【ポルシェ】新型991ポルシェカレラカブリオレSpecialist試乗記  レポート:九島辰也

マニアック評価vol96
997型から991型へと進化したポルシェ911。昨年秋のフランクフルトモーターショーで発表されたのは、カレラとカレラSという2台のクーペモデルだった。12月の東京モーターショーでも展示されたことから、実車をご覧になった方も多いことだろう。

991
ニュー911カレラカブリオレの試乗会はスペイン領カナリア諸島で行われた

そして、次に我々の前に姿を現したのはここで紹介する911カブリオレだ。その国際試乗会が2月にスペイン領カナリア諸島のグランカナリアで行われた。では、まずカブリオレならではの幌について話を進めよう。

911カブリオレフロント真横

左横右フロント

振り返ると911カブリオレは1998年リリースの996型を機に、Z型に折られるルーフが完全にボディに納まるようになった。それ以前は畳んだ幌が残り、クラシカルな雰囲気を醸し出していたといえる。356しかり、クラシックビートルしかり。その意味では、今回996型からの正常進化を遂げた。幌がすべてボディ内に納まるのは当然のこと、997型まで閉めたときにリヤウィンドウ部分が多少ボテッとしていたのが、991型では見事にクーペと同じ滑らかなカーブを描く。プレゼンテーションでは、しきりにクーペと同じシルエットだと強調していた。察するにホイールベースが伸びたことも関係したのだろう。空気抵抗値0.30も立派である。

幌はフレームにマグネシウム、ガイドラインその他にアルミニウムを採用した。ここがスチール製だった997型までと大きく違うところで、車両重量はなんと従来よりも60kg軽減させている。いってしまえば、大人一人分軽くなったことになり、いままでは一人で乗っていても二人乗車だったことになる。カブリオレはピラーのない分ボディの補強は必須。その面からもこの軽量化は大きな意味を持つことになる。

カレラSカレラ

カレラSPDK
カレラSカブリオレのPDKシフト。ギヤは7速

開閉はセンターコンソールにあるスイッチひとつの全自動式。当然のこと、フックを手ではずしたりは必要ない。電動ロック機能を含め13秒もあれば頭の上がすべて青空となる。もちろん、作動はこれまで同様走行中もOK。突然の雨も時速50km/h以下に落とせば、左右にある油圧シリンダーが幌を動かし完璧に覆ってくれる。ちなみに、この幌の生産はオーストリアのマグナ・シュタイアーだそうだ。

軽量化を積極的に行ったカブリオレだが、まだもうひとつトピックスがある。それはボディに組み込まれたメッシュのウインドディフレクターだ。これまで手でそれを取り付けたりはずしたりしていたが、今回から電動で動かすことができるようになった。U字型のテンショニングブラケットにあらかじめそれが装着され、使用しないときはリヤシートの後ろ側に完全収納される。作動時間はわずか2秒。ただリヤシートに人が座っているときは使えないが、たいがいオープントップでスピードを出すときは一人か二人乗車なので問題はないはず。というか、個人的にかなり気に入っている。もっと早く実用化していても不思議でない装備だ。

リヤビュー

それでは、実際に走ったときの状態だが、結論からいうと、ウインドディフレクターを立ち上げてさえいれば、キャビン内はまさに快適空間。シートの間を通って後ろから巻き込んでくる風はシャットアウトされ、エアコンもフツーに感じることができる。それに上部からの風の進入もほとんどないことから、ゴーッといった騒音も少なく助手席との会話で声を張り上げることはない。つまり、音楽も極端にボリュームアップせず楽しめるのだ。ここら辺はメルセデス・ベンツSLシリーズの専売特許だと思っていたが、991型ではそれにしっかり並んだ。

そんな911カブリオレだが、ベースはカレラとカレラSである。前者が350psを発揮する3.4Lで、後者が400psの3.8Lエンジン。簡単な見分け方として、マフラーエンドが四角い2本出しと丸型4本出しとなる。当然4本がカレラSだ。

で、その走りについてひとこと言っておくと、想像以上に味付けが異なる。パワーを上げたとはいえダウンサイジングしたエンジンのカレラはかなり高回転型。7600rpmからレッドゾーンとなるが、スポーツ走行ではそこを必要とする。今回もショートサーキットの試乗がプログラムに含まれていたが、まさにそんな感じだった。逆にいえば低回転でのトルクの細さが少々気になる。これに対しカレラSは下の領域からドーンとクルマを押し出す従来型。これまで通りの味が好きならこちらを選ぶのをおすすめする。

 

カレラSメーターカレラメーター

↑左がカレラS、右がカレラのメーター

とはいえ、絶対的なパフォーマンスに事足りないのが911。いまやラグジュアリーさも兼ねそろえたそれをオープンエアで走らすのは、かなりの贅沢であることは間違いない。

文:九島辰也

■ポルシェ911カレラカブリオレ主要諸元

●価格1361万円 ●全長4491mm×全幅1808mm×全高1299mm WB2450mm ●エンジン=BOXER6気筒 3.5L ●最大出力257kw(350ps)、最大トルク390Nm ●ミッション=7速PDK ●0-100km/h 4.8sec(4.6sec Sport+)

■ポルシェ911カレラSカブリオレ主要諸元

●価格1641万円 ●全長4491mm×全幅1808mm×全高1292mm WB2450mm ●エンジン=BOXER6気筒 3.8L ●最大出力294kw(400ps)、最大トルク440Nm ●ミッション=7速PDK ●0-100km/h 4.5sec(4.3sec Sport+)

 

 

ポルシェジャパン公式サイト

COTY
ページのトップに戻る