【なぜ?】クルマのサイズ分けと年々大きくなる理由

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日本のクルマ・マニアといわれる人は、クルマのサイズに拘る人が少なくない。ニューモデルが出るたびに、サイズが「大きくなった」と否定的に語る人が多いのも毎度のことだ。極端なマニアになると、そのクルマ像は全長4mくらいで5ナンバーサイズのクルマに高回転型エンジンを積んだMT車こそ理想のクルマだと・・・

クルマのサイズによるクラス分け

しかし日本のマニアが求める全長4m、5ナンバーサイズのクルマに高回転型エンジンを積んだMT車といった存在は、グローバル商品にはなりえないので、日本の自動車メーカーが造るはずもなく、残念ながらマニアの望むクルマは出現することはないだろう。

もちろん、こうしたマニアの人が持つクルマのサイズ観は日本独自のもので、グローバルな視点で見るとまたそれぞれの国の事情によって違った感覚がある。また歴史的に見てもクルマのサイズは変遷を遂げていることも興味深い。

現在の日本のメーカーは、例えばトヨタのクルマは、日本市場の販売比率は25%程度で、残りの75%は海外の現地生産、または輸出であり、その結果として日本専用の車種を造ることは稀である。またグローバル商品であるがゆえに、クルマのサイズ、大きさ、クラス分けは、日本の事情に合わせたものではなく、グローバル基準で考えられるようになっている。

自動車業界で使用するクルマのサイズ、クラス分けは、ヨーロッパ基準の「セグメント(segment):マーケットにおける区分、クラス分けの意味)」が使用されることが多い。もちろんこのセグメント分けも時代によって変化しているが、基本は次のような区分になる。

・Aセグメント:ミニカー、またはマイクロカー 全長3700mm以下 排気量 :0.6~1.3L
・Bセグメント:スモールカー、またはスーパーコンパクト 全長3700mm~4200 mm  排気量が1.0 L~1.5 L
・Cセグメント:コンパクトカー、またはミディアムカー 全長4200mm~4600mm 排気量1.6Lから2.0L
・Dセグメント:ラージファミリーカー 全長4500mm~4800 mm 排気量2.0L~3.0L
・Eセグメント:エグゼクティブカー 全長4800mm~5000mm 排気量3.0L以上
・Fセグメント:ラグジュアリーカー 全長5000mm以上 排気量4.0L以上

ただし、現実にはセグメントをまたがるサイズのクルマも多く出現しており、特に最近のクロスオーバー/SUVは意図的にクラスを超えるサイズとされることが多く、BセグメントをオーバーしCセグメントの全長に近い「Bセグメント+」、Dセグメントの全長に近い「Cセグメント+」という中間セグメントも存在している。また、ボディサイズだけではなく、クルマのキャラクターも加味されていることもあり、非常に分かりにくくなっている。

またエンジンの排気量は、現在のダウンサイジング・コンセプトの影響を受け、排気量の縮小傾向が続いており、例えばCセグメントであっても1.2Lエンジンを搭載するようなケースも現れている。

アメリカのクルマのサイズ

このようなセグメントというクラス分けはヨーロッパが基準で、アメリカはまた異なったクラス分けを行なっている。アメリカの場合は、マイクロコンパクト、サブコンパクト、コンパクト、ミッドサイズ、ラージサイズ(かつてはフルサイズと呼ばれた)に分けられる。

ヨーロッパ基準に当てはめてみると、マイクロコンパクトはA/Bセグメントで、サブコンパクトはB/B+、コンパクトはCセグメント、そして、ミッドサイズがDセグメント~Eセグメントで、ラージサイズがEセグメント以上となる。

ラージサイズのクライスラー・ニューヨーカー(1972年)

周知のようにも、ともとアメリカ市場では第2次世界大戦後にはフルサイズと呼ばれる乗用車が続々登場し、全長5000mm以上、全幅2000mm、ホイールベース2800mm以上、搭載エンジンは5.0L以上のV型8気筒といったクルマがあふれた。そのためもあって、フルサイズカーが乗用車のサイズの基準となっているという経緯がある。

なおアメリカ市場でも、現在は乗用車のボディサイズ、エンジン排気量のダウンサイジングが進み、ラージカーのセダンで、最も大きなサイズでも全長5000mm程度で、4600mm~4800mmサイズのセダンが中心になっている。

1961年型リンカーン・コンチネンタル。全長5400mm、全幅2000mm、ホイールベース3124mm

ただし、アメリカ市場でベストセラーを続ける、フォード F150(ピックアップトラック)を筆頭にしたピックアップ/SUVのクロスオーバー車は、全長5410mm~6360mm、全幅2010mm、全高1900mm、排気量はV6 3.5L~V8 6.2Lというスペックで、かつてのフルサイズカーは姿を変えて健在なのだ。

フォードF150

フォードF150だけではなくGMはシルバラード、キャデラックはエスカレード、FCAのダッジ・ラムなどの各メーカーがこのラージカー・サイズのピックアップをラインアップしており、少なくともこのカテゴリーはダウンサイジングとは無縁で、アメリカの市場からは絶大な支持を受けている。

シボレー シルバラード

また、アメリカの自動車メーカーのラインアップを見ると、セダン、ハッチバックの分野では、B/Cセグメント~Dセグメントまで多数の車種が発売されており、ラージサイズ一辺倒ではなくなっており、C~C+セグメントは、アメリカ車に加え日本車、韓国車、ヨーロッパ車が入り混じる販売激戦区となっている。

日本の場合

日本の場合は、戦後の国民車構想の影響を受け継ぐ軽自動車は、全長3400mm以下、幅1480mm以下、高さ2000mm以下、排気量660cc以下とされ、、5ナンバーの乗用車は全長4700mm以下、幅1700m以下、高さ2.0m以下を小型自動車とし、それ以上のサイズを普通自動車として3ナンバーに分類している。

1955年に登場した初代クラウン。全長4285mm、全幅1680mm、全高1525mm、ホイールベース2530mm
初代クラウン諸元表

5ナンバー車のエンジン排気量は、かつては2.0L以下とされ、3ナンバー車の半額以下の自動車税であったが、1989年以降はエンジン排気量別の税制に変更されたため、以前のような3ナンバー=高額の自動車税ではなくなった。
一方で、全幅1700mm以下という5ナンバーのサイズは、市街地や山道の道路幅が狭い日本では、扱いやすさ、取り回しがよいという実用上のメリットがあるのは確かだ。また同様に軽自動車が根強い支持を受けているのも、税金の安さとそのサイズによるところが大きい。

5代目クラウン。全長4765mm、全幅1690mm、全高1440mm、ホイールベース2690mm

その一方で、かつての5ナンバー枠でのクルマ造りの影響は、例えばトヨタ・クラウンのようなフラッグシップカーでも1974年~1979年の5代目では、全幅で1695mmを守りながら全長は4765mmあり、きわめて幅狭で細長いプロポーションとならざるをえず、当然ながらこの縦横比では海外市場には適合しなかった。クラウンだけではなく、他の日本車も同様の制約を受けていた。

日本車の3ナンバー化が一挙に進んだのは、1989年の自動車税改正と、日本市場より海外市場の方が大きくなるというマーケットのグローバル化という2つの理由で3ナンバー化が加速した。そのため現在では5ナンバー車は少数派となっているのが現実だ。

歴史的にボディサイズを見る

歴史に残る大量生産の先駆けモデル、T型フォードは、全長3318mm、全幅1687mm、全高2188mm、ホイールベース2540mmだった。アメリカ市場向けに開発されたクルマだが全長、全幅とも控えめで、一方で全高が高いことに驚かされる。しかしその後は、ホイールベースが3000mクラスになり、当時のフルサイズカーが次々にラインアップすることになり、アメリカ市場独特のクルマのサイズへと変化していく。

フォードのT型は日本でもノックダウン生産され、タクシーとして活躍した。その一方で、日本で開発・製造された1935年型のダットサンクーペ(14型)は全長2790mm、全幅1190mm、ホイールベース2005mmで、現在の軽自動車よりはるかに小さなクルマだった。

1935年式ダットサン14型。全長2790mm、全幅1190mm、全高1440mm、ホイールベース2005mm

また、戦前のトヨタが1936年に製造したAA型は全長4785mm、全幅1730mm、全高1736mmで、6気筒 3.4L エンジンを搭載しており、このAA型は手本としたシボレーに似たサイズとなっていた。

1936年式トヨタAA型セダン

戦後に製造した初代クラウンは、全長4285mm、全幅1680mm、全高1525mm、ホイールベース2530mmで1.5Lエンジンを搭載しており、日本の小型乗用車のベンチマークとなっているボディサイズだ。このサイズ感は、ダットサンは、純日本的な発想で、トヨタAA型はアメリカ車を真似たサイズで、当時の未成熟な日本の事情が見て取れる。

BMW 1600

一方で、ヨーロッパではどうか? 現在のBMW 3、5シリーズの原型で、現在の同社の基礎を築いた1961年に登場したノイエクラッセ・シリーズのBMW 115(1500)は、全長4500mm、全幅1700mm、全高1400mm、ホイールベース2550mmであった。

BMWの新世代セダン・シリーズは2代目クラウンの登場時期とほぼ一緒で、搭載エンジンも4気筒1.5L~2.0Lだったが、ボディサイズはBMWの方がやや大きめとはいえ、ボディのサイズ感は似ているといえる。しかしBMWは、このノイエクラッセが3シリーズや5シリーズに拡大していくことになる。

最後にフォルクスワーゲン・ゴルフを見てみよう。Cセグメントの旗手のゴルフも初代モデル(1972年)は全長3725mm、全幅1610mm、全高1410mm、ホイールベース 2400mmで、これが国際基準となった。現在でいえばBセグメントより小さいサイズだったのだ。

1972年式初代ゴルフ。サイズ的には現在のBセグメントより小さめ

そのゴルフも現在のモデルは、全長4255mm、全幅1799mm、全高1452mm、ホイールベース2637mmとなり、これが現在のCセグメントサイズの基準となっている。

ボディサイズが、これだけ大きくなっている理由は、グローバルで人間の体格の向上、室内の快適性の追求、様々な装備の搭載、運動性能や衝突安全性の追求など多くの要素が重なったと考えるべきだろう。

現在のCセグメントを代表するゴルフ

しかしヨーロッパにおいても、旧市街の狭い道路、裏路地は少なくないので、Bセグメントのクルマがマーケットでは常に主流であり続け、Aセグメントのクルマも造られ続けている。日本では軽自動車の人気が衰えないのと同じ理由が存在しているということができる。

auto mobile study

COTY
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