【ジャガー】Specialist海外試乗記 ジャガーXJR 優雅でありつつダイナミックに走るジャガーの“R”  レポート:佐藤久実

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国内導入に先駆けて行なわれていた国際試乗会。シアトルでXJRのすべてを堪能してきた

2013年10月に日本への導入も発表されたジャガーXJR(詳細は既報の記事参照)。ジャガーXJシリーズのフラッグシップモデルであるこのXJRの国際プレス試乗会が、8月にアメリカ・シアトルで実施されていた。そのインプレッションを、佐藤久実氏のレポートでお届けしよう。

ジャガー”R”ブランドの歴史は25年前に遡る。1980年代、トム・ウォーキンショー・レーシングのハンドリングにより、ジャガーはツーリングカーやプロトタイプスポーツカーレースにおいて活躍していた。1988年、90年にはル・マン24時間レースで優勝するなど、数々の輝かしい実績を誇る。

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この、トム・ウォーキンショー・レーシングとのジョイントベンチャーで始まったのが”R”ブランドであり、1988年にデビューしたジャガーRが最初のモデルとなる。つまり、多分にレーシングな血を引くブランドと言えるのだ。さて、日本では、現在XFとXKに”R”モデルがラインアップされている。パワフルながらも尖り過ぎないチューニングが魅力的だ。ラグジュアリーサルーンであり、ジャガーのハイエンドモデルとなるXJRは果たしてどのような乗り味を披露してくれるだろうか。

8月の暑い盛りでもシアトルは湿度が少なく、朝晩は半袖だと肌寒いと感じるほどで、快適な気候でのドライブとなった。ホテルのエントランス前に居並ぶXJR。ボンネットにルーバーを備え、クルマに詳しい人ならひと目見て普通のXJとは異なることを認識できるだろう。

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Rモデルだからといってこれみよがしな主張はない。あくまでエレガントな雰囲気を持つ

しかしながら、エクステリアに、これみよがしなところはない。リヤスポイラーや左右4本出しエギゾースト、そして赤いブレーキキャリパーなど、どれも秘めたるパフォーマンスを予感させる”機能的”な変更点と言える。フロントグリルの”R”バッジが控えめながら誇らしげに備えられていた。

■サーキットでも優雅な挙動に変化なし

V8型5.5Lスーパーチャージドエンジンは、最高出力550psにまでパワーアップが図られたとなれば、加速や速さはいかほどのものか、と興味を抱く。が、いざ走り始めると、快適性の高さに意識が向いた。適度に締まった乗り味は間違いなくスポーツサルーンでありながら、ジャガーのトップエンド・ラグジュアリーサルーンとしての優雅な快適さも損なわれていない。

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スポーツモデルながら突き上げ感などもなく優雅な乗り心地はキープされている

試乗コースは荒れた路面が多かったのだが、アンジュレーションもバネ下のみで受け止め、ボディはフラットなままだ。シェイクされたり、お尻に尖った突き上げがくることもなく、見事なまでのいなしを見せつけたのだ。

スタンダードモデルのXJの乗り味を知っているので、足回りが強化されていることは想像に難くないが、一般道を走る限り、これがXJだと言われても納得できるだろう。さらに、一般道試乗においては、パワーというよりゆとりあるトルクが印象的だった。加速時など意図的にアクセルペダルを踏み込まない限り、タコメーターの針は常に1500rpm以下を維持しているのだ。もちろん、8速ATとのコンビネーションが成し得る絶妙の技だ。

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高速道路と一般道の試乗を経て到着した先は、「リッジ・モータースポーツ・パーク」というサーキットだった。このサーキットは、アップダウンが多くトリッキーで、コーナーの多くはブラインドとなっているため、難しい。しかも、ちょうど試乗開始直前に雨が降ってきたため、さらにコンディションまでも難しくなった。サルーンとはいえ、”R”が冠されたモデルなので、やはり最初は様子を見ながらの走行となった。

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それでも一般道同様、サーキットでの限界付近でも、ジェントルな挙動が豹変することはなかった。ウェット路面においてもしっかりした手応えがあり、高い接地感を得ることができ安心感が高い。そしてジャガーらしい、懐深いロール感もあるのだ。スプリングレートは30%高められ、それに伴い可変減衰力のアダプティブ・ダイナミクスもR用にリセッティングされている。そのため、ロールスピードも適度でコーナリング中も踏ん張り感がある。一般道の常用域では快適性が印象的だったが、サーキットでのスポーツドライビングの領域で走ると、足元の剛性が高められていることが実感できた。

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ウェットのサーキット走行でもしっかりした手応えのステリングで安心感がある

■リニアに反応するステアリング
ステアリングレスポンスも、スタンダードのXJに対して10%高められているという。この数値がいかにもラグジュアリーサルーンらしいところだ。つまり、通常に走っていると、これみよがしな舵の効き方はしないが、サーキットで走ると、ステアリングを切っただけ曲がって行くのだ。舵角そのものはスポーツカーほど少なくはないが、リニアに反応していくため、わかりやすい。サーキットにおいても乗りやすさが印象的なのだが、ハイパワー&トルクだからラフにアクセル操作をすれば、それなりに唐突な挙動も出る。油断は禁物だ。

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ウインドトンネル(風洞実験)を使ってのエアロダイナミクスの開発も行なわれ、リフトを抑え、エンジンルームの通気の向上などにより冷却性能が高められている。そもそも、スポーツカーのように限界域で走ることはないだろうから、路面に吸い付けられるという印象よりは、高速巡行時の安定性や燃費などでその性能を実感できるだろう。

1日半に渡り、かなりのロングドライブを敢行したが、一般道から高速道路、そしてサーキットに至るまで、常にラグジュアリーサルーンとしての優雅さとスポーツサルーンとしてのダイナミクスが見事に融合した走り味を堪能しつつ、安心快適に走ることができた。

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■ジャガーXJR価格

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