【繁浩太郎の言いたい放題】EVの時代とユーザー生活

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はじめに・・・
前回のコラムで書いたPHEVの本質では、「ユーザーもPHEVなど環境車の本質を理解し、環境対策に参加する時代」と言いました。今回は、さらにもう少し先のユーザー生活が快適便利に変わっていく時期のことを考えてみたいと思います。つまり「EVの時代とは?」を考えてみたいと思います。

あれだけ、HEVが販売の柱になっているトヨタでさえ、昨年の秋、「EV」と言い出しました。このことは世界の環境規制が厳しくなっていく中で、例えHEVといえども、排ガスを出すICE(内燃機関)車の将来の厳しさを示唆しているのではと思いました。

さらに当然のこととしてEVには自動車メーカーのコアコンピタンスであるエンジンがないので、参入障壁が下がり、現在の自動車メーカーはその存続にも不安がでてきます。

■HEVの存在

HEVは日本でプリウスの登場以来大きく伸びています。

表1

バリエーションにガソリンエンジン車とHEVを持っているフィットで見ますと、新型になった13年末以降はHEVの方が売れています。これは、今ではHEVがなければ販売台数的に辛いということになります。

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フィット100(左)とフィット・ハイブリッド

表2

別件ですが、この表からはフィットは「広くて、安くて、燃費よく、カッコもソコソコ」というオールラウンダーコンセプトですが、相次ぐリコールをキッカケに販売はダウントレンドなのがわかります。

そんな日本で伸びているHEVですが、世界的な排ガス、燃費の規制であるCAFEやZEV法の動向から見ると将来は厳しいです。特に、ZEV法のように「ゼロ・エミッション」が要求されてしまうと、ICE(内燃機関)を搭載するHEVでは難しいです。

■EVの現状

EVといえば日産のリーフですが「あまり売れていない」のが実情です。理由は簡単でユーザーにとって「一般の車と同じように使えない上に価格は高い」からで、電池がその主要因でしょう。

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日産 リーフ

リーフの航続距離は改善されてきていますが、まだまだ一般のクルマには及びません。また、各地に急速充電器が増えているものの、十分ではなく、また急速充電の繰り返しは電池性能の劣化に影響します。もちろん急速と言っても充電時間はそれなりに必要になります。

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電気自動車で最大の課題はバッテリー

さらに極寒から酷暑など内燃エンジン車のような、あらゆる使用環境下への対応は電池性能的に厳しいです。また、中古車の電池劣化度合いにバラツキが出る可能性もあり、その際の中古車価格設定は難しくなります。もうひとつは原発が厳しい日本の場合は、CO2を考えた発電エネルギーの確保も課題となります。

「ICE車の土俵」でEVを考えると、メリットも勿論ありますが、トータルの商品性はかなり劣ることになります。よって、EVの普及には急速充電器の設置促進も良いですが、本質は「EVの土俵」を創ることが大切だと思うのです。

■EV土俵のキーになる「エネルギー政策」

EVは勿論走行時にはC02はでませんが、日本の発電所では現状は火力発電が主になっていてC02は出ています。

表3

原発がこのまま稼働されないとなると、太陽光発電等の再生可能エネルギーの導入が必要になります。しかし、まだまだ再生可能エネルギーでの発電はコストが厳しく、電力消費地から遠く離れた大規模発電所で大量に発電し送電線で送るという考え方では効率も悪く成立しません。

よって、例えば太陽光発電をより小さい家庭単位で行ない、不足分は他の方法で補ったり、天気が良くて多く発電できた時は蓄電したり、また家庭の使用電気を効率よく制御したりと、いわゆる「スマートハウス/スマートグリッド」の考え方で、生活や移動の消費エネルギーを効率よく発電し溜めて使うという考え方になっていくと、ここにEVがハマってきます。

家庭用のパナソニック、リチウムイオン蓄電システム(蓄電容量20kWh)で150万円以上と意外と高額になります。しかしリーフだとクルマ機能にプラスして蓄電池30kWhを持っていて、300万円台からあります。

これが「EVの土俵」の一つだと私は思います。これはICE車ではできません。

■ところでFCVはどうなる?

FCVは、水素を生成し、貯める→クルマに充填→水素による発電→(充電)→EV走行という流れですから、EVより搭載電池は少なくても航続距離には問題ありません。また、車両への水素充填は数分でできます。

このようにFCVは「ICE車の土俵で戦える」ので良いとされています。しかし、車両が高価になり、インフラも整えにくいなど課題は多くあり、何と言っても「水素作り」がネックです。

クリーンに作るには水を電気分解して作る方法がいいのですが、この電気はどこからくるのか? わざわざ、電気を使って水を分解して水素にし、その水素からまた発電して、モーターをまわす。

なんだか、効率が悪い感じがしますよね。「水素作り」は、コストや環境も考えた効率のいい生成方法の開発が必要です。

■まとめ

スマートホームは言われて久しいのですが、なかなか身のまわりで実現してきません。スマートホームはエネルギーからその効率使用などを基本に新時代の便利で快適な暮らしを目指していますが「へえ?そんなに良いの」と、まだ具体的にユーザーメリットの形で伝わってきません。

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さらにスマートホームは新築時ということになり、設備投資も必要になり、ペイするのかもわかりにくいというのが現状と思います。しかし、今既に建っている戸建てやマンションに「廉価に後付け」できてスマートハウスになれば良いのですが、大量の電線の配回し等課題は多いようです。

EVは地球環境から求められる解答です。しかし、EVだけでICE車の土俵で頑張っても、たちゆかない。ITやAIなどの進化とともにスマートハウス生活になる時、EVは移動だけでなく蓄電という形で一つの大きな役割を果たすようになると思うのです。

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日産と積水ハウスがプレゼンテーションしたスマートホーム。リーフの電力と家庭電力を結合する

その頃にはエネルギー政策やスマートモビリティ社会としての考え方から、移動効率の悪いクルマに長い航続距離を期待しなくなる可能性もあります。

表4いずれにしても、EVはICE車のように単独でハードを作って終わりではなく、周りとの協調で初めて成立するモビリティだと思うのです。

これが、「EVの土俵」です。

ITやAIの進化とともに、スマートシティ、スマートハウス、スマートモビリティ・・・全部「スマート」ですが(笑)、地球環境を考えた、便利で快適で効率のいい生活の準備段階がEVと共に始まりそうな気がします。

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