アストンマーチンは2024年12月11日、F1技術を投入したハイブリッド・システムにより、圧倒的なドライビング・ダイナミクスを味わうことができる究極のスーパーカー「ヴァルハラ」の生産開始を発表した。
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ヴァルハラはアストンマーティン初のミッドシップ・スーパーカーであり、初のPHEVシステムを搭載。EV専用モードでの走行が可能なスーパーカーだ。
アストンマーティン史上最高のパフォーマンスを発揮するV型8気筒4.0Lのツインターボ・フラットプレーンクランク・エンジンを搭載。また、モーターとリヤ電子制御デファレンシャル(E-デフ)を備えた、新しい8速デュアルクラッチ・トランスミッション(DCT)も初めて採用している。
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最強のエンジンを搭載
ヴァルハラは、最初のコンセプトから大幅に進化しており、その中心にあるのは、828psを発揮するメルセデスAMG製の4.0LツインターボV8エンジンと、さらに251psを供給する3基のモーター(2基はフロント・アクスルを駆動)が構成するハイブリッド・パワートレインで、スーパーカーとして最高水準となる総合最高出力1079ps/最大トルク1100Nmを発生する。
搭載されているAMG「M178」型V型8気筒の内燃エンジンは、1リッターあたり207psというアストンマーティン史上最高のリッターあたり出力を実現。動力性能の目標値は、0-100km/h加速が2.5秒、最高速度は電子制御リミッターにより350km/hに設定されている。
ヴァルハラ専用の新型V8エンジンはドライサンプ潤滑システムを採用。さらに大きな特徴として、クランクピンが180度のオフセットで配置されたフラットプレーン・クランクシャフトを採用している。フラットプレーンV8エンジンの点火は、シリンダーバンクを交互に行なうことで、クロスプレーンV8エンジンよりも優れた排気効率を実現する。すべてのシリンダー燃焼がより均一になることで、よりシャープなレスポンスを生み出すのだ。
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新設計のカムシャフトとエキゾースト・マニホールドにより、充填効率は向上。ピストンはより高いピーク燃焼圧に耐え、2基のツインスクロール・ターボチャージャーは、ローラーベアリング式でレスポンスを追求している。
3モーター式ハイブリッド
3基のモーターは、高性能バッテリー(HPB)システムにより駆動を行なう。このバッテリーは高効率な誘電冷却システムを備えており、頻繁かつ連続的なパワー要求を満たすために電力を迅速に引き出す能力、高速回生能力、さらに高いパワー密度を兼ね備えている。これにより、走行時には即座にフルパワーを引き出し、減速時には強力なエネルギー回収が実現できる。
HPBの冷却システムは、先端技術を採用した電気絶縁性を持つ冷却液をバッテリーパック全体に循環させ、560個のセルそれぞれを最適な温度に保つことで、最大限のパフォーマンスを安定して発揮させることができる。
フロント・アクスルは、専用に設計された革新的なラジアル型永久磁石モーター2基で駆動される。それぞれのモーターは18.1ps/kgを発生。EVモードを選択すると、フロント・アクスルのみでの駆動となる。これらのフロントモーターは、トルクベクタリングを可能にするカスタムビルドのP4型フロント電動ドライブユニット内に統合されている。
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P4ユニットには、非対称ローターに最高水準の高強度ネオジム鉄ホウ素磁石を採用。さらに、新開発のステーターとローターオイル冷却機能を備え、温度を効果的に抑え過酷な走行条件下でも最大限のパフォーマンスを発揮することができる。
リヤ・アクスルはV8エンジンによって駆動され、DCTトランスミッションに組み込まれた3基目のモーターで駆動アシストする。
新開発の8速DCTトランスミッションは新型パドルシフトと組み合わされ、ハイブリッドに対応したユニットでモーターを内蔵。このモーターは、エンジンの始動、バッテリーの充電、減速時のブレーキエネルギー回生、そしてトルクアシストとして機能する。また、ギアのシンクロをサポートし俊敏なギアシフトを可能としている。
前後アクスルは物理的に接続されておらず、最先端のIVC(インテグレーテッド・ビークル・ダイナミクス・コントロール)とインテグレーテッド・パワーブレーキシステムが、両アクスルを監視および制御する。
フロントアクスルのトルクベクタリングとリヤアクスルのE-デフは、状況に応じて4輪の駆動力を調整し、トラクション、安定性、俊敏なハンドリングを生み出す。これにより、ステアリングのトレース性が向上し、ニュートラルなハンドリング・バランスが実現されるのだ。
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革新的な空力デザイン
デザインは、強力なダウンフォースを生み出す革新的なアクティブ・エアロダイナミクスを採用している。空力システムは、600kgを超えるダウンフォースを生み出し、この数値は240km/hで達成され、350km/hの最高速度に至るまで維持される。
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アクティブ・エアロダイナミクスは、速度が増すにつれてフロントおよびリヤウイングの迎え角を徐々に小さくすることで、過剰なダウンフォースを制御。これにより、幅広い性能域にわたって空力バランスを一定に保つことができるのだ。
圧倒的な運動性能、強力なダウンフォースを確保するエアロダイナミクス、軽量・高強度なカーボン素材については、アストンマーティン・アラムコF1チームのコンサルティング部門である「アストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズ(AMPT)」との協力によりフルカーボン・モノコック構造として実現している。
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こうしたテクノロジーによりヴァルハラは従来のパフォーマンスの限界を突破し、公道走行ができ、サーキットでその真価を発揮するスーパーカーになっている。
ヴァルハラは世界で999台のみの限定生産で、初回納車は2025年下半期に開始される予定で、価格は約1億3000万円からと予想されている。