近年の異常気象により、非降雪エリアでも突然雪に見舞われる場面に遭遇する。また、豪雪エリアでも春の到来前に気温が高くなり雪ではなく雨が降ったりと気象の変化が激しい。非降雪エリアでは夏タイヤと呼ばれる種類のタイヤで通年を過ごすことが多く、スタッドレスタイヤに履き替えるユーザーは少数派だ。それだけに、スタッドレスタイヤに対する認識が誤っていたり、誤情報、都市伝説が存在するというケースもなくはない。
今回は、降雪地域の北海道と非降雪エリアの東京という2か所の販売店を取材し、ユーザー認識の違いを聞かせてもらった。そこでわかったことは正しい情報と認識をしっかりと持たなければ安全、安心のカーライフにならないということだ。
話を聞かせてもらったのは東京が「タイヤガーデン東京 代沢店」の山主茂マネージャーと北海道が「タイヤガーデン札幌厚別店」の藤巻真店長、同社長の加藤秀明氏、ヨコハマタイヤジャパンの永田聡所長の各氏に伺った。
東京のコレ○
・タイヤの保管は専門店にお任せ
・基本的には、3年~4年で買い替え
・スタッドレスタイヤで燃費は悪くならない
東京のコレ×
・4WDなので多少の雪でも大丈夫
・年数が経っているけど、溝が残っているから大丈夫
・銘柄やスペックは関係ない。スタッドレスタイヤならなんでもOK
東京のユーザーにとってスタッドレスタイヤは必需品の人とエマージェンシー用の人に分かれた。スキーやスノーボードなどで雪道をよく走る人と、雪が降って仕方なく、あるいは、備えあれば・・・というユーザーだ。特に後者のユーザーに間違った知識の人が多いという。
「自分のクルマはSUVで4WDなので、少々の雪ならスタッドレスタイヤは不要。高速でのチェーン規制はダメだけど、一般道なら問題ないでしょう」というユーザーが少なからずいると東京・山主店長。
スタッドレスタイヤへの認識というか、クルマの常識に対する認識違いでもある。どんな高性能な4WDでも路面とのグリップがなければ走行できないという、大前提を忘れてしまっているわけだ。夏タイヤは雪上や氷上性能を想定していないタイヤ性能設計だから、少しの雪でもほとんどグリップできず走行はできない。
北海道のコレ○
・早めの交換が必要
・雪が降らなくても寒くなったらスタッドレスタイヤに
・氷上性能を求める
北海道のコレ×
・プラットフォームって何?
・夏にも履き続けて履きつぶす
・燃費が悪いのは仕方ない
北海道では「100%、4WDだから大丈夫という認識のユーザーはいませんね。場所柄、4WDユーザーが多いですが、冬にはスタッドレスタイヤ装着が常識として定着しています」と藤巻氏。「お勧めできないのは、3年履いたスタッドレスタイヤを夏にも履いて、そのまま履きつぶして冬に新しいスタッドレスタイヤを購入するというお客様です」
スタッドレスタイヤは雪上路面や氷上路面だけでなく、ドライ路面やウエット路面も想定した設計となっているが、夏タイヤと比べるとどうしてもハイドロプレーニング現象などが低い速度域でも起きてしまう可能性がある。その為、ウエットグリップは夏タイヤより低いと認識しなければならず、夏にスタッドレスタイヤを履くのはお勧めしないというわけだ。雪用だから雨でも大丈夫という認識は間違いなのだ。
「東京のお客様では、滅多に降らないからどんなタイヤでもいいとか、古いタイヤでもいいという方もいらっしゃいます」と山主氏が言えば「まだ、山があるから大丈夫、というお客様は多いです」と藤巻店長。北海道のユーザーでも誤解している人がいる。
通常、スタッドレスタイヤは毎年性能劣化が起きており、これは夏タイヤでも同じで「タイヤは生き物」という表現を耳にするように、経年劣化は避けられないものだ。そのため、毎年新品が理想だが現実には3~4年程度で買い替えることになる。
2016年にヨコハマタイヤはiceGUARD SUVG075というSUV用のスタッドレスタイヤを発売したが、約4年後も高レベルの氷上グリップ力が持続すると言うから、嬉しい材料だ。また、スタッドレスタイヤでの誤解が多いのがトレッドの山が残っているから大丈夫という誤解だ。溝が残っていても経年劣化を考慮する必要があるというわけだ。「正しい保管方法で保管していない古いスタッドレスタイヤに履き替える方もいらっしゃいますが、決してお勧めはできません」とは東京の山主氏。
スタッドレスタイヤにはプラットフォームとスリップサインの2種類があり、前者はスタッドレスタイヤとしての性能限界を示している。概ね5分山までに設定されている。新品時の50%以下になると冬タイヤとしては使用はできない。一方のスリップサインは法令で定められた値となり、こちらは残り溝1.6mmに設定されている。スタッドレスタイヤは夏タイヤと比較して溝が深いことが多い。だから5分山となっても、かなり溝は残っているのだ。ここが誤解を生む原因だが、スタッドレスタイヤではプラットフォームのチェックを忘れずにしたい。
また、偏摩耗はタイヤの寿命を縮める。そうなる前に定期的なローテーションをしたほうが良い。もし、偏摩耗していたら早めのタイヤ交換をすすめる。
ここで東京のユーザーの認識をまとめてみると、夏タイヤから冬タイヤへの移行期は11月に交換するのは早いほうで、12月になってからがもっとも多く、それも降雪エリアに行くユーザーの場合だという。お正月に帰省する、レジャーなどの理由だそうだ。
また、新品スタッドレスタイヤへの期待値も高いのが特徴だという。「夏の舗装路のように雪道を走れると考える方が多いです」条件によっては舗装路のようにグリップを感じさせる場面もあるが、雪や氷の上を走るのだから、急ハンドル、急ブレーキなどは避け慎重にドライブして欲しい。
一方北海道のユーザーの認識では「北海道では氷のグリップ、特にブラックアイスで止まるか?という性能を期待しますね」 0度~-10度の気温だと、昼間雪が溶けて夕方冷えてきて凍り始める。そうした状況での氷に効くのか?がポイントになるという。
「2013年に北海道限定のiceGUARD Evolution iG01というのが発売されました。これが非常に性能が良く、指名買いが多くなりました。その技術を深化させたのがiceGUARD 5 PLUSになって、今乗用車用で、ヨコハマのスタッドレスタイヤは人気が高いですね。それが、16年はSUV用としてジオランダーからアイスガードシリーズに変わってiceGUARD SUV G075が発売されました。アイスガードがSUV用を出し、これはジオランダーとは全く違いますね。自分のハイエースにも履きましたが、凄くいいですよ。ブラックアイスでも効いている感があります」と話す所長の永田氏。
「北海道では氷上性能が高くないとお客さんは購入しないです。ヨコハマタイヤは長年氷上性能に拘って開発していて、製品が変わるごとに氷上性能がアップしています。氷の性能にこれだけ拘っているのはヨコハマタイヤならではですよ」と藤巻店長が言う。
「札幌では10月末ころには雪が降らなくても気温が下がり、凍った路面ができ始めます。そのため10月にはスタッドレスタイヤへの履き替えが始まり、11月中旬に第二陣のピークが来ますね。夏タイヤへ戻すのは5月ゴールデンウイーク前後で、中山峠(道央と道南を結ぶ幹線道路:国道230号)を走るか、走らないかで決めている人が多いです」
札幌では夏タイヤ、冬タイヤの使用期間はそれぞれ約6か月間で、スタッドレスタイヤの装着率は100%というのが現状だ。一方「東京では2割程度の装着率で、東京の西側、奥多摩エリアでも3割程度しかスタッドレスタイヤを装着しない」と山主氏は言う。
雪道の安全、安心には正しい情報と認識が必要であり、過去の事例からの思い込みは危険だ。技術の進歩ということを念頭に置き、専門ショップに聞き、きちんとした購入を心がけたい。
取材協力店
タイヤガーデン東京 代沢店
東京都世田谷区代沢4-31-12
03-3412-2800
タイヤガーデン札幌厚別店
北海道札幌市厚別東5条4丁目10-30
011-898-2222
【PR編集部】 編集部総力取材!雪道シーズン到来、ヨコハマタイヤ特集
第1弾:ヨコハマタイヤ「ice GUARD SUV G075」試乗レポート 技術進化を如実に感じる新スタッドレスタイヤ
第2弾:ヨコハマタイヤ 最新SUV用スタッドレス「ice GUARD SUV G075」 そのグリップを生み出すテクノロジー
iceGUARD SUV G075 発売
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