アウディ、フォーミュラE2019年シーズン用の新型「e-tron FE05」にはリヤウイングがない!

アウディは2018年10月4日、2018/2019年シーズン用のフォーミュラEマシン「e-tron FE05」を正式に発表した。シーズン5となる2018/2019年シリーズは12月15日にサウジアラビア・ディルイーヤで開幕第1戦を迎える。この第1戦からはいよいよ主要コンポーネンツが自由化され、航続距離が増大、従来のようにレース途中でのマシンの乗り換えは必要なくなるという画期的なシリーズとなる。
Audi e-tron FE05

このシーズンに向け、アウディはかねてから開発していた新型マシン「e-tron FE05」を発表した。チーム体制は従来通りの「アウディ・スポーツ ABT シェフラー」で、出場ドライバーもダニエル・アプト選手とルーカスディグラッシ選手だ。なお、今シーズンからは、アウディ・ワークスチームに加え、イギリスのヴァージン レーシングも「e-tron FE05」で参戦することになり、「e-tron FE05」は4台体制となる。

新型e-tron FE05とダニエル・アプト選手(左)、ルーカスディグラッシ選手
新型e-tron FE05とダニエル・アプト選手(左)、ルーカスディグラッシ選手

新型「e-tron FE05」の開発にあたり、アウディは新次元の技術と戦略に積極的に取り組み、特に心臓部のコンポーネントであるモーター、インバーター、ギヤボックス、リヤサスペンション・コンポーネント、そしてバッテリー駆動制御ソフトウェア、ドライブトレーン制御に対して集中的に開発に取り組んでいる。マシンのその他の部分は出場全チーム共通の、ワンスペック仕様となっているので、各チームは、独自のバッテリー駆動ドライブトレーンによって、その技術力を競うことになる。
audi e-tron FE05

アウディは、2018年の7月中旬、ニューヨークで開催された4年目のシーズン最終戦でチームタイトルを獲得しe-tron FE04が最も効率に優れたマシンであることを証明しているが、今回発表された後継マシンは、このマシンの進化形となる。

アウディ・シェフラーMGU03と呼ばれるモータージェネレーターユニットは、アウディと技術パートナーのシェフラーが共同開発し、ユニットの効率をさらに高めている。アウディ・フォーミュラEプロジェクトリーダーのトリスタン・サマースケイルは、「私たちは、1速ギヤを採用するという基本コンセプトは変えずに、各ディテールを見直しながらすべてのパーツを新規に製作しました」と語っている。結果的にドライブトレーンパーツの95%を新設計することで、重量を10%削減することに成功しているという。
audi e-tron FE05

プロジェクトチームは、前シーズンが開幕する以前の2017年中頃から「e-tron FE05」の開発に着手し、2018年7月末に国際自動車連盟(FIA)による認証を取得。その後のコンポーネンツの変更は許されず、シーズン中にはソフトウェアのみの改良が許される。フォーミュラEの全チームが参加する合同テストは、10月中旬にスペインのバレンシアで行なわれる予定で、その後、レースカーとスペアパーツ等はサウジアラビアに輸送される予定だ。

5年目となるフォーミュラEシーズンでは、予選では電気モーターは最大250kW(340ps)の出力が許されるが、決勝レースでは200kW(272ps)に制限される。また今シーズンからは、新たにアクティベーションゾーンと呼ばれる走行区間が追加される。サーキットのコース内に設置されたこの区間を通過するときは、225kW(306ps)を発生するハイパワーモードを一時的に使用することができる。またこれまでと同様にフォーミュラEのファンは、「ファンブースト」と呼ばれるオンライン投票システムを使用することによって、お気に入りのドライバーをサポートすることができる。人気投票の上位3名のマシンは、レース中に1回だけ出力を最大250kW(340ps)に引き上げることができるようになっている。
audi e-tron FE05

フォーミュラEの全チームは、重量374kgの共通のマクラーレン・オートモーティブ製のリチウムイオン・バッテリーを搭載する。このバッテリーは、ドライバーズシートとパワートレーンの間に搭載される。バッテリーの電力容量は52kWhで、45分以内に充電することが可能だ。

5年目のシーズンに導入された新しいテクノロジーは、ブレーキbyワイヤー・システムがある。このシステムにより、ブレーキ力とリヤアクスルの回生ブレーキ力が電子的に制御され、ブレーキのバランスは常に最適に配分され、エネルギー回生も従来より効率が高められている。

ボディはF1マシンと同様にFIA安全基準に準拠して開発されたカーボン(CFRP)製のモノコックを採用している。フロント、リヤ、サイドのCFRPクラッシュ構造は、極めて高い耐衝撃性能を持つ。さらに、F1マシンと同様に、コックピット上にはハロ(Halo)システムと呼ばれるドライバーの頭部の保護装置も新装備されている。

フォーミュラEマシンの最低重量は900kg(ドライバーを含む)だ。このEVレーシングカーの0-100km/h加速タイムは3.1秒、最高速度は約240km/hとなっている。注目すべきは、新世代の「e-tron FE05」にはリヤウィングが装備されていないことだ。これは、最近のレーシングマシンでは極めて稀なケースといえる。

リヤのダウンフォースはレーシングカーの後部にある大きなディフューザーによって生み出されるようになっているのだ。最初のテスト走行後、ファンは未来的なこのマシンの外観を見て「バットモビル」、「スターウォーズ」、「スペースシップ」などと評している。ドライバーのダニエル・アプト選手は、「他のマシンと一緒にサーキットへ向かうとき、まるでSF映画に出演しているような気分でした。先代モデルと比較してニューモデルは極めてアグレッシブなデザインです」と語っている。
 
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