レクサスRC Fのマイナーチェンジのニュースが2019年飛び込んできたが、一足先にカリフォルニア・パームスプリングスで木下隆之氏が試乗してきたので、その様子を伝えてもらおう。
大排気量NA+FRというパッケージを武器に、熱い走りのクルマとして存在感を誇ってきたレクサスRC Fが、強烈なカンフル剤を打ち込んできた。
こだわりの大排気量NAエンジン
ダウンサイジングという大義名分をかざし、猫も杓子も排気量を下げつつ、出力の不足分をターボチャージャーで補うのが正当な手法とされるなかで、走りの醍醐味を細部にまで突き詰めれば、トルクが十分にあり、レスポンスに優れたNAエンジンに軍配があがることは明白である。ダウンサイジング優勢の風潮に対するアンチテーゼにも思える。大排気量NA派の僕のハートをビンビンに刺激して止まないのである。
それを理解するレクサスは、単なるフェイスリフトでお茶を濁すのではなく、徹底して基本性能を高めて送り込んできた。
フロントに搭載されるパワーユニットは、5.0Lもの大排気量を誇るV型8気筒エンジンである。8速ATと組み合わされる。
基本パッケージにはこれまでと同様ではあるものの、エンジン細部には手が入った。インテークの細工や、ムービングパーツの軽量化が進んだことで、レスポンスが研ぎ澄まされた。最大出力は474ps。度重なるパワーウオーズによって500馬力程度ではもはや体は驚かなくなっている。だが、いまだに回転計の針が7200rpmオーバーまで弾ける感覚には痺れるし、そもそも刃物のように切れ味鋭いレスポンスにワクワクしてしまうのだ。僕は体内の興奮が生き生きと踊り始めたことを自覚した。RC Fは、現代では数少ない大排気量NAの魅力に拘ったのである。
切れ味は鋭い
興奮の源は、エンジンだけでなくシャシーにも及んでいた。今回新たに加わった「パフォーマンスパッケージ」がその象徴のよう。いわばサーキット専用モデルのそれは、カーボンセラミックブレーキやチタンマフラー、カーボンボンネット・・・等の軽量マテリアルを贅沢に採用することで、徹底したダイエットに成功しているのだ。標準モデルに比較して80kgも軽くなっているというから、半端な数字ではない。
モーター搭載という重量増を理由に、リヤウイングは電動式ではなく固定式になった。サスペンションの取り付け部や、アーム類をアルミにするなど軽量化に妥協の形跡はない。なぜ今までやってこなかった、という無粋なツッコミを口にするのはやめよう。ともかく80kgという贅肉を削ぎ落とし、体幹を鍛え直してデビューしてくれたことを素直に喜ぼうと思う。
実際にサーキットを走らせると、興奮は天に昇るかのようになった、V型8気筒搭載というフロントヘビー感覚は薄らいでいる。タイヤが悲鳴をあげるような限界コーナリングでさえ、ステアリングを切り込むことでノーズをエイペックスに引き戻すことも容易になった。切れ味は鋭い。
さらにそこで、アクセルペダルを踏み込むと別の世界が開ける。右足の動きに忠実に、テールがピクンピクンと反応する。ハンドル舵角は一定でも、アクセル次第で奇跡をコントロールすることができるのだ。
デビューから5年後のいま誕生したレクサスRC Fパフォーマンスパッケージは、RC Fの延命措置などではなく、大排気量NA+FR駆動の魅力を感度の鈍った我々に突きつけるとともに、新しい扉を開くモデルのようである。<文:木下隆之/Takayuki Kinoshita>