフトウェア・プラットフォームを、2025年までに開発する予定となっています。

「E3 2.0」と呼ばれるソフトウェア・プラットフォームにより自動運転を含む未来のイノベーションを実現します。CARIADはソフトウェアベースのソリューションを技術的に実現する責任を負い、車両に搭載する作業は各ブランドがCARIADと連携してなうことになっています。

イノベーションを手頃な価格で提供するために、アウディはプロセスとコストの最適化を継続的に行なっており、アウディが進めている変革に取り組むには、財務資源を有効に活用しなければならず、これにより長期にわたって競争力と実行可能性を維持することができるのです。

アウディは約5年間にわたって、ベルリンを拠点とするイノベーションユニットの「デンクベルクシュタット(シンクタンク)」を通じ、将来に向けた新しいアイデアを開発しています。このシンクタンクはドイツ企業が運営する主要なイノベーションユニットのひとつとして広く認識されており、スタートアップ企業のように機動力に富むチームが革新的なビジネスモデルを開発することでアウディの牽引役を果たしています。

またアウディの社内ベンチャープログラムでは、さまざまな部門の従業員が数週間でビジネスアイデアを開発するケースも存在し、各段階の終わりに、専門家から構成される審査委員会がプロジェクトの継続または停止を判断しているのです。

同時に、アウディは生産における効率的なプロセスおよびスマートテクノロジーの採用にも積極的に取り組んでいます。たとえば、プロダクション・ラボでは、最先端の製造技術の開発を行なっており、ここではさまざまな研究所、スタートアップ企業、全世界のサプライヤーが持つノウハウ、そしてアウディ従業員の技術力と創造力を活用して研究を進めています。

ネッカーズルム工場はパイロットファクトリーとして、またデジタル化への移行を検証する実世界の研究所として、欠かせない役割を担っています。情報を完全に連携させる工場を生み出すための「インダストリー4.0」プロジェクトには、Amazonを始め、多くのテクノロジーパートナー各社によるITソリューションも活用されています。

中国における加速

中国市場は、アウディの新たな戦略を展開する上で、従来と同様に重要な役割を果たすことになるでしょう。アウディは、中国のプレミアムカー市場は2030年までに年間450万台に成長すると予測しており、2020年には年間310万台に到達ししています。さらに、販売台数占める電気自動車の割合は、現在の10%から10年後には40%にまで増加すると予測しています。

そのため、アウディにとって中国におけるビジネスを拡大することは必然で、現地生産される電気自動車の供給を増やすことが計画されています。それによりアウディは中国の自動車産業の持続可能なモビリティへの移行を推進する役割を担おうというわけです。

FAW(中国第一汽車集団)とフォルクスワーゲンの合弁会社(一汽大衆)の本社は中国・長春市にあり、そこはアウディ中国工場の中で30年を超える歴史を持つ地でもあります。アウディはFAWと協力し、2021年末までに製造する車両を、12モデルにまで拡大する予定としています。

アウディの2番目の中国のパートナーであるSAICフォルクスワーゲン(上汽大衆汽車)とのコラボレーションで生み出される最初のモデルは、2022年に発表されます。これらは、パートナーの一汽VWアウディが運営する既存のディーラーイ・ネットワークを通じても販売されることになっています。

アウディチャイナのヴェルナー・アイヒホルン社長は「私たちのアプローチは、中国向けの製品は中国でという考えに基づいています。そのため、アウディは世界最大の自動車市場の顧客のニーズに焦点を当て、革新を積極的に推進しています。FAWとSAICというパートナー2社とともに、私たちは未来の課題に取り組む準備ができています」と語っています。

現在まで、アウディは中国市場向けに700万台以上の車両を出荷し、2020年だけで72万7358台の車両を中国で販売しました。2021年上半期の販売台数は41万8749台で、今後もさらに安定的に販売を拡大させていく方針なのです。

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COTY
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