前回までは、横浜ゴムのテストコースがある旭川でテストしたレポートと、なぜ、氷に効くのか、燃費がいいのか、永く効くのか?などをテクノロジーの視点から考察してきた。連載最後は、テストコースではなく通常の使い方の中から、アイスガード ファイブ プラスの実像をレポートしてみたい。<レポート:髙橋 明/Akira Takahashi>
アイスガード ファイブ プラスを装着するクルマは現行型F30 系BMW3シリーズのステーションワゴンでクリーンディーゼル搭載モデル「320dツーリング」。標準で装着するタイヤはランフラット・タイヤで、スタビリティの高いスポーツ志向のタイヤだ。サイズはフロント225/45-18、リヤは255/40-18で前後のサイズが異なるタイプが装着されている。
用意したアイスガード ファイブ プラスは当然、標準タイヤと同サイズのもで、使用するホイールも純正ホイールを使って履き替えをしてみた。こうすることで、燃費の差、ハンドリングフィールなどの違いはまさにタイヤの差になるので、わかりやすい結果となることが想像できる。
アイスガード ファイブ プラスへの履き替え後の使い方としては、日ごろの使い方を住まいのある横浜や会社がある東京で行ない、取材のアシとして箱根などに乗っていくといった使い方の中でインプレッションを取り、燃費計測を行なってみた。
11月中旬、東京ではまず雪は降らない時期だが、北海道では初雪の便りが届くころに装着。そのため、道路は舗装路のドライ、雨天での使用環境だ。
これまでの夏タイヤからの履き替えで、最初に気づいたのが乗り心地の良さだ。これはアイスガード ファイブ プラスだからだ!という違いではないかもしれないが、BMWの標準装着はランフラットタイプで、かつてのような硬さはなく、かなり進化はしているものの、こうして乗り比べしてみると、その違いは歴然だ。「やっぱりランフラット・タイヤは硬い」ということを再認識する。
ちなみに、ランフラット・タイヤから通常のタイヤに変えた場合、スペアタイヤやパンク修理キットを車載していないので、自分で購入して積んでおく必要がある。ちなみに、タカハシはAmazonで写真のパンク修理材を購入して車載している。
◆ワインディングと高速道でのスタビリティ
乗り心地の良くなった320dツーリングで、常日ごろ東名高速をよく走る。そして箱根のワインディングも走る。「スタッドレスは高速での走行安定性が悪く、フラフラする」などの印象を持つ人もいるだろう。だが、安心してください。高速道でのスタビリティは高く、直進安定性もBMWが持つ本来の姿を一切損なうことない。もちろん、ウエットでの接地感、グリップ感も高く安心感は高い。スタッドレスであるネガを感じることはないのだ。
レーンチェンジの際にもふらつくことは一切なく、サマータイヤとの違いは感じられないだろう。もちろん、テストモードとしてダブルレーンチェンジや急ハンドルでのレーンチェンジを行なえば、サマータイヤとの違いを感じることはある。だが、あくまでも通常走行をする上では、大きな差を感じることはないだろう。
ロードノイズでは、トレッドデザインがサマータイヤとは大きく異なるので、当然違う音がするが、音の大きさが気になるということにはならない。「音の種類が変わった」という印象だ。このあたりもすぐに慣れてしまう話なので、気にするまでもない。
ワインディングではどうだろうか。走る機会の多い御殿場周辺の乙女峠や芦ノ湖スカイライン、箱根ターンパイクなどを走行してみると、やはり、高速道の時と同様に大きな違いを感じることはないのだ。一般車の走行速度に合わせて走り、カーブの手前ではかなり速度を落とすといった一般的走行シーンにおいて、そうした車列の中での走行では、全くと言っていいほど夏タイヤとの違いはない。
テスト走行モードとして、速度をあげコーナーを攻めるような走り方をすると、その違いが出てくる。それはグリップ力やサイドウオールの剛性などでフィールが異なり、全体にソフトな方向になるとイメージしてもらえばいい。だが一般的なユーザーがどこまで感じられるかは、自身の持つセンサーとドライビングスキルのほうが強く影響する。ただ決して不安定な挙動になるとか、腰砕けで走りにくいなどの次元には至らない。
◆燃費
さて、こんな感じのテスト走行と一般走行を繰り返し、約1000㎞ほどの走行を済ませている。通勤にも利用し、取材にも利用する。多人数乗車で取材にも使った。その際の燃費は、いずれもサマータイヤを上回る数値になったのだ。通勤でのノーマルタイヤの時は平均して13.0km/L程度がスタッドレスでは13km/L台の後半になる。もしかすると、スタッドレスであることを無意識のうちに感じて、全体に操作が穏やかになっているのかもしれない。ちなみに、通勤は第3京浜を11㎞程度の距離と一般道を15㎞程度走るというのが通勤ルートだ。
高速道を使った箱根取材などでは、その差はもっと広がる。サマータイヤでは17km/L付近のデータが多いが、2回計測した御殿場-横浜のルートでは18.9km/Lと19.8km/Lというデータが出た。ここで1.0km/L近い違いがあるのは、燃費が悪かったほうは東名の集中工事に遭遇してしまったことが原因と思われる。
こうした舗装路での高速道、一般道、雨天などの状況でもいずれもスタッドレスのほうが燃費はいいという結果が出ている。サマータイヤも走行距離は5000㎞程度なので、著しく劣化したタイヤではないことを付け加えておく。
◆雪道ドライブ
いよいよ雪道の走行できる機会があり、志賀高原へドライブしてきた。12月上旬寒波の到来で一気に冬景色になっていた。ついでにこの時の燃費はBMW320dのオーナーになって最高燃費を記録。21.5km/Lのデータが取れた。
アイスガード ファイブ プラスのメインともいえるスノードライブだが、湯田中周辺はシャーベット状の道路で、気温も0℃前後。そして山道を上るにつれて気温も下がり、路面の雪のコンディションも圧雪路へと変化する。
この日は最低気温が‐4℃までだったが、雪に含まれる水分は気温による影響が大きく、寒くなればなるほど、雪が締まりスタッドレスのグリップも高まる。水分をいかに除去するか? がキーテクノロジーであることは前回までのレポートでご理解いただいているだろう。
-4℃の時、路面はシーズン初めということもあり、いかに志賀高原とはいえ、圧雪状態ではなく、降ったままの状態だった。それでも滑ることなく普通に走れる。シャーベット状よりやや硬い状況では、舗装路をサマータイヤで走るかのようにとまではいかないが、不安感なく走れる。さらに山道を登ると気温が-4℃程度まで下がる。雪は締まりグリップ力が高くなることを感じる。だから雪上であることをあまり意識しなくても、普通にグリップしているしブレーキも効く。
写真のように、圧雪されていない状態で10㎝程度の積雪でもFRのBMWは問題なく走行するのだ。そして雪上の走行ではロードノイズも減り、かなり快適な走りになる。過信は禁物だが、神経質になる必要はないだろう。安全マージンをしっかりとり、新型のアイスガード ファイブ プラスであれば、快適雪道ドライブが楽しめるとお伝えしよう。
最新スタッドレスタイヤ「アイスガード ファイブ プラス」のテクノロジー<その1>
最新スタッドレスタイヤ「アイスガード ファイブ プラス」のテクノロジー<その2>
アイスガード ファイブ プラス北海道・雪上・氷上テストレポート グリップの手応えを感じる新スタッドレスタイヤ