寒冷地帯の人のスタッドレスタイヤ選び

0度をまたぐ気温変化が、最も過酷な路面の要因。

タイヤメーカーの工夫は「吸い込む orひっかく」

北海道や東北などの寒冷地域では早ければ11月に降雪が始まり、厳冬期に場所によっては積雪が1mを超えることもある。気温が-10℃以下になることも珍しくない。もっとも、主要道路は除雪されているし、地球温暖化の影響で年間を通じての降雪量は減ってきている。また、北海道でも道南と道東では相当に降雪や積雪の状態が異なり、同じように東北地方でも太平洋沿岸、都市部、山間部、日本海側ではまったく様相が異なる。

この地域の大きな特徴として、都市部ではロードヒーティング、幹線道路は融雪剤などで積雪を溶かす対策をしているので、主要な道路は案外走りやすいと思うことさえある。その一方で地方の道路では圧雪+深いわだち路など走りにくい状態もある。

しかし特に大きな問題となるのが都市部や幹線道路で、通行するクルマで雪が圧縮されて氷のようになった圧雪路、昼間に一端溶けた圧雪や道路わきの積雪が夜間に凍結するアイスバーン、特定の場所で夜間だけ凍結するブラックバーンなどだ。これらはいずれも氷上に水が薄く浮かんだ状態で、摩擦係数=タイヤのグリップがもっと低くなる条件となる。逆に完全に凍結した氷上ではタイヤのグリップ力は高くなるので、走りやすい。

アイスバーンは気温が大幅に下がることで溶けた雪が凍結するものだが、昼間、夜間でも気温が0度より高く、少し溶け始めた状態、つまり薄い水膜が氷の表面に浮かんでいる状態が最も滑りやすい。そこに新たな降雪があると走行中のクルマからは通常の雪道にしか見えないので大変危険である。

ミラーバーンと呼ばれる、都市部の交差点などで見られる路面もアイスバーンの一種だが、クルマの発進・停止で圧雪が鏡面のように磨かれたところに、信号待ちの間にクルマのエンジンが発する熱で雪面が融解し、これがふたたび凍るというサイクルを繰り返すことで極めて滑りやすくなっている。

つまり積雪地域で、昼間は気温が0度以上になり、夜間に0度以下になって融解と凍結を繰り返すという状況が、北海道の道央、道南から東北地方にかけての都市部での特徴で、これは世界的に見ても特殊で最も厳しい道路条件とされている。

このような地域の走りを支えるスタッドレスタイヤは、氷点下でも柔軟性を失わないゴムを持ち、サイプ(ゴムの切り込み溝)で吸水とサイプのエッジによる氷面グリップ効果を持ち、アイスバーンの表面の水膜を吸水することで凍結路のグリップを得る機能を持つアイスバーン重視タイプがふさわしい。

技術的な特徴では、ブリヂストンが発泡ゴム、ヨコハマが吸水バルーン、ミシュランは吸水マイクロポンプで氷上の水の層を効果的に取り除くことを強調しているのに対して、トーヨーは鬼クルミ殻、ダンロップとグッドイヤーはファイバー系繊維、ファルケンは卵の殻から生まれたマイクロエッグシェルという素材をゴムに混入することで氷上のひっかき効果と、多数のサイプ以外に混入素材が脱落した後の空洞部で吸水する特徴を備えている。

このような日本型のスタッドレスタイヤに対して、海外メーカーのスタッドレスタイヤは路面状況が異なるため、適合しなかったが、近年では北海道・札幌近郊で研究開発した日本専用スタッドレスを投入しており、きわめて評価の高いタイヤも存在している。

 

ブリジストン
ブリザック・レボGZ

横浜ゴム
アイスガードiG30(トリプル プラス)

住友ゴム工業
ダンロップ DSX-2
ファルケン エスピアEPZ

東洋ゴム工業
ガリットG5

日本ミシュランタイヤ
X-ICE XI2(エックスアイス エックスアイツー)

ピレリジャパン
ウインター・コレクション

日本グッドイヤー
アイスナビZEA II(ゼア ツー)

ハンコックタイヤジャパン
ウインターアイセプトIZ(アイジー)

クムホタイヤジャパン
アイスキングKW21(ケイダブル ニジュウイチ)

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