【トヨタ】自動運転技術を使用した「高度運転支援システム」を2010年代半ばに導入することを発表

cacc1310_05 — 高速道路で車車間通信、レーダー、カメラを使用した「オートメイテッドハイウェイドライビングアシスト」

2013年10月11日、トヨタは自動運転技術を利用した高速道路、自動車専用道路における次世代の高度運転支援システム「オートメイテッドハイウェイドライビングアシスト」（AHDA)を開発したと発表した。AHDAは先行車両と無線通信（V2V)しながら追従走行する「通信利用レーダークルーズコントロール」と、全車速域で道路の白線などをセンサーで検出しあらかじめ算出された最適なラインを走行するよう操舵を支援する「レーントレースコントロール（Lane Trace Control）」との連携により、安全運転の支援や運転負荷の軽減を行なうというシステムだ。

cacc1310_02 — 車車間通信により前車の動きに対して加減速の遅れがない。また白線検知により「レーントレースコントロール」が行なわれ、半自動運転状態ともいえる高度運転支援システム

トヨタは運転の主役であるドライバーの意思を尊重し、クルマを操る楽しみを損なうことなく、安全・安心な移動手段を提供するため、高度運転支援システムの早期実用化を目指すという。今回新開発したAHDAは、2010年代半ばを目標に商品化する予定としている。なお10月14日～18日まで開催された「第20回 ITS世界会議東京2013」にAHDAを出展し、10月15日から首都高速道路で公道デモを実施した。

また、トヨタは１月にアメリカ・ネバダ州で開催された「2013 International CES」に出展した実験車などを活用し、自動運転の研究を通して得られた先端要素技術やノウハウを利用し、次世代の高度運転支援システムの早期実用化を推進していくという。

■高速道路における高度運転支援システム(AHDA)
・通信利用レーダークルーズコントロール
先行車との車間距離の検知にミリ波レーダーを使用した従来のレーダークルーズコントロールに対し、「通信利用レーダークルーズコントロール」は次世代ITS技術である車車間通信（V2V)技術(700MHz帯)も用い、先行車の加減速情報を利用することで、同時加減速、安定した追従走行など、より精緻に車間距離を制御する。また、不必要な加減速を低減することで、燃費向上や渋滞の解消などにも貢献する。

idss1310_02 — 高速道路における「オートメイテッドハイウェイドライビングアシスト」

・レーントレースコントロール
「レーントレースコントロール」は、自動運転技術を利用した全く新しいシステムで、カメラやミリ波レーダーの高性能化、制御ソフトの高度化などにより、あらかじめ適正な走行ラインを算出。そのラインに沿って走行するよう、ステアリングと駆動力、制動力を、全車速域で適切に制御する。

レーントレースコントロールにより進路がアシストされる — レーントレース機能により進路保持

■自動運転技術の研究
2013年1月にネバダ州で開催された「2013 International CES」で、統合安全コンセプトに基づいて研究中の自動運転技術の実験車を展示した。トヨタは、北米先端研究所（Toyota Research Institute of North America）を拠点に、交差点や分合流のある一般道も想定し、車両前方に向けたカメラによる信号機の認識や、最先端のセンサー群による車両や歩行者、障害物など周囲の状況判断を、自律走行可能な実験車を使って実施することで、より安全な経路を選択し走行するための様々な要素技術の研究を進めている。

トヨタは自動運転技術の研究を1990年代後半から進めており、公道試験についても、米国では安全に万全を期しながら、数年前から実施している。また国内でも、約2年前から次世代高度運転支援システムの公道試験を行なっている。

トヨタは「すべてのドライバーがあらゆる状況下で、熟練ドライバーのような運転能力を発揮できるよう、安全運転を支援すること」を目指し、ドライバーに最適な高度運転支援システムを開発することで、より高い安全性を実現し、モビリティ社会の究極の願いである「交通死傷者ゼロ」の実現に貢献するという。

トヨタは、現在のITS技術を採用し、高速道路、自動車専用道路での高度運転支援システムというターゲットを絞った開発を行なっていることがわかる。世界的なトレンドとして2020年代までは、ドライバーをアシストする「高度運転支援支援システム」がメインストリームであり、そのための法的な基準、枠組みの検討が日本の国交省を始め世界各国の政府機関で検討されている。その流れに合わせたシステム開発といえる。

トヨタのシステムのポイントは車車間通信を使用したアクティブクルーズコントロールとプログラムによるフィードフォワード･レーントレースコントロールだが、車車間通信は相互に発信機・受信機を搭載する必要があり、実用化段階では多くの車両がこの700MHz帯の送受信機が普及している必要があることはいうまでもない。これはまさに現在のITS技術の実用化検証課題なのである。

高度運転支援システム、自動運転技術を開発している日産は、現時点ではトヨタと異なり、車車間通信などは使用せずより自律走行に近いコンセプトを打ち出しており、同じ目的でありながら手法はかなり異なっているのが興味深い。

なおトヨタは、これら以外に現在開発中のドライバー支援システムとして、自動操舵により衝突回避を支援する歩行者対応PCS、駐車支援システム（パークアシストシステム）、市販前提の先行試作モデルと思われる燃料電池車などを公開した。

fcv1310_02 — 量産化を前提とした燃料電池車プロトタイプ。2015年に発売予定。

・プリクラッシュ歩行者回避操舵システム
前方の道路を横断する歩行者を認識して警告するシステムと、駐車している車両の陰から飛び出す歩行者を検知した場合は自動ブレーキで衝突を回避し、自動ブレーキによる衝突の回避が間に合わない場合は自動操舵を加えることで衝突を防ぐシステム。これはカメラによる歩行者の検知と相対速度の測定、危険は迫った場合の自動ブレーキ+自動操舵というシステム構成だ。ただし、自動操舵による回避を行う場合は、回避方向に障害物がないことを検知するセンサーも装備されている。