アウディはパリ・モーターショーでコンセプトカーとして「クロスレーン・クーペ・コンセプト」、「SQ5 TDI エクスクルージブ・コンセプト」2台のワールドプレミアと、近い時期に発売されるA3スポーツバック、S3、そしてRS5カブリオレ、マイナーチェンジを受けたR8を出展した。
・クロスレーン・クーペ・コンセプト
注目の1台となったのが「クロスレーン・クーペ」だ。アウディQシリーズのラインアップの中で「Q1」に相当するサイズだが、アウディは「近未来に想定されるQシリーズのデザイン、テクノロジーなどを融合させたコンセプトモデル」としている。
駆動システムは専用の1.5L3気筒ターボ(TFSI)、2個のモーターを搭載したプラグインハイブリッドを採用。1.1L/100kmという驚異的な燃費を実現するという。2個のモーターを搭載した新ハイブリッドシステムで走りと燃費を両立。プラグイン・システムのため大容量のバッテリーを搭載しているのも特徴だ。
1.1L/100kmという驚異的な燃費を実現するための新たなテクノロジーとして、2個のモーターや大容量のバッテリーの重量に対応した超軽量なボディ構造、「アウディultra」の進化版を採用している。
この超軽量ボディは、「複合材料スペースフレーム」と名付けられ、カーボン材とアルミ材、グラスファイバーによるスペースフレーム構造である。BMW iがアルミ製シャシーの上にフルカーボン製ボディを架装するタイプであるのに対し、アウディは複合材料スペースフレームを採用しているのが面白い。
この新複合材料スペースフレームでつくられたクロスレーン・クーペの車両重量は、大型のリチウムイオン・バッテリーを搭載しているにもかかわらず1390kgに抑えられている。衝撃吸収ゾーンや主要な骨格はカーボン、それ以外の骨格部分はアルミ材、アウターボディパネルはグラスファイバーを使用している。
BMW iのフルカーボン・ボディと同等の軽量さで、製造コストやライフサイクル・アセスメントではアウディの方が上回るという。
新開発のシリーズ・パラレルの2モード・ハイブリッドのシステム総合出力は177ps、0-100km/h加速は8.6秒、エンジンを使用せずモーターのみの加速で9.8秒、最高速は182km/hに達する。
リチウムイオン・バッテリーの容量は17.4kWh、モーターのみで走行できる距離は86kmだという。専用開発された3気筒1.5LのTFSIエンジンは130ps/200Nmを発生し、出力50kW (68ps)/210Nmの第1モーターはエンジンと結合される。そして、スターター、オルタネーターとしても機能もする。
駆動専用の第2モーターは85kW (116ps)/250Nmの出力を発揮する。EVモードでの最高速は130km/を上回るという。また発進後55km/hに達するとエンジンが始動、130km/h以上の高速走行ではエンジン駆動がメインとなり、加速時にはモーターがブースターとして機能するシステムになっている。
クロスレーン・クーペのシートは2+2で、全長4.21m×全幅1.88m×全高1.51m、ホイールベースは2.56mとコンパクトにまとめられ、デザインは近未来のQシリーズのための新たな試みとされる。
・SQ5エクスクルージブ・コンセプト
SQ5 TDIエクスクルージブ・コンセプトは、2013年春頃にクワトロ社が50台限定で製造するスペシャルモデルだ。つまりQ5をベースとし、アウディSUV+ディーゼルエンジン初となるSモデルとなる。コンセプトは、313psというハイパワーと、内外装をエクスクルージブ・クラスにふさわしいデザインと質感に仕上げることである。したがって専用のボディカラーを採用し、内装では最高級の素材がふんだんに使用されている贅沢なモデルだ。
・A3スポーツバック
A3スポーツバックは、ヨーロッパで2013年春頃に発売予定だ。LEDライトや上級クラスと同等のドライバーアシスタンス・システムを採用し、最大1220Lのラゲッジ容量を備えている。また車両重量は、従来モデルより90kgも軽量になっており、1.4TFSIエンジン搭載モデルで車両重量は1205kgに収まっている。この軽量化は高張力鋼板の多用、ボンネット、フェンダー、バンパービーム、フロント・サブフレームをアルミ化することなどで達成している。
エンジンは1.6 TDI、150psと184psの2種類の2.0 TDI、ガソリンエンジンは、1.2 TFSI(105ps)、1.4 TFSI(122ps仕様と気筒休止付き140ps仕様)、そして新登場の1.8 TFSI(180ps)がラインアップされる。1.8 TFSIはツインインジェクター、可変バルブリフトを装備している。またCNGガス・エンジンが2013年に追加され、2014年にはプラグインハイブリッドのe-tronもデビュー予定だという。
ドライバー支援システムは、レーダーを使用した全車速追従クルーズコントロール、リヤレーダーを使用したサイドアシスト・モニター、アクティブ・レーンアシスト、カメラによる交通標識情報取得システム、パーキングアシスト、そして衝突回避&軽減システムの「プレセンス」などが設定され、まさにフルサイズ・クラス並みの装備レベルになっている。
・S3
S3は、新開発の2.0 TFSIエンジンを搭載し、300ps/380Nmを発生する一方で、燃費は6.9L/100kmを達成したスポーツモデルだ。0-100km/h加速は5.1秒、最高速は250km/hリミッターを備える実力を備える。新エンジンは2本のバランスシャフト、電子制御式排気サウンドシステム、そしてツインインジェクター、排気側に可変バルブリフトシステムを装備している。
排気マニホールドは、シリンダーへッド内蔵式で、大型化されたターボの最高過給圧は1.2barと高い。なおこのエンジンのシリンダーは鋳鉄製だが、エンジン重量は148kgと従来エンジンより軽量化されている。
駆動は油圧多板クラッチ式のクワトロシステムを採用。各輪のスリップ状況に応じて駆動力を自動配分することができる。シャシーはA3より25mmローダウンされたスポーツカー・セッティングを採用。ステアリングは新たに可変ギヤ比ステアリングを採用している。なおこのS3は、2013年初頭にドイツでの販売が開始される。
・RS5カブリオレ
RS5カブリオレは、アウディのハイエンドモデルのコンバーチブルカーと位置付けられる。フロントグリルはマット仕上げのアルミ製、グリルはハニカム・デザインだ。ルーフ・トップは布製だが、防音性能は極めて高い。トップの開閉は50km/hでも可能で、開く時間は15秒、閉じる時間は17秒。
エンジンは高回転型の自然吸気4.2LのV8型を搭載している。出力は450ps/8250rpm、トルクは430Nm/4000-6000rpm。リッター当たり出力は108.1ps/Lに達する。0-100km/hは4.9秒、最高速は250km/hリミッター付きと280km/h仕様を選択できるようになっている。