
2012年8月27日、アウディジャパンは4車種の新型Sモデル「S6」、「S6 アバント」、「S7 スポーツバック」、「S8」を発表し、同日から発売を開始した。これらのニューモデルのデリバリーは9月以降とされている。
アウディの「S」シリーズは、「標準モデルより大幅に高められた動力性能」、「スポーティな走りとラグジュアリーな装備」、「インテリアを兼ね備えたプレステージモデルを意味する名称」で、いずれもクワトロ(フルタイム4WD)システムを備える。

今回発売された各モデルに搭載されている新開発のV型8気筒ツインターボエンジンには、軽負荷の走行条件において、8気筒のうち4気筒を休止させる「シリンダーオンデマンドシステム」やスタート・ストップシステム(アイドリングストップ)のほか、エネルギー回生システム、軽量ボディ構造を採用し、高性能かつ高効率を実現しいる。
「S6」、「S6 アバント」には最高出力420ps、最大トルク550Nm を発揮するV型8気筒4.0LのTFSIエンジンを搭載しており、トランスミッションは7速Sトロニックを組み合わせている。S6の0-100km/h 加速は4.6秒、S6アバントは4.7秒となっている。
また、専用チューニングが施されたアダプティブ・エアサスペンションや、後輪左右の駆動力を路面状況に応じて変化させるスポーツデファレンシャル、さらには車速に合わせてギヤ比を変化させるダイナミックステアリングなどを標準装備し、Sモデルらしい傑出した運動性能を実現している。

「S7 スポーツバック」は、S6と同じ420psを発生する4.0L・TFSIエンジンと7 速Sトロニックを組み合わせる。S7の0-100km/hは4.7秒だ。
専用のSスポーツシートや20インチの専用アルミホイール、スピーカーから逆位相の音を発することで騒音を低減するアクティブノイズキャンセレーション、BOSEサラウンドサウンドシステムを標準装備し、高いコンフォート性能も備えている。

トップレンジの「S8」は、ドライバーのホールド性と日常的な使いやすさをを両立させたコンフォート・スポーツシート、アクティブノイズキャンセレーション、専用チューニングされたアダプティブ・エアサスペンション、21インチの専用アルミホイールなどを標準装備している。
またS8のみは4.0L FSIエンジンの最高出力が520psに、最大トルクは650Nmにアップされている。トランスミッションもスムーズで滑らかな走りを生み出す8速ティプトロニックATとの組み合わせとなる。0-100km/h加速は4.2秒とSモデルの中でも最速だ。
新開発の90度V型8気筒エンジンの排気量は3993ccで、ボア×ストロークは84.5mm×89.0mm、圧縮比は10.1。このエンジンには2個のツインスクロール・ターボと水冷インタークーラーがVバンクの谷間に装備される。つまり、Vバンクの内側が排気、外側が吸気となる「ホットサイド・インサイド」レイアウトで、BMWのV8型ターボと同様に新しいレイアウトとなっている。
このレイアウトは、排気ポートからの排気ガスが最短距離でターボに導かれ、ターボのレスポンスが最大限に発揮できることと、エンジン・パッケージングの大きさを最小限にできるメリットを持っているのだ。バンク外側に位置する吸気ポート部には可変スワール・バルブが装備され、低負荷時でも優れた吸気流を発生させることができる。
またこのV8型エンジンは各バンク2本のカムシャフトがチェーン駆動され、補機はエンジン後端に配置されているのも大きな特徴だ。シリンダーケースはアルミ・シリコンを低圧チルキャスト鋳造したライナーレス・タイプで、ボア間肉厚を最小限にし、軽量・コンパクトさを追求している。その一方でベアリング支持は強固なアルミフレーム構造を採用し、エンジン重量は補機を含め220kgときわめて軽量に仕上げられている。
エンジン本体の組み立てはハンガリーのジュール工場で行われ、シリンダーの真円ホーニング加工、ピストンピンはDLCコーティング処理(ダイヤモンドに似たカーボン薄幕処理)など先進的な技術も投入されている。
このエンジンは、冷却マネジメントも徹底され、オン・オフ式ウォーターポンプ、可変圧力オイルポンプなども採用され、低摩擦、高効率を追求している。

技術的なハイライトとなるシリンダーオンデマンドシステム(可変気筒休止)は、低負荷での走行で、トルクが最大値の25%?35%の間、つまり160Nmから250Nmの間で作動する。作動条件は水温30℃以上で、3速ギヤ以上で選択され、エンジン回転数は960rpm〜3500rpm の間で設定されている。
これらの条件が揃った場合、システムはシリンダーバンク両側に配置された第2、第3、第5、第8シリンダーのインテークバルブおよびエキゾーストバルブが閉鎖される。クランクシャフト1回転で点火されるのは片バンク当たり4気筒ではなく2気筒となり、休止する気筒の燃料噴射もストップする。この気筒休止により低負荷時でもスロットルバルブ開度が大きくでき、エンジンのポンピング損失が大幅に低減できるのだ。アウディは、同じポンピング損失低減策である吸気バルブ連続可変リフト機構より、この気筒休止システムの方がコストパフォーマンスが優れていると考えたのだ。
なおバルブの閉鎖機構はAVS(アウディ・バルブリフトシステム)の最新仕様で、ソレノイドによりカムのスリーブが横移動し、ゼロリフトとなり、吸排気のバルブは作動しない。この気筒休止が働いた場合、メーターのインフォメーション・ディスプレイには、4気筒で作動していることが表示され、燃費インジケーターのバーはグリーンになる。気筒休止、あるいは全気筒作動は0.01秒〜0.04秒で完了し、この間のトルク変動も抑制されるので、ドライバーは体感できない。
この気筒休止システムで100km/hを維持した場合、このエンジンの燃費は10% 以上も向上し、NEDC(新欧州ドライビングサイクル)では、約5%程度燃費がアップする。スタート/ ストップシステムを加えると、総合的な燃費向上は12% に達するという。
なお気筒休止システムが作動すると、エンジンの振動、騒音が増大するというデメリットもあるのだが、アウディはアクティブノイズコントロール(ANC)で、室内を騒音マイクで集音し、スピーカーから逆位相の音波を発生させることで騒音を相殺する手法を採用をとっている。
また気筒休止モード中にエンジンが生じる2次振動は、電磁振動コイルにより位相をずらした逆振動を発生させて相殺するアクティブ・エンジンマウントも装備している。
アウディ S6 公式サイト
アウディ S6Avant 公式サイト
アウディ S7Sportback 公式サイト
アウディ S8公式サイト