【アストンマーティン】世界初! 水素パワーの「ラピードS」がニュルブルクリンク24時間レース出場

ニュルブルックリンク・レース仕様のアストンマーティン ラピードS 水素バイフュエルカー

このほどアストンマーティンは、水素ガスとガソリンのバイフューエル・システムを搭載した4ドア・4座席の「アストンマーティン・ラピードS」が、2013年5月17〜20日に開催されるニュルブルクリンク24時間レースに出場すると発表した。

「プロジェクトH」と名付けられたこのプロジェクトは、アストンマーティン社の新たな技術的な挑戦であり、水素エンジン車としてレースに出場するのは世界初の試みとなり、予選は水素のみで走ることで、ゼロエミッションを達成するという。

ステアリングを握るのは同社のCEO、ウルリッヒ・ベッツ氏と同社のテストドライバー、そしてジャーナリストで、そのジャーナリストは桂伸一選手だ。エントリー名は「アストンマーティン・テストセンター」だ。

本番前のVLNレースで実戦テストするアストンマーティン「ラピードS 水素バイフュエル」

このアストンマーティンのチャレンジの意義は次の通りだ。

水素を燃料とする水素内燃エンジンは既存のテクノロジーを使用する過渡的な存在だが、水素のインフラを整備するのに貢献することや、高出力・高性能車にとっては有効という位置付けなのだ。将来の化石燃料に依存しない社会では、水素が燃料として位置付けられるという想定のもと、こうした時代の中小型車は水素を使用した燃料電池車がメインストリームになると認めている。その一方で水素の社会インフラの早急な整備が不可欠であり、こうしたチャレンジが水素供給インフラ整備を加速させる役割を果たすというのだ。

水素内燃エンジン自体は30年以上前から開発が行われ、現時点ではネガティブな要素はほとんど解決され、本格的な水素時代に至るまでの過渡的な技術とされている。アストンマーティンは、100周年を迎えるにあたり、自社の技術的な能力をアピールするのと同時に、次の100年に向け、水素社会の実現に取り組む社会的なPRとしてこの挑戦を位置付けているのだ。そしてこの参戦は1回限りのものではなく、技術的に有意義で、さらなる技術の発展に貢献する可能性を持ち、EVやハイブリッド車に代替し得る可能性を持つことを意味している。

水素、ガソリンを使用するプロトタイプの6.0L・V12気筒ツインターボ・エンジン

レースに出場することで技術的な挑戦を成し遂げるとともに、公認レースに正式に出場する世界初の快挙となるが、ラピードSに搭載されるエンジンは6.0L・V12型ツインターボのプロトタイプ(AM11型)エンジンで、水素とガソリンを使用するバイフューエル仕様とし、最高出力は550ps(リストリクター規制による)だ。このエンジンは、ガソリンと水素の混合比は0%〜100%、つまりどのような混合状態でも運転可能になっている。

助手席、リヤのトランク部に水素タンク、リヤシートバック部にガソリンタンクを配置

搭載している水素のみで全長25kmのニュルブルクリンクのコースを、レーススピードで走行することができるようになっているため、予選は水素のみを使用しゼロエミッションで走行する計画だ。またこれは世界で最もパワフルで、最速の水素エンジン車という世界記録を作ることも期待されている。

水素を使用するため、アストンマーティンは水素に関する専門家たちとともにシステム開発を行い、水素タンクを搭載するにあたってはFIAの安全規則やドイツのTUVの認証を受けている。水素タンクは助手席部とトランク部に各2本、合計4本のタンクを搭載し、350barの圧力で3.2kgの水素を搭載できるようになっており、この水素をすべて使用することでニュルブルクリンクを1〜2周(25〜50km)することができる。ガソリンタンクにはガソリンが100L搭載され、このガソリンで7〜8周を走行できる能力を持ち、これは電動/ガソリン式ハイブリッドカーに勝る点だ。

リヤに配置される水素タンク
助手席に搭載されるフロント水素タンク

水素タンクはアルミ製ライナーの表面に厚さ15mmのカーボンファイバーで補強し、水素タンクはさらにカーボン製ケースに格納されている。水素漏れ検知システムも内蔵されており、いかなるクラッシュ入力にも対応できる強度も備えているという。

ラピードS+桂伸一
このニュル24時間レースのドライバーに桂伸一氏を起用
ニュル24時間レースのエントリーリストに掲載された「ラピードS 水素バイフュエル」

アストンマーティン公式サイト

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