ジャガーXJシリーズの2013年モデルに、新たなエンジンが加わった。2.0L直4直噴ターボ(240ps)と3.0L・V6型+スーパーチャージャー(340ps)である。そのインプレッションをお届けしよう。
全長5135mm×全幅1900mm×全高1455mm。これがジャガーXJのボディのディメンションである。この堂々としたサイズはまさにフルサイズのプレミアムサルーンだ。3mを超えるホイールベースを含め、ショーファードリブンともなる高速クルーザーであることは明白だ。
そんな性格ゆえ、これまでこのクルマには5.0L V8型という大排気量エンジンが搭載されてきた。大排気量ユニット特有の大トルクがフル・サイズサルーンを軽々と前へ押し出す。特にスーパーチャージャーで過給された510psバージョンなどはもはやサルーンの領域を超えスポーツカーライクな領域まで到達する。ジャガー本来のハンドリングと相まって、かなりのモンスターマシンと化していた。およそ1年半前、ポルトガルのサーキットでそれを試したが、高速コーナーからヘアピンまで想像以上のアグレッシブな走りに感激した。
そんなXJシリーズの2013年モデルに、新たなエンジンが加わった。2.0L直4直噴ターボ(240ps)と3.0L V6型+スーパーチャージャー(340ps)である。前者はレンジローバー・イヴォークに積まれるものと同じ。よって、フォード・エクスプローラーのエコブーストやボルボXC60にも採用されている。生産はスペインのバルセロナにあるフォードのエンジン工場。そこから英国の組立て工場へ供給される。
3.0L V6型はXFに搭載されてきた既存のV6型ではない。5.0L・V8型から2つのシリンダーをカットしたものだ。つまり、こちらは自社製。もちろん、排気量からしてボア×ストロークを変更しているのはいわずもがな。クルマの適正を鑑みて3.0Lという排気量に着地したと考えられる。
では、なぜ彼らはこうしたエンジンのラインアップに踏み切ったのか。
それは自動車メーカーの世界的な潮流を見ればわかる。今日、どんなメーカーもエコを前提としたパワートレーンの高効率化が叫ばれている。で、その中でもエンジンのダウンサイジングはトレンド。フィアット・パワートレーン・テクノロジーズ社が開発した2気筒のツインエアを見ればわかるように、各カテゴリーで遂行されている。
ただ、ジャガーがそれに踏み切った理由はそれだけじゃない。彼らはこうしたダウンサイジングされたエンジンでもジャガーの走りが体感できると確信したからだ。で、それに大きく貢献したのがオールアルミボディだ。2003年型ジャガーXJ(X350)から彼らはその技術を採用しているが、この堅牢かつ軽量なボディ構造が今回のダウンサイジングで大きな効果を生み出している。実際、ライバルと比べるとわかるが、車両重量は150kg以上軽い。それにエンジン自体の重量も減るのだから見た目以上に軽快な走りができるのだ。
ならば実際に走ってそれは感じるのか?
まず、結論からすると想像以上の走りであった。出だしからスーッと出る感覚に違和感はないし、そのままアクセルに対するリニアな加速も体感できた。高速域でもそうだ。今回の試乗コースは第2東名高速を使用したが、そこでの加速も不満はない。ATモードでもOKだし、マニュアル操作で4、5、6速あたりをうまく使えばきれいに加速する。走行中、「本当に4気筒だっけ」と疑問を持ったほどだ。ちなみに、2013年モデルからトランスミッションは8速ATへと進化した。6〜8速はオーバードライブ的なギヤ比だが、その辺を効果的に使うと好燃費が期待できそうだ。
もちろん、こうした走りの印象は2.0L・直4エンジンということを前提としている。5.0L V8型の加速と比べて遜色がないという話ではないのであしからず。追い越し加速でガンと踏んだときの反応がものすごいということではない。一テンポ空くのは致し方ないだろう。が、それも20分も走れば許容できるものと判断できるはずだ。
そんな4気筒モデルだが、新型V6モデルを含め今回のエンジンラインアップの追加はどれがいいというのが論点ではない。今ジャガーというブランドがこれだけ多くのニーズにしっかり応えているというところがポイントだ。それは技術力の高さをアピールするものであり、ブランドの価値を高めるものである。エコを前提とする次世代を見据えた彼らの動向に、大きな期待ができそうだ。