【フィスカー】アメリカンEV「フィスカー カルマ」の本気度 レポート:ピーター・ライオン

マニアック評価vol113
美しいフォルムのレンジエクステンダー付きEV

フィスカー・カルマの画像
フィスカー・カルマに初対面したピーター・ライオン

ズバリ言おう。GM、フォード、クライスラーなどの名前を挙げても、好奇心と関心を持つ日本人は少ないだろう。でも、アメリカの最も新しい自動車会社「フィスカー」から生まれる新時代のPHV(プラグイン・ハイブリッド・ビークル)には、日本人でも心を奪われるものがあると思う。フィスカーの美しいボディラインを見た瞬間に、好奇心がじわじわと沸き出してくるはず。実際乗ってみると「えっ、ほんまかいな、速いし、コーナリング性能は高い!これがアメリカ車?」と言わせるほど、ハンドリングが優れている。

フィスカー・カルマの走り画像

フィスカー社の第1弾量産モデル「カルマ」を確かめるため、フィスカー本社が位置されるロサンゼルスまで行ってきた。そこで見たものは、素晴らしいとしか言いようがない。メルセデス級の高級感、BMW並みのハンドリング、マセラティに迫るルックス、そしてプリウスに負けない燃費、それが、フィスカー・カルマだった。

現在、電気自動車(EV)というセグメントの中には、ピュアなEVとレンジ・エクステンダーに分かれている。ピュアなEVは80km〜160kmまでの距離をバッテリーの力だけで走る。三菱i-MiEVや日産リーフなどがある。レンジ・エクステンダーは、バッテリー走行+バッテリーを充電するガソリンエンジンを搭載しているシボレー・ボルトなどがある。フィスカー・カルマは後者のレンジ・エクステンダー付きのEVだ。

フィスカー・カルマの画像フィスカー・カルマの画像

スタイリングは、なんとアストンマーチンの元チーフ・デザイナー!

ロスで見たカルマは、「アメリカ車でありながら、マセラティ並みの美しさ」で存在感抜群。というのも、同社創立者のヘンリック・フィスカー氏は、名車DB9とV8ヴァンテージなどを手がけた元アストン・マーチンのチーフ・デザイナーだった人物なのだ。07年にドイツ人のバーニー・コーラー氏と組んでフィスカー・オートモーティブ社をカリフォルニアで設立。彼らの開発テーマは「環境に優しい高級車」である。

そのスペックには驚かされた。4人乗り4ドアセダンのカルマは403psを発生し、ブガッティ・ヴェイロンにも迫る最大トルクは何と1300Nmを発揮。ドイツのTUV(自動車等の安全や環境性と評価する公式団体)が調べた結果、カルマのCO2排出量は51g/kmとプリウスより低く、燃費でも48km/Lとプリウスをかなり上回っている。しかも、電気モードだけで80kmも走行できる!

パワートレーンは、アメリカ軍用に開発されてきたステルス自動車からアイディアを得ている。後輪には300kWの電気モーター2基とリチウムイオン・バッテリーパックを搭載する。 室内のトリムまでエコなフィスカー。4人の大人が楽に座れるキャビンは、西海岸の山火事にあった木材と、ミシガン湖の底から回収した木材、それに本革の再利用もしている。

フィスカー・カルマの画像フィスカー・カルマの画像

これでガス欠ならぬ「電欠」の不安が消える

フィスカー・カルマは充電が必要になると、255psを発揮するGM製の4気筒2.0Lターボ・ガソリン・エンジンを駆動でなく「発電」に使う。そこがGMボルトと一番違うところだ。ボルトは高負荷時にはエンジンの動力も駆動力として使用する。カルマはエンジンによる充電のみで400km、つまり、トータルで480kmまで走行を可能にしたのだ。つまり、大震災の影響でみんなが心配している停電になっても、自ら充電できるっていうことだ。英語で言うと「レンジ・アングザエティ」、つまり航行距離への不安が解消されるわけだ。

フィスカー・カルマのエンジン画像
発電用に搭載されるGM製4気筒2.0Lターボ・ガソリン・エンジン(255ps)

カルマは、セレクターからDを選択すると、デフォルトで自動的にEVステルス・モードになる。この電気モードだけでの加速は爆発的というわけではないけど、充分以上。2400kgの車重をもつカルマの0−100km/h加速は7.9秒で、最高速度はステルス・モードで155km/hを記録。

「スポーツ」を選択すれば、エンジンの作動でモーターの力が約20%増すと同時に、バッテリーを充電させることもできる。アクセルをめいっぱい踏み込むと、「ブオー」とエンジンノイズは微かにキャビンに響きながら、加速性は瞬間的。エンジン作動で充電されるスポーツモードでは、0−100km/hは 6.0秒、最高速度は200km/hに変わる。カルマでなによりも特筆すべきなのは、スロットル・レスポンスの速さだ。たとえば、60km/hで誰かを追い越そうとする。普通のガソリン車と違って、スロットルをめいっぱい踏み込んだ時、カルマには加速のタイム・ラグが全くない! 一気に加速することができるから気持ちがいい。

ハンドリングはスポーツカーそのもの!

ロング&ロー&ワイドボディ、ダブル・ウィシュボーンのサスと自動車高調整式リヤダンパー、それに前後荷重配分が47:53の前後バランスをもつカルマ。コーナーではフラットな姿勢を保ち、フルブレーキングでもノーズダイブをほとんどしない。ステアリングの手応えも良く、ターンインはシャープで正確だ。ハンドリングはとにかくスポーティで楽しい。6ポットのブレンボ製ブレーキがよく効いて、耐フェードも優れている。パナメーラSハイブリッドといい勝負だね。

フィスカー・カルマとピーター・ライオン画像

フィスカー・カルマの走り画像

カルマは、当分フィンランドのポルシェ工場で生産される。つまり製造品質の信頼度は高い。基本価格は$96,000(約800万円)だというのに、すでに3000台以上の受注がある。しかし残念ながら、カルマは日本には上陸しない。

一方、4月のニューヨーク・モーターショーで発表されたフィスカーの第2弾、アトランティックは、2014年の夏までには、日本での販売開始が予定されている。ほぼ同様のパワートレーンを採用するアトランティックは、カルマより一回り小さく、アウディA5ほどの大きさになるだろう。カルマと違うことは、外観は更に格好よくなったことと、価格は半分ぐらいの500万円強になること。またエンジンはGM製ではなく、BMW製になり、4WDのオプションもオファーされることがかなり期待されている。500万円台の美しい高級EV車は今までの環境車の概念を覆すに違いない。

文:ピーターライオン

フィスカー公式サイト


The Mortor Weekly

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