マニアック評価vol114
軽量オールアルミボディに超強力V8ツインターボを搭載
近年SLS AMGによってその実力を見せつけたAMG。現在はメルセデスベンツの傘下にあって「社内であって社内でない」ような存在だけに、真価が問われるのはしかたのないことかもしれない。が、AMGはそれをクリアした。しかも新たなエンジンの投入で、いま現在快進撃を続けている。
新型SL63AMGはまさにそんな中に生まれた。SLS AMGに続くオールアルミニウムボディシェルにご自慢のM157型V8ユニットを搭載する。もちろん、このアルミボディシェルはAMG単独でなくメルセデスベンツとの共同製作。一部フロントピラーに高張力スチールを、タンク後方のカバーにマグネシウムを使うが、それ以外は高い加工技術（キャビティ内を減圧する真空ダイカスト法など）によって成形されたアルミで構成される。今年のデトロイトショーでの初見は、とにかくお金のかかったものだと認識した。
AMGならではのボディシェルが軽量で高剛性のカラダを築いた。運動性能だけでなく低燃費にも役立つのはいわずもがなだ。ついでにいうと、SL63AMGのクルマのトランクリッドの内側支持部にはカーボンファイバーが使われる。これを外側のプラスチックシェルと接着させることで、軽量化を図っている。具体的な数字は従来比で−5kg。ボディシェルで−110kg、その他で−20kgだからすべて合わせて−125kgとなる。
SL63AMGのエンジンコンパートメントに納められているのが5.5L・V8＋ツインターボユニット。最高出力はスタンダードで537ps、AMGパフォーマンスパッケージで564psを発揮する。0-100km/h加速は前者が4.3秒、後者が4.2秒。最高速は自主規制によりスタンダードは250km/h、AMGパフォーマンスパッケージは300km/hでリミッターが作動するというから、いったいどんだけ出るんだと突っ込みたくなる。
SL63AMGで見逃してはならないのが省燃費。どちらも9.9L/100kmと従来型と比べ30％の大幅削減に成功している。日本式にいうなら1Lあたり約10.1kmといったところ。このクラスユーザーにはまさに夢のような数値だ。
V8ツインターボエンジンは最大トルクのすごさも見逃せない。それぞれ800Nm、900Nmというとてつもないボリュームなのだが、それを2000rpm台から発生させる。SL63AMGの力強い走りとともに省燃費にも貢献しているのはご想像のとおり。低回転型ターボのセッティングは実にお見事だ。
省燃費で思い出したが、SL63AMGにはECOスタートストップ機構が付いているのもお知らせしておこう。AMGスピードシフトMCT7速のCモードと連動して作動するのだが、始動時の振動や音を含め、クオリティの高さは一級品である。
クルマを小さく感じさせる卓越したハンドリング
ではではSL63AMGの走りはどうか。試乗したAMGパフォーマンスパッケージはある意味メルセデスらしい仕上がりだった。低速から高速域までドライバーを不安にすることなく安定した挙動で加速していく。
ステアリングセンターは多少重めでそこからスッと切っていく感覚はまさにメルセデス。ただ、そこから上の速度域ではまた違った顔を見せる。ステアリングはよりダイレクトとなり、軽量ボディがそれに追従する。サスペンションのバネ下の軽さも相まってコーナーリングはじつに軽快だ。いうなればSLというクラスを走らせているのではなく、SLKくらいのコンパクトで軽量な走り。スポーツカー系にとってボディを小さく感じさせるのは最高の仕上がりといっていいだろう。
AMGパフォーマンスパッケージは排気サウンドも最高。SLS AMGほどのバックファイアはないが、ブリッピングの気持ちよさはピカイチ。ついついパドル操作も忙しくなるってもんだ。速度域が上がりよりスポーティな走りをすればするほどAMG色が顔を出してくる。それがAMGの特異性。クルマ好きにはたまらない付加価値であることはいうまでもあるまい。
