実はこの2台は同じプラットフォームを使用したモデルで、いずれも市場で好評価を受けているモデル。タカハシも両方に試乗させてもらい、どちらも甲乙つけがたいほどのデキであると報告している。
プラットフォームだけでなく、ステアリングシステム(TRW製)も同じだったりして、いろいろと共通部分がある。そこでフィーリングレベルの話だが比較してみた。フィーリングとなると確かな根拠のない話となるので、記事として公開するにはいささか信憑性が不足する。そこで、私見のスタッフブログということで読んでいただきたい。ちなみに、プラットフォームでいえばフォードクーガも同じものを使用している。またひと世代前のC1プラットフォームだとマツダ・アクセラ、ボルボV50あたりが使用している。
↑違いがわかれば、あなたも大人・・・
そもそもV40とフォーカスは狙っているユーザー層が違うので、同じプラットフォームを使っているといっても、比較すること自体に無理は感じる。まぁ、ラーメンと蕎麦の違いか、いやいや十割蕎麦と二八蕎麦の違いか。その十割蕎麦のボルボV40はスポーツモデルであり、ライバルはゴルフGTIやアウディS3だと思う。さらにスーパースポーツモデルのR-デザインも国内でデビューしており、かなりレベルの高いプレミアムスポーツ・コンパクトと言える。
一方、二八蕎麦のフォーカスはどうかというと、車格をイメージさせるグレード名は「スポーツ」。でもいわゆるスポーツモデルではなく、スポーティなモデルという意味で、V40がスポーツでフォーカスはスポーティなのである。したがって比較の土俵に上がっていないのだ。やっぱり蕎麦とラーメンか。
それでも比較してしまうと、エクステリアは共に気合の入ったデザインで仕上げられ、インテリアも同じく、両者とも力作で個性的なアイディアもあり、甲乙つけがたい。それで、手触りや座り心地といった肌感の官能評価では、フォードのシートが好みのタイプ。ボルボもレベルは高く全く不満はないが、おしりと背中がフォーカスが好きとつぶやいている。
ハンドルに関しては操舵フィールが違う。とはいってもどちらも素晴らしく、国産車のみなさん、参考にしてくださいよーってお願いしたくなるほどフィールがいい。特にボルボは操舵力を変更できるシステムまで持っているので、まさに自分好みに変更できる。わさびとか入れて味が変えられる感じか。。。一方フォーカスは原稿にも書いたが、SAT(セルフアライニングトルク)が強いため、ステアする方向より切り戻しのほうが手応えは強い。だから、クルマが真っ直ぐ走りたがっているというフィールを得、これまでに体験をしたことのないフィールを味あわせてくれたフォーカスがグッド。あたらしい味にはトライすべし。
サスペンションは設計の狙いが違うため、V40が採用しているダイナミック・サスペンションのほうがやはり固めに感じる。速度域の高いところで思いっきりハンドリングを楽しむならV40をチョイス。じゃぁフォーカスは緩いのかって言うと、そうじゃない。これがまたフォードの知られざる一面で、国内ではフォードをアメ車のイメージで考える人も多いためか、ドイツ主導というか欧州フォードのモデルは非常にシャシー性能の評価が高いのだ。
それは普通に走っていると乗り心地も良く、決して硬い印象はない。が、ワインディングへ入るとしっかりストロークをしてコーナーをクリアしていく走りができるのだ。V40が少なめのロールなのに対し、フォーカスはロールをしてコーナリングする。アジリティという運動性能を正しく理解し味付けした乗り味と表現できる。
エンジンはV40が1.6Lターボのエコブースでフォーカスは2.0Lの自然吸気エンジンのデュラテック。まぁ、同じエンジンでターボがあるとエコブーストで、なければデュラテックと名前が変わる。ごはんにきゅうりをのせて、海苔で巻かれるとカッパと名が変わるのとおなじか。スペックは180ps対170sp、240Nm 対202NmとなっていてV40に軍配があがる。走行フィールとしてはダウンサイジングのターボエンジンであるV40のほうが低回転でのトルク感が強いので力強さを感じる。
組み合わされるトランスミッションはV40、フォーカスともにフォード・ゲトラグのDCTでフォーカスが乾式6速、ボルボは湿式6速を使っている。変速にはV40がステアリングで操作できるパドルシフトを持ち、フォーカスはシフトレバーのサイドで操作するサムシフトでマニュアル操作ができる。言うまでもなく操作フィールはV40のほうが良い。
そして制御の違いも興味深い。V40はDCTの魅力を感じるように素早いシフトチェンジをするが、フォーカスはAT的な変速をするように制御されているのだ。だから当然やんちゃな印象はなく、大人なフィーリングだ。このあたりからもクルマの性格決めが伺える。
アクティブセーフティという点ではやはりボルボに軍配が上がる。レーダーとカメラを装備し、歩行者安全までフォローした装備は、セグメントを超えた充実ぶりで安全神話は健在だ。フォーカスにもレーザーレーダーで衝突回避機能はあるものの、ボルボよりは簡易なシステムであるため、対応する範囲には差がある。
というように、共通部品を多く使っていても、かなり印象が異なることになるが、共通しているのはどちらを選んでもハイレベルの満足度が得られるモデルということだ。そして長距離ドライブも楽しく、そして楽に移動できるモデルであり敢えて差異を言えばV40は走りたくなるモデルで、フォーカスは穏やかにドライブしたくなるという違いが個人的にはあった。
そして、このセグメントにあとはメルセデス・ベンツのAクラスが入ってくる。モデルのレベルとしてはもっともよろしくない印象のAクラスなのだが、価格も似たようなものなので、ブランドイメージからするとベンツが一番人気になるんだろうなぁと思う。何がよろしくないかと言えば、乗り心地が硬すぎる、メルセデスオリジナルの7速DCTがATレベルの変速スピードで有難みが薄い。そしてアクセルワークに対して早開きの傾向と、踏んでもレスポンスしないところがある、といった制御への不満があったのだ。また、電動パワーステアリングのフィールもV40、フォーカスほどではなく、手応えの薄い軽い操舵感だった。パワー的にも122ps/200NmでA180のスペックで比較すると苦しい。
この先さらにゴルフ7、アウディA3が2013年内に投入されるので、いろんな味が楽しめ、まさに輸入車Cセグメントが熱く激しい顧客獲得作戦を展開するのだろう。