【BMW】 M4(F82型)/M3(F80型)最新情報  レポート:菰田潔

S82型M4.2014年春に国内導入される見込みだ
F82型M4.2014年春にデビューする予定

2014年春にデビューが予定されるニューモデル、M4とM3の詳細情報をお伝えしよう。これまでのM3はクーペが発表された後にセダンが数ヶ月遅れで登場していたが、今回の新しいモデルは2ドアクーペのM4と4ドアセダンのM3はほぼ同時に発売される模様だ。 近年、BMWの車種ラインアップは、セダン系が奇数、クーペ系が偶数となるネーミングに統一され、それが3シリーズにも当てはまることになった。これまでの3シリーズクーペは4シリーズと呼ばれるようになり、新型Mモデルもこれに従ったネーミングになっている。

セダンはM3のんネーミングでS80型となる
セダンはM3のネーミングでF80型となる

そのためクーペはM4クーペと呼ばれるが、M4はクーペに限らずカブリオレもあるので、あえて「クーペ」が付け加えられる。さらに将来はM4グランクーペなんていうモデルも登場するかもしれない。

新しいMモデルはF32型がベースでコードネームはM4がF82型、F30ベースのM3はF80型と呼ばれる。 Mモデルのコンセプトは、サーキットを走るクルマだが一般道も走ることができる、ということで、BMWのなかでハイパフォーマンス・スポーツモデルの最右翼に位置付けられる。

今回のM4とM3ももちろんそのコンセプトを踏襲し、先代モデルに比べてパワーアップと大幅な軽量化を実現しているのがポイントだ。 走りの追求は先代モデルより徹底して行なわれている。サスペンションだけでなくサブフレームを強化し、ゴムブッシュを介さずボディにダイレクトマウントするなどレーシングカー並みの手法が採用されている。

テストドライブ
カモフラージュの段階で同乗体験ができた

M4真横

◆パワーユニット 搭載されるエンジンは4.0L・V型8気筒NAエンジンから、新設計の3.0L・直列6気筒ツインターボに変更された。他のBMWのラインアップと同じようにダウンサイジング・ターボエンジンになったわけだ。もちろんこの直6エンジンは直噴、バルブトロニック、ターボという最新のBMWエンジンの三種の神器が揃ったエンジンだ。

直列6気筒直噴エンジンが搭載される
直列6気筒直噴エンジンが搭載される
M3/M4の性能曲線
M3/M4の性能曲線

 

これは3.0L・直列6気筒のN55B30エンジンとそっくりだが、M4、M3のためにシリンダーブロックからBMW M社で新設計したものである。その証拠にシリンダーブロックのボアはクローズドデッキになっている。クローズドデッキとはシリンダー上部がブロック側と一体結合された状態で、シリンダーブロックを上から見たときにシリンダー周辺に冷却水通路などの空間が見えない状態だ。高回転、高出力エンジンに必要なシリンダーの剛性アップのためである。エンジン名称もS55B30となり、Sから始まるMモデルの専用エンジンとなっている。

ターボチャージャーは2個あるツインターボを採用している。1、2、3気筒で1個、4、5、6気筒で1個のタービンを使い、クルマの最後尾にあるマフラーまでそれぞれがセパレートされたエキゾーストパイプのレイアウトになっている。マフラーの直前でそれぞれがY字に分離し、車体外側は通常は電動フラップで閉じられ、内側ルートからマフラーに入る。マフラー内では右からは左へ、左からは右へ消音されて左右のテールパイプから排出される。

インテリア

ドライビング・パフォーマンス・コントロールスイッチで「スポーツ」、「スポーツ+」を選択するかエンジン回転数によって、電動フラップが開いてマフラーの右端と左端を通るだけで排気され、勇ましいエキゾーストノートを奏でるようになる。

ターボエンジンではよいサウンドをつくるのが難しいが、新しいM4/M3はしっかりと音創りをしている。 NAエンジンと比べた時にターボエンジンの欠点としてターボラグが挙げられる。アクセルペダルを戻して空気がシリンダー内に入らない状態から急にアクセルペダルを踏み込んでも、すぐにはタービンが回らないのでトルクの立ち上がりが遅くなる現象だ。

このエンジンではアクセルオフしてから1分間はタービンの回転を残しておいて、アクセルペダルを踏み込んだ瞬間からレスポンス良くトルクが立ち上がるような仕組みを採用している。

サーキットを走るマシンで一般道も走ることができるというコンセプトだけあって、ハードなサーキット走行にも耐えられるようにオイルの強制循環システムも採用されている。ダブルフロー・オイル循環ポンプにより、長い時間強い横Gがかかっていてもターボチャージャーも含めてエンジンオイルを供給できるという。

ターボによって過給された空気は水冷インタークーラーで冷却される。この冷却水はラジエターグリルの一番前側とクルマの右側の空気取り入れ口から入る風の流れで冷却されるようになっている。 最高出力は従来型の420psから430psと少しアップしている程度だが、最大トルクは400Nmから500Nmへと25%もアップしている。性能曲線を見ると最大トルクの発生回転数は1800rpmと低い回転数から5500rpm付近まで幅広く発揮する。最高回転数やレッドゾーンの位置は先代より低くなっても、力強さは格段にアップしている。

M3真横

◆ボディ&シャシー

ボディの軽量化は目を見張るものがある。現行M3の1650kgに対して150kgも軽量化され、E36時代のM3並みにしている。エンジンそのものの軽量化もあるが、先代から引き継がれたカーボン(CFRP)ルーフを筆頭に、カーボン製プロペラシャフト、カーボン製ストラットタワーバーを採用している。トランクリッドはアウタースキンを軽量なC-SMCという樹脂で作り、インナーはカーボンで補強する手法だ。これだけで5.5kgの軽量化を果たしたという。

フロントの下回り。
フロントの下回り。電動パワーステアリングのモーターが判る
リヤ下回り
リヤの下回り電動フラップのモーターが見える

プロペラシャフトはこれまでは途中にジョイントを設けた2ピースタイプだったが、カーボン製になって1ピースとなった。これで5kgの軽量化を果たしている。回転部品の軽量化はスポーツカーにとってはダイナミック性能を上げるために有効だ。前方からの衝突時にはテレスコピック状に動いたスチール製のプロペラシャフトに対して、カーボンの取り付け部のアルミ合金部分に竹のような節をつけ、衝突時にはそこからパイプの内側に潜り込んでいくデザインにして安全性を確保している。

カーボン製プロペラシャフト
カーボン製プロペラシャフト
カーボン製タワーバー
カーボン製タワーバー

 

先代のフロントフェンダーは軽量化のために樹脂製だったが、このモデルではボンネットも含めてアルミ合金製に変わった。また、パワーステアリングは電動化することで、エネルギーロスを少なくし、軽量化にも貢献している。 これまでもMモデルはサブフレームをボディに直付けし、しかも取り付け剛性や精度を高めていたが、このM4のボディを下から覗くとレーシングカーまがいの補強が付けられている。

フロントのサブフレーム。市販車両ではフルカーバーされると予想される
フロントのサブフレーム。市販車両ではフルカーバーされると予想される
補強用のフレームがびっしり下回りを覆う
補強用のフレームがびっしり下回りを覆う

それはリヤだけでなくフロントも同様で、フロントホイールハウス内にまでサブフレームの補強が飛び出してきている。この写真はプロトタイプだからインナーフェンダーが切れているが、正式にはカバーされるだろう。サブフレームを幅広くして、さらにがっちりとサスペンションからの力を受け止められるようになっているのだ。

装着されるタイヤはミシュランのパイロット・スーパースポーツで、フロント255/35ZR19(92Y)、リヤ275/35ZR19(100Y)XLが標準になる。オプションで255/30ZR20、275/30ZR20が用意される。

標準はアルミニウム製のハブ・ベルとスチール製のローターが組み合わされた2ピース式で、高温になった時にジャダーが起きにくいコンパウンド(複合材)ブレーキである。オプションでローターがより軽量なカーボンセラミックブレーキも用意される。

トランスミッションは、6速MTが残されている。最近はポルシェ911 GT3でさえツーペダルになってしまったが、M4/M3は3ペダルの6速MTも用意される。しかしドライバーのミスを誘発しない安全性と絶対的なシフトの速さによって7速DCTの方がメインになるだろう。

リヤデフは先代のメカニカルなものではなく、M5やM6と同じように、電気で制御するリミテッドスリップデフが装着されている。0~100%の制御が可能なのはもちろんだが、フォワード制御も行なえる点がユニークだ。つまりカーブの出口でアクセルを踏んでいくと、LSDを事前にロック傾向にしてよりトラクションがかかるように補助をする。ドリフトもやりやすいようにフォワード制御してくれるようだ。

今回はジャーナリスト1人が1回だけ助手席に座って新しいM4を体験するチャンスがあった。6MTのM4をBMW M社のテストドライバーによるデモ走行で味わった。アクセル全開にしながら7000rpmでシフトアップしていくと、強烈な加速が長い時間続く。エンジンの盛り上がり感もあるし、単なるワイドトルクのエンジンとは違うことを実感した。

ブレーキングはペダル踏力に比例した強いブレーキが可能だ。ブレーキペダルを強く踏み込むだけ強力なブレーキを体験できる。100km/hオーバーでこれをやると脳みそが偏るような不思議な感覚に襲われる。

◆ダイナミクス
サスペンションだけでなくサブフレームの強化が絶妙な走りを生み出す。ハンドルを切ると遅れなく反応し、強い横Gを受けながらのコーナリングも安定感が高い。タイヤがよれてしまうようなGが掛かっていても、サスペンションやサブフレームはびくともしない頼もしいシャシーである。

クラウディアさんではない。レポーター菰田氏のお気に入りショット。美形の案内係りだそうだ
クラウディアさんではない。レポーター菰田氏のお気に入りショット。美形の案内係りだそうだ

実は特別にもう1台乗らせてもらった。BMWドライビング・エクスペリエンスのドイツのチーフインストラクターであるクラウディアさんが運転する7速DCT付きのM3セダンである。私がニュルブルクリンクでインストラクターとして彼女と一緒に仕事をしているよしみで乗れたのだ。

クラウディアさんによると6800rpmくらいでシフトアップする方が速そうだと言っていた。最近のターボエンジンは目一杯まで引っ張ってシフトアップするより、トルクが太いので低い回転数からそこをうまく使うドライビングに切り替えた方がいいだろう。それでもクラウディアさんはときどき7000rpm以上まで引っ張ってくれたが、頭打ち感のないトルクの出方はさすがである。

軽量化したボディも実感できた。レーンチェンジやスラロームなどでの身のこなしが軽やかなのだ。スペックをみるだけでなく今回は助手席ながら体感もできたわけだが、早くハンドルを握って乗ってみたくなった。

新型BMW M3諸元表

BMW M3_M4_4面図

COTY
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