【フォルクスワーゲン】SPECIALIST 海外試乗記 ゴルフ・カブリオレ by 佐藤久実

マニアック評価vol47

カブリオレ・ブランドの始まり

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ゴルフ・カブリオレには知られざる、興味深い歴史がある。初代ゴルフ・カブリオレは、フォルクスワーゲンと名だたるコーチビルダー(車体架装会社)であったカルマン社が共同で開発したもので、そのプロトタイプは、オスナブリュックに本拠があったヴィルヘルム・カルマン・ジュニア氏によって造られたのだ。現在、その工場は、フォルクスワーゲンの工場となっている。そしてもちろん、歴代ゴルフ・カブリオレ同様、新型もオスナブリュックで生産されている。

もともとカルマン社は馬車を造っており、後には自動車の高品質なボディメーカーを造るようになる。1920年代にはドイツの主要な自動車メーカーの、高級モデルはほとんどカルマン社がボディ製造を受け持ったという歴史もあるのだ。

初代ゴルフが華々しくデビューしたのは1974年。その直後から両社によるカブリオレの開発が始まった。このプロトタイプはトップを畳んだ時、短いボディのリヤ部分にフラットに収まる設計になっていた。しかし、プロトタイプにしか許されない凝った構造であり、コストとの兼ね合いで残念ながら量産モデルに採用されることはなかった。

さらに、プロトタイプにはロールバーも装備されていなかったが、後に登場した量産モデルには、ロールバーが装備されていた。開発においては、ロールバーの装備されたものと、されていないものが同時進行でテストされていたが、当時、フォルクスワーゲンは安全を大きなテーマとしており、後に「安全性の父」といわれたエルンスト・フィアラ氏の主張により、ロールバー付きの仕様が世に送り出されることとなったのだ。

1976年6月、最初の生産モデルがオスナブリュックの工場ラインを離れた。その後、ゴルフ1カブリオレは、世界的にヒットし、合計38万台以上が生産された。

初代の志を受け継ぎ洗練のきわみを実現した4代目カブリオレ

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さて、40年弱の時を経て、2011年、ゴルフ6をベースとした4代目となるゴルフ・カブリオレが登場した。それはトップがきれいにリヤシート後ろに収納され、固定式のロールバーが存在しない。つまり、ゴルフ1カブリオレのプロトタイプで理想とされながらコストや安全性の観点から量産化され得なかったことが実現されており、初代からの歴史や理想が脈々と受け継がれてきたことがわかる。

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そして、カルマン社との共同開発からスタートした歴史をもつにふさわしく、新型においてもそのソフトトップの技術に驚かされた。一見してフロントウィンドウにハッチバックよりきつい傾斜が与えられていることがわかる。この理由のひとつには、スポーティなスタイリングとする狙いがあるが、もうひとつ、ルーフ長を短くすることにより、リヤシート後ろに幌を収納するためでもある。

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トップ収納時は、ルーフ前部がカバーの役割も果たすため、わざわざカバーをする煩わしさもなく、また、トランクを開閉することなくトップの開閉が行えるため、オープン9秒、クローズ11秒と、短時間で開閉できるメリットが生み出されている。

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さらに驚かされたのは走行時の機能性の高さだ。オープンカーのトップを開けて気持ち良く走れるのは、ある意味当たり前ともいえる。しかし、新型ゴルフ・カブリオレの本領発揮はクローズド時。その静粛性の高さはスピード感覚が麻痺するほどのものだった。

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カブリオレモデルだと、トップを閉めて走らざるを得ない状況も結構ある。が、ゴルフ・カブリオレは、オールウェザー、開けても閉めても快適に走れるオールラウンダーといえる。さらに、走行時にソフトトップが膨らまないため空力性能にも優れ、それが燃費にも反映されるという、時代に即した環境性能にも一役買っている。

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もうひとつのトピックである固定ロールバーをもたない方式はフォルクスワーゲンではすでにイオスで採用されているが、さらなる軽量・コンパクト化が図られ、今回、ゴルフでの採用となった。

クルマのセンサーによって、万一ロールオーバーの危険性を察知した際には、千分の数秒という単位でロールバーが展開するロールオーバープロテクション・システムが採用されているのだ。さらに、サイドエアバッグや運転席のニーエアバッグ、ESPなどアクティブ/パッシブセーフティデバイスが標準装備され、すっきりしたルックスながら高い安全性に守られつつオープンエアモータリングを楽しめる。

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走行性能も満足度の高いものだった。日本仕様に搭載されるパワートレーンは、1.4Lツインチャージーエンジン+7速DSGの組み合わせ(スーパーチャージャー+ターボ)。すでに他モデルで定評あるコンビだが、カブリオレはハッチバックに比べて183Kgもの重量増となっている。しかし、加速時に重さを感じさせるシーンはなく、むしろハッチバックよりもしっとりしなやかな乗り味に仕上げられていることに、チューニングの妙を覚えた。

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絶好のオープン日和の中、フランス・ニースからサントロペにかけて、風光明媚なコートダジュールで試乗を満喫することができた。革新的技術と伝統へのこだわりが融合された新型ゴルフ・カブリオレは、日本の環境でも、年間を通して良きパートナーとなってくれるだろう。

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COTY
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