ボルボS60/V60ポールスター  控えめな見た目とターボ&スーチャーの大人パフォーマンスモデル<レポート:佐藤久実/Kumi Sato>

マニアック評価vol469

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クローズドコースを存分に走ったV60ポールスター。テストはモータージャーナリスト佐藤久実さん

「ボルボS60/V60ポールスター」の2017年モデルが発売された。ポールスターは、長年に渡るボルボのビジネスパートナーであり、レース活動を行ってきたが、ボルボはハイパフォーマンスカーセグメントの強化を図るため、2015年にポールスターのパフォーマンス部門を子会社化した。一方、レース部門は「ポールスター・シアン・レーシング」として活動を続けており、もちろん、こちらもボルボとのパートナーシップは続いている。

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「普段使いもできちゃうハイパフォーマンスカーだ」という佐藤久実さん

2017年モデルの大きな変更点は、搭載するエンジンがこれまでの直列5気筒・3.0Lターボから、直列4気筒・2.0Lターボ+スーパーチャージャーになったことだ。ボルボは、今後搭載するエンジンを4気筒のみにするという方針のもと、独自開発のDrive-Eパワートレーンを作り、順次、ラインアップへの搭載を展開している。

今回、S60/V60ポールスターに搭載されたエンジンも、S60/V60に搭載されるDrive-Eをベースにチューンナップされ、スーパーチャージャーを追加したハイパワー版だ。

ポールスターレーシングは、「VOLVO C30 S2000」というモデルで2011年、WTCCにスポット参戦しているが、実はこの時に搭載されていたエンジンが、Drive-Eのプロトタイプ。そして、2016年からWTCCにフル参戦しているが、他メーカーがレースのために専用開発したエンジンを開発、搭載する中、Drive-Eベースのチューニングカーエンジンで戦っている。つまり、レースで得られたノウハウが即、市販エンジンにフィードバックできるのだ。

■拍子抜けするほどマイルド。これ褒め言葉です

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見た目はいたって大人しいステーションワゴンにしか見えないが、走ると凄い

今回ポールスターに搭載されるエンジンは、コンロッドやカムシャフト、ターボチャージャーから吸気システムに至るまで、専用パーツによりエアフローを良くし、パワーアップが図られた。

さて、試乗車のV60ポールスターは、鮮やかなブルーのボディカラーこそやや派手めではあるが、エクステリアに過剰な演出はない。そこがまたボルボらしくて好感が持てる。一見、普通だけれど、走ると速い! というギャップ、控えめなところがボルボファンの心をくすぐる。

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リヤビューもきれいなデザインのステーションワゴンという印象だが、走り出すと誰も追いつけない

インテリアも然り。ポールスター専用のヌバックを使ったシートやステアリング、カーボンファイバーのパネルなど、シックで上質ではあるが、レーシングな雰囲気というよりは落ち着いた大人のクルマ、といった雰囲気。

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ブルーのステッチを効果的に使い、大人なプレミアム感もありつつスポーティさも感じさせる

レーシングチーム直系のコンプリートカーとなると、さぞ尖った性格と思いきや、走りも拍子抜けするほどマイルドだ。これ、褒め言葉である。ただし、技術は惜しげなく投入されている。技術があるからこそのチューニング、といった方が正しいか。

速さは申し分ない。アクセルを踏み込んでいくと、スーパーチャージャーもターボも、境目なく、淀みなく、トルクの谷もなく一気に加速していく。その実力は367ps/470Nmというハイスペックだ。2.0Lターボの市販エンジンで、これほどまでにトルク/パワーを出せるものかと驚かされた。

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2.0Lの4気筒ターボ+スーパーチャージャーで367ps/470Nmもの出力を持つボルボオリジナル・エンジン

今回から、ドライブモードにはスポーツモードに加え、スポーツプラスが加わった。スイッチではなく、シフトレバーを倒したりする一連の儀式が必要なので、走行中にこのモードへの切り替えはできないが、ワインディングなど、気持ち良くスポーツドライビングを味わえそうなシーンでは、あらかじめ選択しておくと良い。シフトスピードがさらに速まり、高回転をキープするプログラムとなる。そして、エギゾーストサウンドも変わる。

クローズドコースでの試乗だったため、躊躇なくアクセルを開けられ、スピードメーターの針がどんどん上がっていく。しかし、スピードが上がるほどに、速さ以上にサスペションチューニングの絶妙さに恐れ入った。

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アンジュレーションがあり、かなり荒れた路面もあるのだが、どんな外乱でも常に路面をしっかりと捉える。ドイツ車のようなフラットライドの乗り味とは異なる。ボディはそれなりに動くのだが、衝撃を見事なまでに吸収し、快適な乗り心地が確保される。これは、オーリンズの特許であるDFVを備えるダンパーの効果も大きい。長年、レースシーンでのパートナーであり、これまたレース譲りの技術が落とし込まれているのだ。また、ポールスターのシートは、フィット感やホールド性のみならず、衝撃吸収の面でも一役買っている印象だ。

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ボディカラーは白、黒があるが、限定車だけに早い者勝ちだ

ボディの上下方向の動きの良さだけでなく、コーナリング時の旋回性も良く、横Gの高さも凄まじい。足元にはミシュランのハイパフォーマンスタイヤである「ミシュラン パイロットスーパースポーツ」を装着する。このパワーを受け止め、旋回スピードに耐えるには絶好のパートナーである。

プレミアム感があり、スポーティに走れる。それでいて、日常的に使える安心感や快適性をも兼ね備える。ドイツブランドのハイパフォーマンスモデルとは落とし所もキャラクターもまったく異なる、個性的かつ魅力的なクルマである。

■価格

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