ランドローバーの新型プレミアムコンパクトSUV、ディスカバリー・スポーツ。2014年10月に日本国内でも受注が開始され、デリバリーは2015年6月からが予定されている。このランドローバーの放つ新しいプレミアムSUVに試乗する機会を得たので、そのレポートをお届けしよう。<レポート:AP編集部ザキ>
試乗会が行なわれたのは2015年4月9日。大型連休前の今(記事更新日:4月27日)となっては信じられないが、前日4月8日は都心でも真冬のような寒さが戻り、試乗会場の富士五湖・西湖周辺は季節外れの雪になった。8日は予定されていた試乗枠の一部がキャンセルになったと知らされ、我々Auto Prove取材陣も「翌日のスケジュールはどうなるんだろうか…」と気をもんだが、雪は止み試乗は予定通りに行なわれた。SX4 S-CROSSの試乗で大雨に見舞われたAP編集委員・マツモトとザ・モーターウィークリーDJ藤本えみり嬢とは、どうやら普段の行いが違ったようである(笑)。
前日の雪が道路脇に残りまるで冬のような景色の中を、試乗会場のPICA富士西湖キャンプ場へと向かう。AP取材陣は筆者(APスタッフ・ザキ)とAP編集長タカハシのふたり連れだ。「今日は何に乗るんでしたっけ?」「ディスカバリー・スポーツ」「前に今井優杏さんで動画取材したクルマ?」「あれはー…レンジローバー・スポーツ。今回はディスカバリー・スポーツ」「あ、ああ」。そうランドローバーの試乗や記事を作る際に、いつも車名とブランド名でアタマの中がややこしくなるのが筆者の常なのである。
自動車情報専門サイトに関わる人間としてどうなのよ、というツッコミはさておいといて、まあランドローバー、レンジローバーなどといろいろとややこしいことは間違いない。そんな横文字ブランドに弱い筆者のためではないが(当たり前だ)、試乗前のプレゼンテーションでは「ランドローバーの現在のモデル展開について」という説明も盛り込まれていた。
それによればランドローバーは現在、三本柱のブランドで商品を展開している。レンジローバー系、ディスカバリー系、そしてディフェンダー系の三種類だ。レンジローバーはラグジュアリー、ディスカバリーはアクティブ、そして日本には未導入ながらディフェンダーはリアルオフローダー、ざっくりとだがそんな風に理解した。なおこのディスカバリー・スポーツは、新しいディスカバリーファミリーを特徴づける先兵的な役割も持つ。
さて頭の中でのブランド整理も完了しもやもやも晴れたところで、新型ディスカバリー・スポーツのプレゼンテーションでは以下のようなことをレクチャーされた。
ディスカバリー・スポーツはイヴォークをベースにしたプレミアムコンパクトSUVで、エンジンは同じ2.4L直列4気筒ターボを搭載する。最高出力は240psで9速ATが組み合わされている。リヤには新しいマルチリンクリヤサスペンションを採用する。ボンネット、ルーフ、リヤゲートにはアルミを使用する…などなど。詳細に関しては、ディスカバリー・スポーツ発表時のこちらの記事を参照していただきたい。
プラットフォームを共通するイヴォークとのサイズ比較では、イヴォークが全長4355mm×全幅1900mm×全高1635mmに対して、ディスカバリー・スポーツは、全長4610mm×全幅1895mm×全高1725mm。全幅がやや小さく、全長はグっと伸ばされている。またホールベースもイヴォークの2660mmに対して、ディスカバリー・スポーツは2740mmとなっている。数字の羅列ではピンとこないが、簡単に言えばイヴォークよりも全長とホイールベースを伸ばして、その分を室内ユーティリティに充てる。それがディスカバリー・スポーツの特徴でもある。
ライバル車としてはアウディQ5、BMW X3、ボルボXC60辺りの名前が挙げられていた。特にユーザーがバッティングするのは、アウディQ5とされている。ちなみに全長4630mmのQ5よりもコンパクトなディスカバリー・スポーツだが、2列目シートのニースペースは+64mm、レッグスペースも+60mmと室内スペースに余裕があるとのことだ。
またディスカバリー・スポーツの室内ユーティリティでは、5人乗りの2列シートにプラスして、3列目に2人乗りのシートが装備されていることもトピックだ。2列目のシートバックを倒してのサードシートへのアクセスには一瞬躊躇するようなタイト感があるが、キッズならば十分。また大人でもレジャーサイトでの移動などの短時間ならば、十分に使える装備である。
さてなかなか走り出さない試乗レポートだが、ようやくクルマを動かすことにした。まずは撮影のためにPICA富士西湖のキャンプサイト周辺を移動する。運転席からの眺めではボディの感覚もつかみやすく、狭いキャンプサイトでの取り回しにも不安はない。
キャンプサイトを出て、外周道路、そして一般道へと走り出す。信号待ちからの加速、巡航速度でのクルージング、どのシーンでも2Lの直4エンジンはパワフル、そして車内への騒音もなく快適だ。インテリアは「プレミアムSUV」を名乗るだけあって上質感がある。上級グレードのHSE Luxuryにのみ設定されるウィンザー・レザーシートのタンカラーなどはもちろんのこと、ベーシックグレードのSEのレザーシート&内装でもそれは同じである。インテリアパネルの若干プラスティックなシボ感が庶民的ではあるが、アクティブにレジャーに使うクルマということを考えれば、それも特に気にならない。
走りの面では電動パワーアシストステアリング(EPAS)は、中央部の座りがいい…とインプレッション記事らしいことを書いているが、これは同乗した編集長タカハシの言葉をそのまま頂戴してある。ついでにタカハシの言葉を頂けば、SUV的な左右にクルマが振れたときの収まりの悪さはほとんどないという。例えば急激なレーンチェンジや障害物を避けたようなシーンでも、ユラユラとクルマがいつまでも揺れることなくピタっと収まる、とそういうことである。
このあたりの挙動はSUVというよりも乗用車的ということで、ライバルとしてアウディQ5、BMW X3などのドイツ系プレミアムカーの名前が挙がったのもうなずけるところだ。なお世界初となるデジタル・ステレオカメラによる自動緊急ブレーキ(AEB)、クラス初の歩行者用エアバッグ標準装備、レーンデパーチャーウォーニング、オートマチックハイビームアシストなど、安全運転のためのドライバー支援システムももちろん用意されている。
今回は富士五湖周辺の舗装路での試乗だったが、オフロード性能に関してもディスカバリー・スポーツはぬかりはない。水深600mmまでの渡河性能を持ち、急坂を下る際に自動でブレーキをかけて車速をコントロールするヒル・ディセント・コントロール(HDC)などの電子デバイスも充実している。
今回は試していないが前述した今井氏によるレンジローバー・スポーツの動画撮影の際には、車両移動やロケサポートで筆者もオフロードコースを走行した(レンジローバー・スポーツの動画は↓)。
雨上がりでヌタヌタでグズグズのオフロードの下り坂。腕に覚えも何もないドライバー(筆者のことである)ならタイヤがロックしたままズルズルと土の壁へ直行するしかない、スリリングなシチュエーションである。しかしヒル・ディセント・コントロールのおかげで、あのときは何事もなかったようにジワジワと坂を無事に下りきったのを覚えている。デジタルデバイス様々である。
ディスカバリー・スポーツも当然、同等のポテンシャルを持つのは間違いない。その辺りのオフロード性能に興味があれば、こんなイベントも開催されるので参加してみてはいかがだろうか?(2015年5月2日~6日 ディスカバリー・スポーツオフロード体験試乗会)
イヴォークよりもアウトドアライフなどアクティブなキャラクターを持つディスカバリー・スポーツ。車両価格は492万円~692万円。ターゲットユーザーはウィークデーはバリバリと働き、そして余暇は趣味を精力的に楽しむ、そんな層だという。よく働き、よく遊ぶためのプレミアム・コンパクトSUVである。