JNCAP 2019 自動車アセスメント安全性評価試験が果たした役割

日本の自動車安全性評価試験(JNCAP)を実施している独立行政法人・自動車事故対策機構(NASVA)は2020年5月27日、2019年度の自動車アセスメント(JNCAP:安全性評価試験)の結果を発表した。

ヴェルファイアの前面オフセット衝突テスト

衝突安全性能において重要な役割のJNCAP

JNCAP(Japan New Car Assessment Programme)は1995年に、自動車事故対策センター(当時、2003年に自動車事故対策機構[NASVA]に改組)が、ユーザーの安全な車選びの参考と、安全な乗用車の普及促進を目的として始まった。当初はアメリカで行なわれていたNCAP(New Car Assessment Programme)に倣って乗用車の衝突安全性能に関しての試験を行なっていた。

その内容は、前面(フルラップ)衝突試験、ブレーキ性能試験のみであったが、時代とともに側面衝突試験や、オフセット前面衝突試験、チャイルドシート評価試験、歩行者頭部保護性能試験、サイドカーテンエアバッグの評価、後面衝突頚部保護性能試験、前面衝突後席乗員保護性能評価試験などの項目が追加されていった。

JNCAPはアメリカのNCAPやヨーロッパのユーロNCAPなどと協調しながら、より広い範囲の衝突安全性能を試験し、評価してきており、結果的に日本の乗用車の衝突安全性能を年々引き上げることができたという大きな成果を残している。

高い安全性の日本車

JNCAP実施前の時代は、アメリカ向けのクルマにはドアにサイドインパクトバーを内蔵していたが、日本市場向けにはなし、というクルマも存在した。だが、その後はこうした現象は解消され、各国のNCAPにも対応し、今ではグローバルに通用する衝突安全性能を達成することが常識となっているのだ。

現在、衝突安全性能に関しては、スーパーコンピューターを駆使したシミュレーション技術や、超高張力鋼板、さらに高強度なホットスタンプ材などボディ骨格素材の進化、さらに各自動車メーカーそれぞれの社内での実車衝突試験を繰り返すことで、技術的な蓄積により、衝突安全性能に関しては大きく進化している。JNCAPだけではなく、日本車は各国のNCAPにおいても優れた実績を残すようになっているのだ。

2019年度に評価を行なった新型車12台の結果を見ても、いずれも高成績で軽自動車の日産デイズ/三菱eKワゴン、ダイハツ タントも、より大きなクルマと遜色のない衝突安全性能を備えるに至ったことがわかる。そういう意味でJNCAPの果たしている功績はきわめて大きいということができる。

2019年度の衝突安全評価結果(1)
2019年度の衝突安全評価結果(2)

予防安全性能評価の追加

JNCAPは2014年度から、衝突安全性能だけではなく被害軽減ブレーキ(対車両)試験、車線はみ出し警報試験など、予防安全性能評価を開始した。

ABSやESPだけではなく、クルマとの衝突を回避、あるいは衝突被害を軽減できる運転支援システムが普及し始めたことに対する対応だ。

この運転支援システムは、危険な状態をドライバーに警報したり、システムが作動することで、衝突事故の発生を避けることができる能力を備えており、クルマの安全性を考える上で、極めて大きな意味を持っている。

この予防安全性能評価の項目も、2016年度からは被害軽減ブレーキ(対歩行者[昼間])試験を開始し、当初の車線はみ出し警報試験は2017年度から車線逸脱抑制試験に変更している。

そして2018年度からは被害軽減ブレーキ(対歩行者[夜間:街灯あり条件])試験、高機能ヘッドライトの評価、ペダル踏み間違い時加速抑制試験、事故自動通報装置の評価、さらに2019年度からは被害軽減ブレーキ(対歩行者[夜間:街灯なし条件])試験を取り入れている。

つまり、運転支援システムの進化に合わせて、最新レベルの性能評価が行なわれるようになっているのだ。

予防安全性能評価の方法

予防安全性能の評価は、被害軽減ブレーキ(AEBS)では、まず前方の車両に対する衝突回避性能で、試験車を10〜60km/hで模擬車両(ターゲット)に後方から接近させ、警報と被害軽減ブレーキの作動状況を確認する。

この試験は、前方の車両をより早く検出できるかどうかによって、警報のタイミング、自動ブレーキを掛けるタイミングが早められるので、より高速時にも対応できるかどうかがわかる。

実際の試験は、ターゲットが止まった状態での試験と、20km/hで走行している場合の2種類が行なわれる。警報または被害軽減ブレーキの作動により衝突を回避したか、あるいは衝突した場合でも、衝突前にどの程度速度が低下していたかを確認し、それぞれの場合に応じて得点が与えられる。

さらに被害軽減ブレーキは、前方の歩行者との衝突に対しても評価が行なわれる。この場合は歩行者を模擬したターゲットに10〜60km/hで試験車を接近させ、警報、被害軽減ブレーキの作動状況を確認する。

歩行者に対する被害軽減ブレーキのテスト

歩行者の横断は見通しの良い道路を横断する場合と、駐車車両の陰から道路を横断する場合の2種類の状況を想定した試験になっている。警報または被害軽減ブレーキの作動により衝突を回避したか、あるいは衝突した場合でも衝突前にどの程度速度が低下していたかを確認し、それぞれの場合に応じて得点が与えられる。

歩行者認識のレベルをチェック

この試験の意味は、テスト車両のセンサー(カメラ、ミリ波レーダーなど)が、歩行者、つまり人間であることをより早く認識できるかどうかがポイントとなる。

そして2019年度からは、夜間の横断する歩行者に対する試験も行なわれるようになった。夜間の道路横断中の歩行者を模擬したターゲットに30〜60km/hで試験車を接近させ、警報と被害軽減ブレーキの作動状況を確認する。

夜間の横断する歩行者に対する被害軽減ブレーキのテスト

見通しの良い道路を横断する場合と、対向車両の後ろから道路を横断する場合の2種類の交通環境を想定した試験を行なう。昼間と同様に衝突を回避したか、あるいは衝突した場合でも、衝突前の速度低下を確認し、得点が与えられる。なお夜間特有の条件として街灯がある環境と街灯がない環境でテストを行なっている。

この試験は、暗い環境でテスト車のヘッドライトの光のみで歩行者をより早く検出できるかどうかが重要で、カメラ、レーダーの精度だけでなく、明瞭ではない環境下で人間を検出するための画像認識ソフトウエアの性能が問われる。

さらに車線逸脱抑制、つまり車線内を走行中のライントレース性の評価が行なわれる。この試験は2014年度までは「車線はみ出し警報」試験として行なわれ、試験車を60km/h、または70km/hで道路の片側に引かれた白色の破線から少しずつはみ出すように走行させたときに、適切な位置で警報を発するか否か、複数の種類の警報を発するか、警報によってはみ出した方向が分かるかをテストしていた。

しかし2015年度以降は、試験車両を道路に引かれた車線からはみ出すように60km/hと、70km/hで走行させたときに、車線逸脱抑制装置が車線を維持するよう試験車両を制御するかどうかを確認。車線逸脱量が少ない場合に高い得点が与えられ、車線逸脱量が多い場合は得点が低くなる。車線逸脱量が一定量を超えていた場合でも、警報が適切な位置で作動
していれば得点が与えられる。

車線逸脱制御システムのテスト

このテストは、カメラによる車線(白線)の検出能力と操舵アシストの性能の両方が問われる。

ヘッドライトや誤発進防止機能の評価

これら以外に、クルマがバックする場合の後方視認性も評価される。幼児の体格を考慮した視対象物(ポール)をテスト車両の後方に配置し、車内のモニター(バックビューモ
ニター)で視対象物を十分確認できるかが評価される。

また高機能ヘッドライト(アダプティブ制御ヘッドライト、またはオートハイビーム式ヘッドライト)の性能に関しては、夜間走行時に前方の交通状況によってヘッドライトの照射範囲を自動的に変更する「自動防眩型(アダプティブ制御式)ヘッドライト」、または「自動切替型(オートハイビーム)ヘッドライト」を備えているか否かを確認する。自動防眩型の方が高い得点が与えられ、また、同じ機能でも低速から作動する装置に高い得点が与えられる。

またペダル踏み間違い事故を防ぐための「ペダル踏み間違い時加速抑制制御」システムも評価が行なわれる。

ブレーキペダルとアクセルペダルを踏み間違えた状況を模擬するために、試験車を模擬車両(ターゲット)に接近させ、停止状態から急速にアクセルペダルを踏み込み、その際に、衝突防止または被害軽減のために急発進、急加速を抑制するかを確認する。

この試験は、車両が前方にある状態から前進状態で発進する場合と、車両が後方にある状態からバックで発進する場合の2種類を想定した試験を行なう。衝突を回避したか、あるいは衝突した場合でも、衝突時の速度をどこまで低減できたかを確認し、回避あるいは減速量に応じて得点が与えられる。

2019年度の予防安全性能の試験結果

2019年度は新型の乗用車が12車種、軽自動車が4車種で合計16車種について評価を実施している。

そしてトヨタのアルファード/ヴェルファイア、日産 セレナ、スズキ ランディ(セレナのOEMモデル)、レクサスNX、レクサスUXが満点を獲得し、従来までの最高得点を超えたため「予防安全性能評価大賞」を受賞し、13車種が最高評価の「ASV+++」を獲得した。

アルファード/ヴェルファイアは2015年にデビューしたモデルだが、2017年のマイナーチェンジでトヨタ セーフティセンスをアップグレードさせ、ミリ波レーダー、単眼カメラの性能を大幅に高め、夜間の歩行者や自転車も検知できるように進化した。

ほかにも、レーダークルーズコントロール(全車速追従機能付)には付随機能であるレーントレーシングアシスト(LTA)を追加し、さらに、アダプティブハイビームシステムも設定した。さらにさらに、2018年にはインテリジェント クリアランスソナーを標準装備し、ペダル踏み間違いによる加速抑制システムを導入している。

また、レクサスNX、UXもアルファード/ヴァルファイアと同等レベルの予防安全システムを装備している。

現行のセレナ/ランディは2016年にデビューしたモデルだが、2019年にマイナーチェンジを行ない、「全方位運転支援システム」を全車標準設定とし、予防安全性能を大幅に向上させている。従来の単眼カメラのみからミリ波レーダーを組み合わせたシステムに進化したのだ。

前方では対向車がいてもハイビームを維持できる、ハイビームアシストの進化機能である「アダプティブLEDヘッドライトシステム」を日産として初採用。後側方は、走行中に隣接レーンの後側方を走行する接近車両との接触を回避するよう支援する「インテリジェントBSI(後側方衝突防止支援システム)」、「BSW(後側方車両検知警報)」、後退時には、後方を横切ろうとする車両を検知し注意を喚起する「RCTA(後退時車両検知警報)」を新設定。さらに、「踏み間違い衝突防止アシスト」を標準装備している。

「プロパイロット」の機能は、ドライバーのストレスをさらに軽減するため、下り坂での設定速度保持や、よりスムーズな減速を可能とするブレーキ操作などが可能となった。また、ワイパー作動時の機能向上も図っている。

2019年度の予防安全性能評価では、得点上位のクルマでは対歩行者(昼間、夜間)での得点差で順位が決定したといってよい。これらは主としてカメラの歩行者検出能力の差ということができる。

これまでトップに立っていたスバルは、今回試験を受けたフォレスターはトヨタ、日産車にくらべ対歩行者への被害軽減ブレーキの得点で差がついている。また予防安全システムがフル装備のメルセデス・ベンツCクラスは昼間の対歩行者とペダル踏み間違い加速抑制システムでわずかながらトップ得点モデルとの差がついたという結果になっている。

メルセデス・ベンツ Cクラスの夜間歩行者試験(街頭あり)

ただし、注意しておきたい点は、これらJNCAPの試験、評価はすべてテストコースで実施されているため、リアルワールドの道路、交通条件とは異なるということだ。実際の道路では電柱、信号機、ガードレールや建築物、他の走行車両などが混在しており、ミリ波レーダーでのノイズが多くなり、カメラでは画像上での多数の物体が検知され、そうした条件でターゲットを正確に検知できるかどうかという点がリアルワールドでの予防安全性能だ。これは実際の道路・交通環境化である程度時間をかけて検証する他はないのである。

JNCAP 関連情報
自動車事故対策機構 公式サイト


The Mortor Weekly

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