BMWとMINI クルマを知っている人のクルマ コンパクトディーゼル車のホント!!!

マニアック評価vol452
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ヨーロッパでは新車登録におけるディーゼル乗用車の割合は半分を超えているが、日本では数%と少ない。しかし、欧州車には多くのディーゼル仕様車があり、国産ではマツダがディーゼル乗用車に力を入れている。今回、BMW118dとMINIブランドからコンパクトディーゼル乗用車が投入され、その実力を探ってみた。試乗したのはBMW 118d、MINI Cooper D 5Door、MINI Cooper SD Clubmanの3モデルだ。<レポート:繁 浩太郎/Kotaro Shige>

■ディーゼル乗用車のクリーン度は?

私がアイドリング状態の試乗車の後ろでかがんでいると「何してるの?」と高橋AP編集長。「イヤ、臭うか確認を」と私。すかさず「エエ〜遅れてる!」と笑われてしまった。最近のディーゼル乗用車は「臭わない」というのが常識だそうな。(汗)

そう、今のディーゼル乗用車はポスト新長期規制をクリアしており、クリーンでエコカー減税の対象にもなっている。また、ディーゼル車特有の「カリカリ音」も、この3台は車外でこそ少し聞こえるが、車内では走りだしたら殆どわかない。それよりグングンと加速するので、そちらに気がとられる。

ご存知のように、自動車の馬力はトルク×回転数で、一般的なガソリン車に較べてディーゼル車は低速トルクが太く、低い回転数でも馬力がでるのだ。

■ディーゼル乗用車の費用は?

今回試乗した118dでどれくらい費用的メリットがあるのか? 概略を計算してみた。カタログではJC08モードで118iのガソリン車は18.1km/L、118dのディーゼル車が 22.2km/Lで、118dが約82%の燃料で済む。

燃料価格の差は、資源エネルギー庁の全国平均データでハイオクが約135円/L、軽油は約104円/Lで、軽油はガソリン価格の約77%。(ヨーロッパのガソリン車はほとんどがハイオク指定)で、82%と77%を掛け合わせて約63%。つまり、118dは118iに較べて約6割りの燃料代ですむということだ。

一方、新車価格は118iに比べて118dは約21万円高。毎月の燃料代が1万円として1年で12万円、それが約6割で済むわけだから、5万円程のセーブとなり、ざっと4年でペイするということになる。

■BMW118dの走り

エンジンは2.0L直列4気筒+コモンレール・ダイレクト・インジェクション・システム+可変ジオメトリー・ターボチャージャーを組み合わせ、最大出力110kW(150ps)/4000rpm、最大トルク320Nm(32.6kgm/1500〜3000rpm)。

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最大トルクが1500rpmからということは、ほぼ発進から高速走行域まで最大トルクで力強く走れることを意味する。特に高速道路での長い上り坂などでその力強さは実感できるはずだ。(実際、高速道路で100km/h/1800rpmくらい)

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また、この118dのハンドリングは、単にスポーツ性を言いたいがための切れすぎるハンドリングのクルマとは異なり、50:50の前後重量配分やFRへのこだわりなども含めて、低速から高速まで実に素直でリニアなフィールでBMWそのもの。まさに「駆け抜ける歓び」を実感できる。

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走行モードを「SPORT」または「ECO PRO」に選択できて、ECO PROを選択すると、エンジン・レスポンスやシフト・タイミングの最適化、オート・エアコンの作動も制御し、燃費が最大20%程度アップするらしい。

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また、最近増えてきた装備だが、ECO PRO モードで 50 ~160km/h 走行中にアクセルを離し、ブレーキを踏まないでいると「コースティング機能」が働き出す。これはエンジンが駆動系から切り離され、車両はアイドリング状態で惰性走行することを言い、長く緩い下り坂の時などの燃費向上に役立つのだ。

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このように118dは、まさに相反する「走りと燃費」が両立し、BMWの「駆け抜ける歓び」を実感できるクルマなのだ。

■MINI Cooper D 5DoorとMINI Cooper SD Clubman

初代から今回の三代目ミニに渡って、基本的なデザインや走りはあまり変えないまま、サイズアップをし、バリエーションも増やし、販売台数を伸ばしてきた。今回、ディーゼル仕様の追加で、さらにユーザーの広がりが期待できる。

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MINI Cooper D 5Doorの走りだが、試乗車は、1.5L・ 3気筒ディーゼルエンジンで、118dと同様に、コモンレールとターボ・チャージャーが搭載され、85kW (116ps)/4000rpm、270Nm/1750〜2250rpmを発揮し、6ATで23.9km/Lの燃費となっている。

1.5L 3気筒と見てあなどるなかれ、ディーゼルなのだ。エンジンの振動など感じず、発進から低速、高速まで力強さが続く。走り感はミニとベストマッチだ。ミニの「デザインセンス+キビキビした走り」は踏襲され魅力的な商品に変わりないが、少しディーゼル車とわかる音がしたり、また走りの質の高い118dと比べると、一般的なFF車の走行フィールに近い感じだ。

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一方、MINI Cooper SD Clubman、こちらは2.0L 4気筒ディーゼルエンジンで、同じくコモンレールとターボ・チャージャーが搭載され、140kW (190ps)/4000rpm、400Nm/1750〜25000rpmを発揮し、8ATで22.7km/Lの燃費となっている。

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ボディサイズは、先代モデルに対して全長+290mmで4,270mm、全幅+115mmで1800mmとなり、とても「ミニ」ではなくなりひとクラス上のCセグメントとなった。

そしてその走りは、2.0L化による大幅なトルクアップにより、普段の街中走行から高速走行まで「いつも下り坂」状態。ドンドンとクルマは前に行きたがる。有り余るパワーを感じるのだ。しかし、ハンドリング的には、サイズが大きくなったこともあり、穏やかになり一般的なFFに近くなっている。

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ユーザーの幅を広げるために、Cセグメントの大きさにし、ドアも4枚付けて、インテリアの質感を上げ、という一連の「一般化」が必要だったのだろう。

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■日本のディーゼル乗用車市場

さて、ディーゼル車は燃費的にみると、ヨーロッパのような一定速度での平地長距離移動にメリットがある。日本では、交通インフラの関係で比較的短距離移動が多く、山坂や加減速も多く、ハイブリッド車のほうが有利と言える。またハイブリッド車には新しさ感と未来感もあり、車両価格はガソリン車より高くても広く受け入れられてきた。

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ディーゼル乗用車はマツダが頑張っているが、他は全て輸入車になる。輸入車ではどうしても価格も高めになり、日本でのディーゼル乗用車比率は今後も厳しいと考える。しかし、輸入ディーゼル乗用車のその走りは勿論、燃費の良さと軽油の安さが(対ハイオク比となる)割安感につながり、また「クルマを知っている人のクルマ」というようなブランドになれば、輸入車の殆どはディーゼル乗用車?となる日がくるかもしれない。

資源エネルギー庁のデータ:http://www.enecho.meti.go.jp/statistics/petroleum_and_lpgas/pl007/results.html#headline1

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