【ボルボ】ボルボV40 T5 R-DESIGN試乗記 スポーツモデルの追加で、さらにセレクトに悩まされる レポート:佐藤久実

マニアック評価vol191

V40 T5 R-DESIGNは2.0L直列5気筒エンジンを搭載した、スポーティモデル

ボルボV40は大激戦のCセグメントにガチンコ勝負を挑んだモデルで、ボルボの本気が感じらられるモデルだ。というのも、従来はグローバルな視点で見ると、ボディサイズや価格帯などが、微妙に各セグメントからずれていたが、このV40はフォルクスワーゲン・ゴルフや新型メルセデス・ベンツ Aクラスといった強豪と真っ向勝負となるからだ。

メタルフレームフロントグリルなどR-DESIGN専用パーツを数多く装着

しかも、従来あったセダンのS40とワゴンのV50を統合するカタチとなった5ドアハッチバックのV40。さらにいえば、下に位置するコンパクトハッチバックのC30も吸収することとなる。二兎どころか三兔を追うこととなるわけだが、中途半端な妥協は見られない。

まず、スタイリングを従来のボルボにはないくらい、スポーティに振っている。大胆さという点ではC30も負けていなかったが、台数を求めるセグメントでこれほどまでにドラスティックにイメージの変貌を遂げるのはなかなか勇気のいることだ。しかも、それでいてひと目でボルボとわかるからすごい。サイドのキャラクターラインが跳ね上がっているのは1960年代前半に販売されていたボルボP1800をオマージュしたという。新しさの中に伝統的なディテールを織り込むというのは良くある手法だが、違和感なく融合させているところにデザインの妙を感じる。

デュアルスポーツテールパイプとディフューザーがスポーツイメージをより高める

ベースモデルのV40に対して追加された上級モデル「ボルボV40 T5 R-DESIGN」は、フロントグリルやドアミラー、リヤディフューザーなどエクステリアのディテールをシルクメタル仕上げとしているのが特徴だ。もともとスポーティなV40だが、よりアグレッシブさが増している。R-DESIGN専用のソリッドカラー”レーベルブルー”をはじめ8色のボディカラーが用意されている。

独特のデザインで個性的かつ視認性に優れるメーター

インテリアも、”スカンジナビアン・デザイン”を感じさせるシンプル&クリーンな雰囲気。R-DESIGNロゴが刺繍された本革/パーフォレーテッドレザー・コンビネーションシートが標準装備され、ベースモデルとの差別化が図られる。中でも、インストルメントパネルの液晶メーターはデザインが斬新で視認性にも優れる。フレームレスのルームミラーやイルミネーションの入ったシフトノブ、そしてステアリングやサイドブレーキなどに施されたコントラストカラー・ステッチなど、エクステリア同様、ディテールに至るまでこだわりが感じられる。

シート、ステアリングも専用のレザー製品が採用されている

ベースモデルのV40 T4、T4 SEには、直列4気筒・1.6L直噴ターボエンジン、GTDIが搭載される。このエンジン、フォード製のエコブーストと呼ばれるもので、フォード・エクスプローラーやレンジローバー・イヴォーク、そして最近ではジャガーXFやXJにまで搭載される系列のエンジンだ。もちろん、それぞれにソフトウェアのセッティングや吸排気系が異なるため性格も違うが、ビッグサイズのSUVや上級サルーンにまで搭載されているのを見ても、V40が動力性能的に不満なく乗れるのは想像に難くないだろう。

このエンジンには、パワーシフトと呼ばれるデュアルクラッチ・トランスミッション、6速DCTが組み合わされる。デュアルクラッチトランスミッションは、伝達効率の良さが特徴だが、ダイレクト感を優先するとシフトショックが大きいという傾向もあったが、ボルボは搭載当初からATと遜色のない滑らかさが印象的だった。さらに、最近ではダイレクト感にも磨きがかかっている。そして今回のV40には、スポーツモードが備わった。シフトアップの際には高回転まで引っぱってから変速し、コーナリング中にはシフトアップしないなど、素早い加速が必要な時やワインディングなどでの使い勝手が向上している。

T5R-Designには213PSを発揮する5気筒2.0Lターボエンジン。アイドリングストップ機能も搭載される

一方T5 R-DESIGNには、2.0Lの直列5気筒ターボエンジンが搭載される。「5気筒」も、ボルボの伝統のひとつだ。最高出力213ps、最大トルク300Nmを発揮。そして、T5にはパワーシフトではなくスポーツモード付き6速オートマティック・トランスミッションが搭載される。よりスポーティなT5にこそDCTを、と思わなくもなかったが、この大トルクに耐えられるだけの容量がないのか、あるいは、スポーティであると同時に、上級モデルという位置付けを鑑みると、滑らかなATという選択肢もありかもしれない。いずれにしても、実際に走ってみると、まったく不満は感じられなかった。

シフトレバーをDレンジに入れ、アクセルを踏んだ瞬間、クルマが元気に飛び出して少しビックリした。300Nmというトルクは、排気量3.0Lに相当するため、絶対的な力強さもかなりなもの。それに加えて、アクセルをほんのちょっと開けた時からスロットルも開くチューニングらしく、レスポンスの良さもとてもターボとは思えないほどだ。

踏み出しこそ少しばかりの慣れを要するが、タイヤが転がり出してからは、スルスルと力強くも滑らかに加速していくフィールは、スポーティと同時に、マルチシリンダーらしい上質さも感じられる。

V40に用いられるプラットフォームは、これもフォードのC1プラットフォームといわれるもの。ベースモデルのV40しかり、あるいはほぼ近い時期に発表されたフォード・フォーカスに乗っても、それぞれにキャラクターは明確に違うものの、基本の骨格がとてもしっかり作り込まれていることを実感した。ボディはカチッと硬質で、サスペンションがちゃんと動いている。

ロープロファイルタイヤとダイヤモンドカットデザインの専用デザインのアルミホイール

ベースモデルのV40 T4でさえ、サスペンションはかなりスポーティなチューニングが施されているという印象だったが、スポーツモデルのT5 R-DESIGNでは、さらに足廻りがギュッと締め上げられている。V40 T4は、3種類ある設定のうち、中間となる「ダイナミックシャシー」が採用されているが、V40 T5 R-DESIGNには、もっともスポーティな「スポーツシャシー」が採用される。スプリングレートやダンパー減衰がさらに高められ、18インチタイヤからの入力を受け止める。そして、剛性強化されたシャシーに対してボディも負けていない。

アクセルペダル同様、場合によっては走り出しはこのソリッドな乗り味に驚くかもしれない。というのも、荒れた路面ではややゴツゴツしたタイヤの当たりがあり、「硬い」と思わせるシーンもあるからだ。しかしながら、ちょっと走っていると、今度は、どんな路面状況であろうと、常にタイヤがしっかりと路面を捉えるロードホールディングの高さに目を見張ることとなる。一瞬、強い入力があっても、飛び跳ねるでもなく、次の瞬間にはスッと何事もなかったかのように収束する。やがて、フラットライドな乗り味に高揚感を覚える。特にワインディングでは思い通りにクルマが動く気持ち良さを存分に堪能できる。

これは、サスペンションのせいだけではないだろう。V40に新たに採用されたTRW製の電動パワーステアリングによるスムーズな操舵フィールも奏功している。けっして重くはないがしっかりした手応えがあり、スポーツカーほど立ち上がりはきつくなく、穏やかながらも切っただけ反応してくれる感覚がクルマのキャラクターに合っている。しかも、ステアリングの操舵力を3段階で調整できるのもうれしい。

箱根のワインディングを走るV40 Rデザイン(インプレッション担当は佐藤久実氏)

基本「スポーティ」が共通のキーワードではあるが、V40 T4とV40 T5 R-DESIGNは、かなり明確なキャラクターわけがされている。その一方、上級モデル並みのセーフティデバイスが装備され、しかも機能をアップデートしている。世界初となる「歩行者エアバッグ」も含めて、これらのセーフティデバイスは、いずれのグレードでも選択できる。用途や好みに応じて、どちかをチョイスするか、悩むのもまたクルマ選びの楽しみだろう。

佐藤久実
インプレッションはモータージャーナリストの佐藤久実さん

 

ボルボV40 T5 R-DESIGN 399万円

ボルボV40 T5 R-DESIGN主要諸元
ボルボ公式サイト

COTY
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