【アウディ】革新的な技術を注ぎ込んだ野心的フルサイズセダン、アウディA6

新型アウディA6(C7/タイプ4G)は2011年8月23日から日本でも発売されている。最近のアウディジャパンは裕福層中心のライフスタイル重視の販売戦略を重視しているため、自動車専門媒体などのプレス向け発表会の開催もなく、報道向け資料もA4版3ページという内容で、フルモデルチェンジにもかかわらず詳細情報に接する機会が少ない。そのため、ここではできる限り詳細にディテールへ迫ることにする。

アウディA6画像

アウディ本社は、依然として「Vorsprung durch Technik(技術による前進)」のスローガンを掲げており、A6のようなエグゼクティブクラスに対する技術的な執着と挑戦には迫力があり、プレミアムEセグメントのクルマ造りの好例と言える。

新型A6はC7(タイプ4G)と呼称

アウディA6は1994年発売のC4(タイプ4A)が初代となる。それ以前の呼称はアウディ100で、アメリカではアウディ5000と名乗っていた。最新のA6は4世代目でC7(タイプ4G)と呼ばれるが、初代の100から数えると通算で7世代目になる。その新型A6は2011年初のデトロイトショーでワールドプレミアを飾った。

4月からヨーロッパで販売が開始され、次にアメリカ、インドへ導入。さらに遅れて右ハンドル仕様がデリバリーされている。アウディはこの新型A6を「エグゼクティブクラスにおける最も先進的なセダンであり、またもや新たなベンチマークとなる存在」としている。先代のC6が成功を収めたため、今回のC7はさらに新しいコンセプトやテクノロジーを盛り込んで、大幅に前進したと言える。

またヨーロッパやアメリカだけでなく、中国やインドなど新興国の巨大市場を意識したグローバル・プレミアムセダンという位置付けにもなっている。今回はまずセダンがデビューし、今後はハイブリッド、ワゴンタイプのアバントがラインアップされる計画だ。今回のC7の開発キーワードは「イノベーション リーダー・スルー・プログレス テクノロジー」とされている。

高強度ハイブリッド構造のMLBを採用

A6に採用されたプラットフォームは、VWグループのMLB(フレキシブル)プラットフォームであり、先に発売されたA7スポーツバックの新世代プラットフォームの系列に属する。新世代、すなわちアルミ材を多用したスチールとのハイブリッド構造となっており、このMLBはA5、A7、そしてA6の順に導入されてきている。そして、このボディはアウディの戦略に従って「ウルトラ・ライトウエイト・テクノロジー」と命名している。

この「ウルトラ・ライトウエイト・テクノロジー」というフレーズは2011年、今年のル・マン24時間で優勝したアウディR18 TDIで大々的に訴求されたが、現在アウディが進めている軽量化技術において、新素材の採用、材料置換による技術を誇示するものだ。

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↑素材別重量配分グラフ。アルミは20%以上使っても、17%にしかならない

アウディがセグメントで最も優れたボディと自称するのは、他車に比べてアルミニウムの使用量が格段に多いからである。それは同等のスチール構造のボディと比較して15%の軽量化になっているとしている。また、この構造はボディ強度や振動特性、衝突安全性能においても突出しているという。

アルミ材の採用はボディ全体の20%以上で、このため先代のA6より30kg軽量化できている。またフロントセクションへのアルミ材の多用、リヤに搭載したバッテリーなどにより、前後荷重配分も一段と改善されている。

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↑赤い部分が新しく採用されたパーツとなる
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↑ストラットマウント部分はアルミ鋳造材とした

ボディ構造では、エンジンルームにアルミ製のクロス・ストラットバーを、前後バンパー内にはアルミ製クロスメンバーを新採用している。またフロントのストラットタワー部は、強度と減衰性の高いアルミ鋳造材としている。見えにくい部分ではインスツルメントパネルの前側、リヤシェルフ、トランクバルクヘッドにサポートフレームが使用され、トランク内にはクロスメンバーを採用するなどスペースフレーム的な要素を取り入れている。

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↑アルミをはじめ、さまざまな部位に軽量化のための素材が使われている

ボンネット、フロントフェンダー、ドア、トランクリッドなどはすべてアルミパネル製で、ドアはダブルシェル構造としている。またドアやリヤウインドウまわりの溶接には、ダイオード(半導体)レーザー溶接を新採用し、溶接時間の短縮とエネルギー消費の低減を図っている。このダイオードレーザー溶接はドアでは12個の溶接機を使用し、1枚あたり50箇所のシーム溶接を75秒で完了できるという。

またルーフパネルとサイドフレームパネルは従来はハンダ溶接がされていたが、今回からダイオードレーザー溶接を採用し、完全に平滑な接合面を実現し、継ぎ目のない仕上がりになっている。なお、このダイオードレーザー溶接の導入ため、ネッカーズルム工場に7億ユーロを投資して製造設備の改変が行われている。

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↑Aピラーなど紫色の部分にホットプレス材が採用された

A6のボディは軽量化と強度アップを両立させるために、ホットプレス(熱間成形)も多用されている。これは薄板スチールを1000度に加熱し、200度の水冷プレスで一気に成形するシステムだ。このホットプレス材はAピラー、ルーフアーチ、センタートンネル補強部、サイドシル、フロアパネル補強材、Bピラー基部などに採用。またテーラードブランクス、すなわち差厚パネルもフロントバルクヘッドなどに使用されている。

 

基本フォルムは永続的なエレガントさ

新型A6のボディサイズは全長4930×全幅1875×全高1465mm、ホイールベース2910mmとなっている。先代に比べて全長、全高の変更は小さいが、ホイールベースは65mm延長され、フロントオーバーハングは80mm短縮。よりスポーティなフォルムになっている。

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ボディデザインの基本フォルムは先代を継承しながら、エレガントさ、永続性を訴求している。これまでに培われてきた特徴をさらに洗練・強調したテイストになっている。長いボンネット、低く滑らかなボディライン、クーペのようなアーチ状のルーフ形状キャビン、そしてクラシックさを感じさせるリヤの処理を巧みにバランスさせているのだ。

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↑スケッチ段階でも「鷹の目」が強調されていた

フロントマスクは、フレーム内側をブラックアウトしたシングルフレーム・グリルと、鋭さが増した鷹の眼差しをイメージさせる傾斜したヘッドライトのコンビネーションにより、新型A6の存在感を際立たせている。サイドビューではエッジの鋭さが増しているが、従来通りのトルネードラインで構成され、ルーフの形状はドーム型を保っている。

ホイールは、ヨーロッパでは16から20インチが用意され、日本では2.8L車が18インチ、3.0L車は19インチが採用される。ヘッドライトはヨーロッパ市場ではハロゲン仕様もあるが、日本ではバイキセノン・ヘッドライトが標準装備で、5500ケルビンのLEDヘッドライトはオプションとなる。なおバイキセノン・ヘッドライトの場合は、LEDデイライトが組み合わされる。

 

衝突安全性はクラストップレベルを実現

衝突安全性能に関してもA6は最高水準を追求した。自社の事故調査&解析データの活用、コンピューターによりバーチャルモデルによる約4000回にも及ぶ衝突のシミュレーション・データの活用なども開発の基盤になっている。

前面衝突では、フロントのクロスメンバーがダイレクトに2本のフロントサイドフレームに衝撃を伝達し、この部分で衝撃を緩和する。またエンジンやフロントアクスルも衝撃を減衰させつつ、エネルギーを強固なフロアやセンタートンネルに分散させる。バルクヘッドは強固な構造とし、軽量なペダルは衝撃で後退することで乗員の脚部を保護するようになっている。

側面衝突では強固なキャビンと、インパクトバーを内蔵したドアにより衝撃分散と変形防止を両立。後面衝突時にはバンパークロスメンバーを経由して、太いリヤサイドメンバーに衝撃を伝達して吸収させている。また乗員保護のために、プレセンス安全システムによりエアバッグやベルトの制御が行われ、前席エアバッグは乗員の身長に合わせて頭部、胸部を保護する展開になっている。

このほかに、歩行者傷害低減システムもフロントまわりに採用。その一方で、低速での衝突ではユーザーの出費を抑えるために、フロントメンバーの先端にクラッシュボックスが設置され、軽衝突時にはメイン構造にストレスが及ばないようになっている。

このA6の安全性はユーロNCAPで最高評価を獲得して、その実力を証明している。また安全性と同時に、強度や剛性の高さも特筆に価する。リヤシート後方とトランク開口部の2本の環状フレームを採用するなどにより、ねじり剛性を大幅に向上。A6は静的、動的な剛性もトップレベルにある。また振動の抑制も十分に配慮され、特にフロア、シート、ステアリングの振動抑制を徹底している。

アクスルやドライブトレインの主要部には液封ダンパーを採用しているのも特徴だ。長距離ドライブにおいては特に新型A6の静粛性が際立つ。これを実現するためにバルクヘッドの開口穴を徹底的にシールし、ボディパネルの多くには防振インシュレーターが吹き付けられている。この新素材のインシュレーターにより、従来の防振アスファルトより3kg軽量化することができた。

インテリアの艤装内側には、極細繊維のフリース材が吸音材として採用されている。この素材はフェンダー内部にも使われ、床下にはグラスファイバー材を貼り付けてある。ウインドウガラスの立て付けも防振性が高められ、フロントガラスは制振フィルム挿入タイプの合わせガラスを採用している。オプションとしてサイドウインドウガラスにもこの合わせガラスを設定しており、赤外線カット機能も備えている。

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↑徹底した空力対策はアンダーフロアにまで及んでいる

A6伝統の徹底した空力開発

新型A6の空力性能はベースモデルでCd=0.26(前面面積2.30平方メートル)で、従来モデルより空気抵抗は5%低減されている。インゴルシュタットでは、4本のムービングベルト式の風洞で1/4クレイモデルのタイヤを回転させつつ空力特性の開発を行ったという。この風洞は直径5mで、気流を300km/hまで加速させることができる能力を持ち、クルマ全体の風騒音の解析や、ノイズ低減策が投入されテストされている。また後に作られた実車同様のフルスケールモデルでは、アンダーフロアの気流整流やエンジンルーム・クーリングの検証、煮詰めが行われている。

こうした空力開発の結果、例えばリヤランプはリップスポイラー形状になっており、ドアミラーカバーの溝は風騒音を抑え、さらに泥の付着を防止する役目も果たすという。また風騒音を遮断するために4枚のドアウエザーストリップを2重に使い、さらにその上からシールをする3重シールを採用している。床下はセンタートンネル部やホイールハウスも含めて完全にフラットにFRP樹脂でパネル成型され、これは同時に塩害や砂利跳ねの被害を防ぐ役割も担う。

さらに、エンジンルーム内の気流の整流も重視された。その理由として、この部分だけで空気抵抗の15%を生み出すからだ。シングルフレームグリルは完全に塞がれ、グリル周囲もシールされて乱流の発生を抑制している。ラジエーターには整流された気流が通過し、高効率の連続可変速電動ファンが組み合わされている。

 

高品質なインテリアはさらにグレードアップ

エレガントなデザイン、高次元の快適性、機能性重視の人間工学設計はA6の伝統であり、クラスのベンチマークである。さらに今回の新型A6はインフォメーションのディスプレイやヘッドアップディスプレイの採用でも、またもやセグメントのトップに立った。

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インテリアデザインはエモーショナルで、ドライバーを包み込むラップラウンド形状がこのクルマの特徴を明確に示している。幅広のセンターコンソールもドライバー側に向かって傾斜し、ドライバーズシートの着座位置は低めだが、ボンネットのほとんどを見通すことができるようになっている。

各ドアの開く角度は大きく、室内へのアクセスは容易で、電動ドアもオプション設定されている。各シートはすべての乗員にとって十分な居住スペースが得られ、ヘッドスペースなどは従来型よりわずかに広げられているが、リヤ席のヘッドレスト位置は視界確保のために低められている。また、オプションで電動ロールブラインドがリヤウインドウに設定されている。

内装の仕上げは熟練した職人の手作りというレベルに到達している。スイッチ類は滑らかで遊びがなく、艤装の隙間、つなぎ目は0.2〜0.3mmになっている。目につく素材はスイッチ類などにあしらったアルミニウム、オプション設定のオーク材の本木目、ダッシュボード上面のレザー風の表皮素材などで、いずれもA6ならではの質感に仕上がっている。また各所に使われているピアノブラックの内装材はコーティングされ、耐紫外線性能と耐擦り傷性を備えている。

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ドライバーズシートは新設計で人間工学を徹底追求し、スポーツ性が高くホールド性に優れている。シート内部のクッションは部位により異なる硬度を持つ先進的な素材を採用。スポーツシートはサイドサポートのクッション深さや角度の調整ができ、電動4Way調整とランバーサポートを持つ新しいタイプになっている。またシートはポジションメモリーを備え、ミラー角度と連動してセットできる。さらに電動マッサージ機能も内蔵している。

ステアリングホイールはマグネシウム・リムで形成され、革巻きステアリングにはヒーターとシフトパドルを装備する。左右独立エアコンは新開発され、従来よりエネルギー消費を抑え、燃費向上に貢献している。空調のファンモーターはブラシレスで超小型化され、熱交換器はコアキシャルタイプ。またこのエアコンは湿度が自動調節される。さらにオプションで、リヤ席左右独立エアコンも選択できる。イグニッションスイッチはボタン式で、キーレスエントリーができ、電動パーキングブレーキも標準装備で、このシステムは走行中にはエマージェンシーブレーキとしても機能する。

インスツルメントパネルとディスプレイは三次元デザインでまとめられ、きわめて視認性が高い。メーターの指針は静止時にはすべて6時のポジションにセットされている。またMMI(マルチメディア・インターフェイス)のディスプレイには7インチサイズを採用し、MMIの機能には新たにエフィシェンシープログラムが組み込まれている。それはドライバーに燃費向上を促すギヤシフトを提示しながら、車両全体でエネルギー抑制プログラムが作動するというものだ。

MMIの操作はタッチ式だ。MMIコントロールはこれまで通り、5個のハードキーとメニュー、バックという2個のキー、合計7個のキーを備え、直感的に操作できる。MMIモニターはダッシュボード内蔵式になり、イグニッションをオンにすると展開する。

さらにMMIとは別に、新型A6の特徴としてオプションのフルカラーヘッドアップディスプレイがある。世界初のフルカラーによるバーチャルディスプレイのサイズは262mm×87mmで、ガラス面より約2.3m前方にデータを投影する。表示する項目はMMIで設定することができ、いうまでもなくヘッドアップディスプレイはドライバーの視線移動の負担を減らし、特に高速走行時に有用だ。

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↑バング&オルフセン製のオーディオはオプション

オーディオは、ボーズ製の5.1サラウンドシステムが選択できる。これは600W出力、12チャンネルのアンプ、14個のスピーカーを搭載する。トップエンドのオーディオは、A8同様にバング&オルフセンである。2個のアンプの出力は1300W、15個のアクティブスピーカーを採用し、A6のキャビンに合わせて1200ものパラメーターを使用して専用チューニングし、コンサートホールと同等レベルの、クリアで迫力あるサウンドを実現している。

上質なカーペットで内装されたトランク容量は530L、開口部のローディング幅は1050mmで、ゴルフバッグ4個または大型スーツケース4個を容易に収納できる。また、収納スペースも拡充されている。大型のグローブボックス、1Lボトルが収納できるサイドドアポケット、センターコンソールには2個のカップホルダーを設置。リヤ席のセンターアームレストにも収納スペースがあり、12Vソケットはフロントシート下に設置している。

ちなみに、Sライン仕様のシートは、ヴァルコナ革とアルカンターラを組み合わせ、エレガントでスポーティな品質に仕上げられている。またセレクターレバーも革巻きになっている。照明は、オプションでサラウンドライティングが設定され、アクティブドアリフレクター、ドアハンドル照明、ドア内部照明、フロント足元照明、センターコンソール、サンバイザーなどはすべてLEDを駆使している。さらにオプションでアンビエントライトも設定され、間接照明でインテリアをドラマチックに浮かび上がらせるようになっているのだ。

ガソリンエンジン2モデルを国内導入

A6のエンジンはガソリンが2種類、ディーゼルターボが2種類、さらに今後追加されるハイブリッドは4気筒2.0LのTFSIエンジン+モーターの組み合わせとなる。いずれのエンジンも今回のモデルチェンジに合わせて内部フリクションが低減され、先進的な総合冷却システム、スタート&ストップ、エネルギー回収システムを採用して燃費を向上させている。最も燃費が優れているのは2.0TDIで4.9L/100kmを達成。ちなみにハイブリッドは6.2L/100kmと発表されている。なお日本市場には現在、ガソリンエンジン2種類の搭載モデルから導入されている。

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↑新たに採用された断続式ウォータンポンプ

新冷却システムは、エンジン、トランスミッション、ヒーターを最も効率よく制御するもので、ガソリンエンジンは断続式ウォーターポンプを採用。冷間始動からウォームアップ段階までポンプを作動させず、エンジン内を冷却水が循環しないようになっており、素早くエンジンを温めることができるわけだ。

V6型2.8LのFSIエンジンは2733ccの自然吸気で、204ps、280Nm/3000rpm〜5000rpmを発生する。ヨーロッパ市場ではFFモデルでCVTとの組み合わせも存在するが、日本市場ではクワトロ+7速Sトロニックという組み合わせのモデルのみとなっている。

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↑3.0LV型6気筒のTFSIエンジン。バンク角は90度

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ダウンサイジングコンセプトのV6型3.0LのTFSIエンジンは、2955ccの排気量でスーパーチャージャーを組み合わせ、300ps、440Nm/2900rpm〜4500rpmを発生する。このエンジンにはAVS(アウディ・バルブリフトシステム)、つまり吸気可変バルフリフトシステムを採用し、燃費は10・15モードで11.0km/L。このエンジンはクワトロ+湿式ツインクラッチの7速Sトロニックとの組み合わせになる。0→100km/hは5.5秒、最高速はリミッター付きで250km/h。燃費は8.2L/100km(10・15モードで10.2km/L)の性能で、従来モデルより10psアップし、燃費は13%向上している。

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↑どちらのエンジンも燃費、加速性能とも先代より優秀に

そしてこのV6型3.0Lエンジンはバンク角90度のレイアウトとなっている。スーパーチャージャーは2個のインタークーラーを通して最高0.8気圧の過給を行う。スーパーチャージャーのレイアウトはスロットルバルブの下流にあり、圧倒的にレスポンスよく過給することができるのが特徴だ。

今後登場するハイブリッドは、直4型2.0LのTFSIエンジン(211ps/350Nm)とモーター(45ps/211Nm)を組み合わせたパラレルハイブリッドで、モーターはATのトルクコンバーターの位置に配置されている。組み合わされるトランスミッションは8速ATで、FF駆動となる。容量1.3kWh、出力39kWのコンパクトなリチウムイオン電池はトランクスペースの強固なボックスに収納されている。電池の冷却には2重空冷システムを採用している。

ハイブリッドのシステム総合出力は245ps、480Nmで、0→100km/hは7.3秒、最高速は238km/h。燃費は6.2L/100km、CO2排出量は142g/kmとなっている。このハイブリッドは最高100km/h、60km/h定速で約3kmの距離をモーターのみのEV走行ができる。

 

進化するクワトロ・ドライブトレイン

パワートレインのレイアウトでは、フロントデフの位置が従来モデルより71mm前進されており、これによりロングホイルベース化、重量配分の改善が実現している。またトランスミッションにも先進冷却システムが適用され、ウォームアップの早期化ができるようになっている。

クワトロシステムのセンターデフは、新世代のクラウンギヤ式を採用している。クラウンギヤ式センターデフは、前後のプロペラシャフトにつながる2個のクラウンギヤの間に4個の斜め歯のピニオンギヤが配置される、きわめてコンパクトなデファレンシャルだ。基本の前後トルク配分は40:60に設定され、前後アクスルで回転数差が生じると2個のクラウンギヤは前後方向に押し出され、セルフロッキング機能を発揮する。フロントには最大70%、リヤには最大85%のトルクが配分できる。

このクラウンギヤ式センターデフのメリットは、圧倒的にコンパクトで4.8kg(従来式より約2kg軽い)と軽量であり、機械式ならではの効率とレスポンスの良さを持つことだ。またこのクラウンギヤ式センターデフと4輪独立ブレーキ制御をセットで利用したトルクベクタリングも実現している。

通常の乾燥路面でも、スリップしやすい路面でもコンピューターが各輪の必要トルクを演算し、それに適合させるように各輪にブレーキが自動介入してリミテッドスリップデフ機能、空転防止機能、旋回補助機能を発揮するのだ。したがって新型A6は高い限界域までニュートラルステアを維持できる。もちろんトルクベクタリングはESPとも協調制御を行っている。

またオプションでスポーツデファレンシャルを装備することもできる。スポーツデファレンシャルは、リヤの左右輪に連続的にトルク可変配分を行うことで、よりスポーティに、安定して走ることができるシステムだ。

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正確なハンドリングを支えるシャシー性能

A6の乗り心地は、ハイレベルのシャシーにより、スポーティさとラグジュアリーセダンにふさわしい快適さの両立を狙っている。フロントは5リンク式で、仮想キングピン軸と理想軸とのオフセット量が極小化されて外乱入力が抑えられるため、きわめて上質なステアリングフィールを実現している。またサスペンションに加わる入力は前後力、横力を完全に分離してコントロールするようになっている。ちなみにトレッドは1625mmで、従来モデルより15mm拡大されている。

アーム類はすべてアルミ鍛造製で、ホイールキャリアやピボットベアリングも同様だ。一方で、X字型の強固なサブフレームは高張力スチール製で、ボディとはリジッド結合されており、きわめて剛性が高く、優れたハンドリング・レスポンスを生み出すことができる。

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↑このパワーステアリングのメリットは大きい

パワーステアリングは、新開発の電気・機械式パワーステア(EPS paraxial drive)が採用されている。ラック軸はホイールセンター部に位置しているので、俊敏なレスポンス、路面からの高いフィードバック、正確なステアリングが実現されている。ギヤレシオは16.1だ。このパワーステアリングは操舵しない状態ではまったくエネルギーを消費しないことも高効率と言える。この最新の電動パワーステアリングの機構は、モーターの回転をベルトでラックギヤ軸と同軸のリサーキュレーティングボール&ナット軸に動力を伝達して、操舵をアシストする最新タイプである。きわめて高い剛性とダイレクトでスムーズな操舵感、高効率で低燃費という特徴がある。またこの電動ステアリングはアクティブレーンアシストとも連携している。
A6の最小回転半径はホイールベースが延長されたにもかかわらず従来通りの5.7m。リヤサスペンションはこれまでのトラペゾイダル式を踏襲している。
リヤのサブフレームはスチール製で、鋼管を水圧で膨らませて一体成型を行うハイドロフォーム製法により成型され、液封マウントブッシュを使用してボディに結合されている。トラペゾイダル・リンクは砂型鋳造製、ホイールキャリアはチルキャスト・アルミ製である。中空スタビライザーはショットピーニング加工が表面に施され、薄肉・高強度である。

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サスペンションにはCDCを標準装備

サスペンションは標準タイプと20mmローダウンされたスポーツサスペンション、さらにクワトロ社がチューニングし、車高を30mmマイナスしたSライン用サスペンションが設定されている。もちろんこれらは専用の減衰力チューニング、スプリングレートを備えている。またオプションでアダプティブ・エアサスも選択でき、20mmの自動車高調整も可能になっている。

ダンパーはCDC(連続可変ダンピングシステム)が標準装備されている。(日本仕様は3.0のみ標準装備)ドライバーが任意にモードを選択することができるドライブセレクトである。ドライブセレクトとはダンパーだけでなくパワーステアリング、シフトポイント、スロットルレスポンスの特性を総合的に変化させるシステムだ。

ブレーキは新型A6で新たに開発され、軽量かつ高いパフォーマンスを発揮するタイプだ。ベンチレーテッドディスクブレーキには、通風ダクトも装着され、キャリパーはアルミ/鋳鉄製フローティング式と総アルミ製の2ピストン式の2種類がある。ちなみにハイブリッドの油圧ピストン部はアルミ製で、パッドホルダー部は鋳鉄製という組み合わせだ。

ESPはMMIで選択した走行モードに合わせて自動対応する最新システムで、スポーツモードでは一定以上の速度域では弱オーバーステアまで許容するようになっているなど、上級ドライバーにも適合している。また急勾配ではESPが自動解除する機能や、緊急ブレーキ時にはブレーキランプの高速点滅なども制御ロジックに組み込まれている。そして滑りやすい路面ではブレーキングと電動パワステのカウンターステアアシストが行われる。タイヤ圧モニターは標準で装備され、またパンク修理キットが標準で、テンパータイヤはオプションとされている。

3.0クワトロのドライブセレクトには今回から新たに「エフィシェンシー」モードが追加された。これは燃費を向上させるようにエンジン、トランスミッション、エアコン、スタート&ストップシステムなどを総合制御するようになっている。

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ドライバーと安全を支えるデバイスも大幅に進化

ドライバーアシストシステムは大幅に進化している。まず、アダプティブクルーズコントロールはレーダーを使用し、0〜250km/hまで適合する。追従する車間距離はMMIにより任意に設定することができ、センサーは40度の角度で250m先まで検知できる2個のロングレンジレーダーと、60mまで検知できるビデオカメラを組み合わせ、プレセンス機能、市街地での追従走行、ナビデータと強調したドライバーサポートを行うことができる。

アウディ・プレセンスは、プリクラッシュセーフティとして機能するもので、追突が予測される場合、ベルトの自動引き込み、ウインドウやサンルーフの自動開閉(もちろん閉じる方向)、ドライバーへの警報、ブレーキの自動スタンバイなどが行われる機能だ。オプションのフル・プレセンスを選択すると、自動緊急ブレーキも行われる。

またプレセンス・リヤとサイドアシストの組み合わせパッケージでは、レーダーにより後方からの他車の接近もモニターされ、斜め後方の警報ゾーンに入るとドアミラー上にLED警告灯が点滅する仕組みになっている。

アクティブレーンアシストは、ビデオカメラの情報を利用し、65km/h以上の場合ウインカーを点滅させずにステアリングを切ろうとするとパワーステアは反発力を発生させるようになっている。また、このシステムの反応レベルはMMIで任意に設定できるようになっている。また、クルマに横滑りが生じた場合には、アクティブレーンアシストはカウンターステアを切る方向にパワーステアが自動アシストする機能もある。

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新型アウディA6は現段階におけるプレミアムEセグメントにおける到達点と言うことができる。それは達成された性能や充実した装備といった面だけでなく、クルマ造り、思想などトータルでの評価といってよいだろう。

 

文:編集部 松本晴比古

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アウディ ジャパン公式ウェブ

 

 

 

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