「編集長!カローラに乗ってきました」
「11代目となった新型カローラは、日本の経済をけん引してきたといっても言い過ぎではないほど、昭和の時代にバカ売れし、そして、高級だった自家用車を大衆のものにしたという、歴史に残るモデルだからな」
「そうなんです、今回もこのカローラは国内専用モデルで、グローバル展開するカローラとは全く別物で、日本のクルマという印象でした」
「なんだ?そりゃ」
「最初に1.3Lに乗ったんですが、その乗り味はなんか昔のクルマを思い出すようで、新鮮味がなかったんですね」
「どういうことだ」
「ステアリングのセンターがボールナット(またはリサーキュレーティングボール式)の時代みたいに、センターがビシッとしてなくて、なんとなく真っ直ぐという感じで、応答性も鈍い。このクラスのモデルは往々にして反応を鈍くするモデルが多いんですが、それが、妙に懐かしい感じでした」
「昭和のハンドリングか?」
「それ、それです!」
「あ?、それは意図したものだな」
「そうなんです。試乗のあと製品企画の大平さんという方に、その話をしたら、やはり、わざとそうしているということでした」
「そうだろうな」
「でも、VWのゴルフにしてもポロにしても、もっとしっかりしたハンドリングですよね。なんで、そうしたのか?という話も聞いたら、やはり、運転に興味もなければ知識もない60、70歳のおじいちゃんやおばあチャンが運転するのに、あまりシビアにはできない。少しルーズぐらいがちょうどいい。という言うんです」
「そりゃ、トヨタは台数の販売が半端なく多いから、いろんな意見も多い。だから、販売店からのリクエストというのは無視できないんだよ。ハンドリングとしては、欧州的な味にするのがいいとわかっていてもユーザーがそれを望んでいない場合が多いということだろう」
「そうなんですね。でも自分が20歳のころのおじいさん、おばあちゃんはクルマが高級品の時代の人たちで、クルマに関する興味も知識も少なかったと思います。欧州旅行の経験者も今ほどはいなかったでしょうから。でもいまの団塊の世代の人たちで60歳代前半はバリバリ、グローバルじゃないですか。パソコンだって普通に使うし、70歳代だって、PCが特別なものじゃないですよね。津々見さん70歳超えましたけど、i-PadとWi-Fiルーターを持ち歩いてますからね」
「津々見さんは特別、若いだろうけど、確かに昔の60歳、70歳と今の60歳、70歳は違うよな。それとは別に、地域での格差もあるだろう」
「そうですね。大都市での70歳と、地方の都市部以外に住む70歳ではクルマに関する知識や認識、求めるものが違うかもしれないですね」
「大平さんがいうのは、そういうことだろうな」
「でも、なんか馬鹿にされたような気分で、ユーザーレベルが低いから、レベルの低いクルマでいいと言われているような気になります」
「だけど、欧州は誰でも200km/h出して走る国だ。イタリア、フランス、スペインだって日本よりははるかに速度域は高いし、なにより、みんな飛ばすだろ?」
「そう言われれば。イタリアの峠道なんか、おばあちゃんに抜かれたことありますからね」
「とにかくイタリアやイギリスは全開が多い。そしてコーナー手前にはブラックマークといのも当たり前だろう」
「そう考えると、日本人は、穏やかに走り、ご近所での日常使いというのがメインで、高速道路を日常的に走ったり、峠道をすっ飛ばして走るというユーザーは想像しにくいですね」
「だから、馬鹿にしているというより、マーケティング戦略なんだよ」
「そうなんですね。僕たち自動車メディアは最新の、そして先端の技術が投入されたものを頻繁に試乗したりしてるから、どうしても最高のものがベンチマークになって、そこを目指していないものはダメだと判断しているのかもしれませんね」
「それは車種によるんだよ。今回のカローラは国内専用だし、VWゴルフをベンチマークとしていないクルマづくりなんだろうな。もっと言えば、新興国なんかは、日本のカローラをベンチマークにしろ、というぐらいクルマづくりが違っていると考えてもいいんじゃないか?だからこの前のレクサスGSはBMW5シリーズやメルセデス・ベンツのEクラスと比較してもいい。RXだってX5やMLクラスと比較して優劣を語ってもいい。でもカローラはVWゴルフと比較すること自体がナンセンスなんだろう」
「なるほど。でも1.8Lのモデルはまた、フィーリングが違って、僕らが言うスポーティ系の乗り味でしたね」
「そこもトヨタ商法の凄いところで、同じカローラというラインアップでもグレードや排気量によってセッティングを変えてくるんだ。つまり、ユーザーターゲットがしっかりしていて、1.8Lを希望する人は、迷って1.3Lを買うことは絶対ない。迷った時は、他モデルか他社のモデルにスライドしてしまうユーザーだと分かっているということなんだ」
「なるほど、そういわれれば1.8Lはスポーティすぎるから1.3Lでいいや。とはならないですね」
「だから今度の新型カローラのメインモデルとなる1.5Lの出来具合は気になるところだよな」
「そうですね。それこそ、ターゲットは広いですから、いろんな意見の人を満足させる出来になっているのか?というのが評価のポイントですかね?」
「1.3Lの出来が甘い、なんて記事を書いているようじゃ、まだまだということだな(笑)」
カローラ試乗レポート→【トヨタ】カローラ試乗レポート ユニバーサルデザインと日常ユースに絞り込んだクルマ作りを追求