ボルボXC60にニューグレードT5 SEが追加された。発売以来人気が高く全世界でみると、ボルボの商品ラインアップでNO1の販売台数を記録している。国内でも約600万円という価格にも関わらず3番目の売れ行きで高い人気を示している。ちなみに、国内NO1はV50である。
今回のバリエーション追加になったT5 SEはFFモデルで、最大の特徴は新パワーユニットの搭載と500万円を切る価格があげられる。早速、その新パワーユニットを見てみると、これまでのT6 は直列6気筒3.0Lターボであるが、このT5 のエンジンは新開発の4気筒2.0L直噴ターボ。欧州で主流となりつつあるダウンサイジングコンセプトの流れの新世代エンジンだ。203ps/6000rpm、30.6kgm/1750-4000rpmという出力は3.0L NAなみのパワーとトルクを発揮している。燃料消費率は10・15モードで10.2km/Lを記録し、2010年度の燃費基準+15%を達成している。2トン弱ある重量級のボディでもパワフルに走り、省燃費ユニットに仕上がっている。
直噴システムは、ツインCVVTという吸排気バルブタイミングを可変することで高効率・最適燃焼を図っている。また、バッテリーの充電状況をモニターし、オルタネータの駆動を管理するブレーキエネルギー回生システムも採用されている。ベルト駆動のオルタネータであると充電が不要な状況であっても、常に駆動されエンジンへの負荷がかかる。そこでバッテリーが充電不要な場合にはオルタネータを稼動せず、加速時などエンジンへの負荷をなくすものだ。モニターされる内容はBMWなどにも採用されているシステムと同じで、十分な容量が充電されている場合には、オルタネータは稼動しない。中間程度の充電率であれば、減速時に稼動され、加速時には稼動しない。充電量が不足している場合では加速時・減速時にもオルタネータは稼動するというものだ。
この直噴エンジンに装着されるターボシステムも新開発だ。ステンレス鋼板を用い、タービン本体とエキマニとが一体成型されている。エキマニがステンレスであることは、耐久性と軽量化に効果があり、マニホールドだけがステンレス鋼板というのはGT-Rなど他車にも採用されている。しかし、タービン本体とエキマニがステンレス鋼板の一体型は世界初になる。これはボルボとターボシステムのサプライヤー、ボルグワーナー・ターボシステム社、さらに材料サプライヤーであるベンテラー・オートモーティブ社の共同開発で誕生している。
ボルボ・カーズ・ジャパンの岡田勝也氏によると、ステンレス鋼板とすることで、マニホールド、タービンの熱慣性の削減ができるという。つまり熱に強いステンレス材でれば70度〜100度程度上昇させることができるため、熱エネルギーを高くすることができる。その一方でヒートマスを少なくすることができ、結果的に高出力につながるというわけだ。
DCTのミッションとシティ・セーフティが標準装備
この新パワーユニットには6速DCTが搭載される。デュアルクラッチ・トランスミッションはボルボとフォード、ゲトラグ社、三菱自動車との共同開発で作られたもので、ランエボXに搭載されているミッションとほぼ共通だ。そのDCTをボルボがオリジナルで制御している。その結果、トルコンタイプのATより8%の燃費向上につなげている。また、マニュアル・ドライブ操作は、SUVタイプであるからなのか、パドルシフトはなく、フロアのシフトレバーを前後に動かすことでギヤチェンジを行う。
ボルボといえば「安全」というイメージがあるが、その安全への標準装備として注目のシティセーフティがあげられる。日本初の衝突回避・軽減オートブレーキシステムは、速度相対差で約15km/h以下であれば衝突は回避される。
そのシステムには赤外線レーザーレーダーを使用し約6m先の前方車両を監視している。衝突の危険を察知すると、エアバッグ及びシートベルトを事前に作動準備する。またブレーキはプレチャージされ、速度相対差15km/h以下であれば、0.6G〜0.8G程度の減速が行われ衝突が回避される。また、速度相対差15km/h〜30km/h未満では追突ダメージの軽減になる。
また、ドライバー支援システムとしてオプションのセーフティパッケージがある。こちらはコンチネンタル・オートモーティブ社との共同開発でミリ波レーダーセンサーとカメラを使った装置になる。レーダーは150m先を捉え、15度の範囲で障害物を認識し、カメラは画像解析を行って障害物を判断している。
このセーフティパッケージにはACC(アダプティブ・クルーズコントロール)と追突警告機能、そして車間警告機能の3つがある。ACCはレーダーセンサーを使用し、前方車両との車間距離設定に応じ、自動的に速度を加減速する。その際の最大減速Gは0.25Gで自動的に減速は行われるが、完全停止はしない。追突警告機能は、レーダーとカメラを使用し、追突の危険が察知された場合にドライバーが回避行動をとらないと、フロントガラス上で赤色の警告灯が点滅、同時に警告音を発し注意を促す。これは前方車両だけでなく、停止車両にも反応する。そして、車間警告機能は、レーダーセンサーを使用し、ACCが作動状態でなくても前車との車間距離を保つために、警告灯は点灯しドライバーを支援する、という機能をもっている。
他に、カメラシステムではレーン・デパーチャー・ウォーニングがあり、方向指示器を出さないで車線を逸脱した場合、警告音を発し注意を喚起するシステムも含まれている。また、休憩を催促するドライバー・アラート・コントロールも機能に盛り込まれている。
そして輸入車業界では初の、5年間無償のサービスプログラムも導入され、ライバルとなるアウディQ5やBMWX3のエントリーモデルより70万円程度したまわる499万円という価格もうれしいポイントだ。
尚、試乗インプレの様子はラジオ番組「モーターウイークリー」でモータージャーナリストの石井昌道さんがレポートします。FM&AM7局で放送されます。放送日は8/22、23(地域により違いがあります)
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文:編集部 高橋明