【マセラティ】マセラティ・グランツーリズモ試乗 乗るたびに感動がある不思議なクルマ レポート:九島辰也

マニアック評価vol184

柔らかなラインのデザインはピニンファリーナの手によるもの

いまマセラティは覚醒している。クアトロポルテをフルモデルチェンジしサイズアップを図った。そしてその下にギブリの名を付けたミッドサイズサルーンを設け、4ドアモデルのラインアップを再構築しようとしている。メインマーケットは北米。すでに東海岸を中心にかなりのディーラー網を発達させてきた。では2ドアモデルはどうか??現在彼らは4シーター2ドアモデルを有する。ここで紹介するグランツーリズモがそれだ。

マセラティ・グランツーリズモは、3200GTから進化したグランクーペの後継として2007年にリリースされた。デザインを担当したのはピニンファリーナで、コンセプトカー“バードゲージ”を発展させ市販化に至った。流れるようなフォルムがその特徴となる。

↑ グランクーペの後継として登場したグランツーリズモ ↓

屋根開き版はその2年後に姿を現した。こちらも破綻のない4シーターオープンエアを具現化する。2012年はイタリアのメゾン系ブランド“フェンディ”とコラボレーションして話題となった。では、グランツーリズモだが、グレードはスタンダードモデルのグランツーリズモ、スポーツ、MCストラダーレが用意される。違いはパワーソースとその他セッティングだ。スタンダードモデルが4.3L・V8型(405ps)なのに対し、スポーツは4.7L・V8型へ排気量アップされ、最高出力も460psに達する。

MCストラダーレはその名前のごとし。MCとは“マセラティ・コルセ”のこと。つまり、“マセラティ・レーシング”を意味する。そのストラダーレ(ストリート版)だ。中身はこれまであったグランツーリズモSをスープアップして最高出力450psにしている。イメージ的には2010年にワンメイク用に発表されたMCトロフェオのロードカーといったところだろう。

スポーツは4.7L・V8エンジンを搭載、最高出力は460ps

それでは今回試乗したグランツーリズモスポーツの走りはどうか。

当然、このクルマのステアリングを握るのは初めてではないが、相変わらずの官能ぶりに思わず頬が緩む。マセラティがマセラティである由縁はここにあるとでも言おうか。映画「最強の2人」を思い出した。スターターと同時にフォンと短く目を覚ますところから、出だし、中間加速、乾いたサウンドにひたすら心打たれる。無駄にブリッピングしたがるのはクルマ好きの性かもしれない。

しかも、今回この試乗車にはインテリアにたくさんのオプショナルパーツが装着されていたことも見逃せない。ルーフライニングから細部に渡るアルカンターラ、コントロールパネルを中心に貼られたカーボンパネルが、このクルマが特別であることをアピールする。これだけ贅沢な素材が見合うパッケージングはそうないだろう。官能的なハードウエアを助長させる演出がここにある。

話が前後してしまうが、ミッションは6速シーケンシャルのツインクラッチ・トランスミッションを搭載する。名前はMCシフトで、ZF製の6速ATとは別のものだ。なので、ステアリング上のパドル操作がマニアックで楽しい。CVTやトルコンのそれとは違い、エンジンのおいしいところを探しながらスパスパッとギヤを切り替えられる。2-3速、3-4速あたりでキレイに決まると気持ちがいい。

パドルやコントロールパネルのカーボンが気分を盛り上げる

また、このとき“Sport”ボタンを押しておけば応答性が高まる。より挙動がレーシーになる瞬間がやってくる。ステアリングと一体になった動きはまんまレーシングカーとでもいいたい。それじゃ同時にダンピングが急激に高まるのかといえばそうではない。そこは”スポーツ&エレガンス“というキャッチフレーズの優雅さが顔を出し、クルマのキャラクターを維持する。なんという絶妙なバランスなのだろう。段差の衝撃がキャビンにそのまま進入することなくバネ下ですべて処理される。20インチに対する乗り心地へのネガティブ要素は…ない。

レーシーでもあるが、その挙動はあくまでもエレガントだ

この他の秀逸ポイントはブレーキ。ブレンボ製キャリパーがしっかり仕事する。コーナー手前でキレイに減速する様はさすが。そして制動の立ち上がりに嫌なGフォースは感じられない。信頼性を感じさせながらのこのセッティングもまた実にお見事である。

といった内容のグランツーリズモスポーツ。もはや完璧なクーペなのだが、個人的にはいつもサイズが気になる。グランクーペ時代から比べると全長が200mm前後長くなっているのだ。やはり2ドアクーペは全長4600mmくらいまでには納まっていてほしい。だが、それでも走り出せばコンパクトに感じさせるのがグランツーリズモの魅力だったりもする。

まぁ、なにはともあれ、乗るたびに感動する。なんとも不思議なクルマであることは間違いない。

マセラティ・グランツーリズモ 1530〜2112.5万円

◎マセラティ・グランツーリズモスポーツ主要諸元

全長×全幅×全高=4885×2060×1355mm ホイールベース=2940mm トレッド=フロント1585mm リヤ1590mm 燃料タンク=86L 車両重量=2140kg エンジン形式=V型8気筒 排気量=4691cc ボア×ストローク=94×84.5mm 最高出力=460 hp(338kw)/7000rpm 最大トルク=520Nm/4750rpm

マセラッティ・ジャパン公式サイト

COTY
ページのトップに戻る