【シトロエン】別のクルマかと思うほど違う2台の新型C4。さて、僕が好きなのは? 試乗動画 by 桂 伸一

マニアック評価vol54

2011年7月よりデリバリーが開始された日本におけるシトロエンのベストバイ・モデルが、この新型C4だ。BMWと共同開発された直4の1.6Lエンジンは、NAとターボ付きが選択できる。この2台の走り味が一瞬、「別のクルマに乗ったのか?」と思わせるほど違うとのこと。では早速、注目の試乗レポートをお届けしよう。

IMPRESSION

ゴルフと違う世界は、やはりフランス車に期待

このクラス(欧州Cセグメント)には、「VWゴルフ」という世界に名だたる巨人が君臨している。しかし、それがすべてではない。「クルマはまずカッコが命」。と、そう思う者からすると、フランス車には独創的なデザインや使い勝手の良さ、さらに石畳の街を行くフランス車ならではの個性的な走行性能も重視する必要がある。

まるで“ドイツ車か”と思うほど硬い乗り味だったフランス勢。特にそのホワッとしたソフトな乗り味が個性だったシトロエンに、かつての乗り味が“確実”に蘇ったのは、現行C5からだったと記憶する。「ドイツに向いた」と散々叩かれたであろう、その乗り味を含む操縦性や走行性能を、ベーシックなモデルに展開したのは、コンパクトなC3だった。

そして真打ち。世界のファミリーカーのスタンダードサイズといえる“Cセグメント”にシトロエンらしさを持って生まれ変わったのが新型C4である。

↑斜め後ろから見たセダクション。端正な佇まいという表現が相応しい

デザインは、C5やC3からさらに発展した滑らかな面とエッジの融合によるスタイリング。フェンダーのフレアなどまるでスポーツカーの部分アップを見るような、ボリューム感にあふれる造形は素直に美しいと思う。角のない滑らかなダブルシェブロンによるグリルを含む、優しいマスクに生まれ変わっている。

もう1速あれば非力をカバーできるかも…

上陸したベースモデルは「セダクション」。エンジンは1.6L自然吸気に4速ATの組み合せ。それは数値の上では従来のプジョー/シトロエン製の4気筒+4速ATと同じだが、エンジンはBMWと共同開発の新型。トランスミッションも改良型が搭載されて、発進時のスナッチなどのギクシャク感や、キックダウン時を含むシフトショックが改善されている。

ただ「日本はATでありさえすればいい」とでも思っているのか? いまどき4速ATではあまりにもお粗末。当然だがひとつのギヤの守備範囲が広すぎる。1速は50km/hだからいいとして、2速にシフトしてそのまま加速が続けばいいが、中断してから再加速、という状況は、もう完全にトルクバンドを外れてしまって加速力に乏しい。初心者が高速への流入や合流で、この状況に陥らないことを願う。

もっともこれはC4に限った話ではなく、他のフランス勢も同様だ。ベーシックは4速と相場が決まっているようだが、パワー/トルクともに非力だからこそ6速ATなど多段化で補うべきと痛感する。姉妹車には存在するのだから無理な注文ではないと思うが、日本の販売台数では、本国を動かすには至らないか。

セダクションは本来16インチタイヤが標準装着されるのだが、試乗車はパノラミックガラスルーフとセットオプションの17インチを履いていた。サスペンションはしなやかにストロークしようとするが、タイヤ単体の剛性感が目立ち硬い。高速安定性では有効かもしれないが、ハイドロではない金属バネ/ダンパーのサスでもシトロエンの味わいが得られることや、非力な動力性能だけに、これはぜひ16インチで乗りたい。

“必要以上”の加速Gで、その気にさせる

一方、上級の「エクスクルーシブ」はターボと6速EGS(AMT)に17インチタイヤで別のクルマか、と思うほど違う。アイドリング直後からトルクを跳ね上げる特性だから、アクセルを踏み込むと同時にターボトルクが立ち上がり、“必要以上”の加速Gで引っ張られる。もちろん6速のギヤリングも関係して、2速までは加速重視、3速からは伸びとクルージングに適したギヤ比設定となる。

タイヤとサスの組み合わせも、この動力性能に対してマッチしている。エンジン特性だけで「クルマの印象はこうも変わるものか?」と、改めて言うのも何だが、それほど違うのだ。

乗り味はシトロエン流のしなやかさと、いい意味でのドイツ流の剛性感の融合。ステアリングを転舵した方向にノーズは柔らかく吸込まれ、直進状態はビシッと一本筋が通っている。

室内には液晶が変色するなどシトロエン流の演出がある。C4といえばステアリングのセンター部が固定されたセンターフィックスが個性だった。それを廃止した重量が3kg。軽量化か個性を取るか、というところだが、現実はコストだろう。

論より証拠、気になるムキはディーラーで試乗を・・。

文: 桂 伸一

↑新型シトロエンC4のエントリーグレードとなるセダクション

OUTLINE of New C4

7年ぶりのフルモデルチェンジ

2005年に日本で販売を開始したシトロエンC4は、5ドアハッチバックスタイルで、世界で100万台以上の販売を記録する人気のモデルとなり、日本でも45%を占める主力モデルになった。そのC4 が今回7年ぶりにフルモデルチェンジされた。新型C4の狙いは、激戦区のCセグメントの中でシトロエン独自の存在価値を強調することと同時に、質感を大幅にアップして上質感やエレガント感をプレミアムクラスに匹敵するレベルとすることだ。

新型シトロエンC4のプラットフォームは旧型同様にプジョーと共通化されており、サスペンションレイアウトはフロントがマクファーソン・ストラット、リヤがトーションビームというFF車のオーソドックスなレイアウトとなっている。

↑上級モデルとなるエクスクルーシブ。17インチタイヤも標準装備となる。

グレード構成は、「セダクション」と「エクスクルーシブ」の2モデルで、セダクションは1.6LのNAエンジンに4ATを組み合わせ、エクスクルーシブは1.6Lツインスクロールターボに6速EGS(エレクトリック・ギヤボックス・システム)のユニットとなっている。このEGSは別名BMP6(通称は6AMT)で、シングルクラッチの自動変速機でシトロエン最新の制御システムのミッションとなっている。これはPSAグループで共同開発された次世代2ペダルトランスミッションなのだ。

搭載される1.6LエンジンはPSA(プジョーシトロエン・グループ)とBMWとの共同開発から誕生したもので、プジョー308やBMW MINIにも搭載されている俗称プリンスエンジンだ。エクスクルーシブに搭載されるのは、ボルグワーナー製のツインスクロールターボが装着された直噴ユニットで156ps/6000rpm、240Nm/1400〜3500rpmを発揮。一方でセダクションに搭載されるNA仕様は120ps/6000rpm、160Nm/4250pmとなっている。なおフランス、ヨーロッパではHDiディーゼルエンジン(1.6L、2.0L)が主流になっている。

マニュアルの伝統を感じさせるEGS

組み合わされるミッションは前述のように、最新制御の4ATと6速EGSである。この4速ATも先代の呼称「AL4」から「AT8」へと進化され、こちらはルノーとの協業で誕生したATである。トルクコンバーターはZF製の最新版を採用し、ほぼ全域ロックアップ制御を採用している。なお、この4ATは主としてアジア市場向けのトランスミッションと位置づけられる。

一方のEGSはシングルクラッチのいわゆるAMTだが、国内ではあまり見かけない方式のATであるが、欧州では人気のある2ペダルシステムだ。これは、シングルクラッチであるため、アクセルを踏み続けたままだとシフトアップの時、一瞬失速した感触を味わう。しかし、シフトチェンジの時にアクセルを抜くアクションを意図的に行えば、スムーズにまた、マニュアルミッションのようにシフトアップするので、逆に『操作』している感触が味わえるというものだ。

↑エクスクルーシブのインパネ。シフトレバーはストレートに動くパターン

余談だが、いまでも欧州ではマニュアルミッションが主流であり、AMTも人気が高い。とくにフランスやイタリアなどラテンな国で人気があり、またメーカー側はAMTの採用拡大によりMTより実用燃費を高める狙いもある。一方ドイツではDSGなどツインクラッチのモデルが人気を高めてきている。

フォルクスワーゲンのゴルフがDSGを搭載して以来、ダウンサイジングによるミッションの多段化が急激に進んでいるが、1.6Lクラスの国産車・輸入車を見てもまだ4ATないしCVTが主流であることから、新型C4の4ATが大きなマイナス要因ではないだろう。

つまり、欧州ではこのCセグメントにおいて、マニュアルを選択する割合が多く、ATに関しては北米や中国、日本などのマーケットに合わせての選択という一面もある。したがって日本の価値観で言えば、価格面から判断して5速以上のATが欲しいという意見があるのは間違いない。

この点についてシトロエンジャポンのプロダクトマネージャーの上村学氏によれは、「当然、多段化のリクエストはしましたが、フランス本国でも4ATで販売するので、シトロエンの戦略と理解しています」ということだ。つまり、セダクションのキャラクターとして多段化はどうか? おそらくCVTがベターであろう。とはいえ、CVTは欧州では不人気であり、結果4ATの制御を見直して省燃費を狙うという結論になったと推測される。実際プジョー308もエントリーモデルは4ATで、ルノーのルーテシアも同じく4ATである。またメガーヌはCVTを選択していることなどからも、他の輸入車と比較して、同等の装備と言える。

↑4速ATのセダクションのシフトパターンはゲート式となる

また、エクスクルーシブにはスポーツドライブが楽しめるように6速EGSを採用し、グレードの違い=キャラクターの違いを明確にしている。その結果、新型C4の燃費改善にもひと役かっている。さらに、超高張力鋼板をボディに採用し、軽量化され、またミシュランのエコタイヤの効果などもあり、セダクションでは6%、エクスクルーシブでは25%もの燃費改善に成功しているのだ。

全体に少しずつ大きくなった

自慢のエクステリアデザインでは、ダブルシェブロンのエンブレムが付くフロントマスクの大型グリルに惹かれる。ヘッドライトデザインも線が強く、シトロエンブランドのアイデンティティを打ち出している。ボディサイズは先代モデルより若干大きくなり、全長は4330mmで35mm長くなり、全幅は1790mmでプラス15mm、全高も1490mmで10mmワイドと、少しずつだが全体的にサイズアップしている。

また、ボディサイドに流れる2本のキャラクターラインとリヤサイドウインドウに接するクォーターウインドウの傾斜が強く、スポーティで躍動感のあるデザインをしている。

インテリアは非常に上質であり、セグメントを超えるレベルだ。ダッシュボード上部はソフトな触りの新素材スラッシュスキンを採用し、インスツルメンタルパネルを経由し、センターコンソール周辺まで丁寧に仕上げられている。また、メーターまわりのデザインでも高級感の演出がきちんとされ、ドア内張りまで含めた全体の印象でも高級感あふれるイメージのインテリアとなっている。今後、このインテリアの質感はセグメントのベンチマークとなる存在になるのではないだろうか。

シートはセダクションがファブリックでエクスクルーシブがレザーとなっているが、その座り心地はソフトで、いかにもフランス車らしい、包まれる感触のあるシートとなっている。特にその特性はファブリックのセダクションの方が強く感じられる。大人4名がリラックスして乗車できる居住スペースもクラストップレベルであり、ソフトな乗り心地とあいまって、ゆったりとした、くつろげる空間を提供している。

遮音性など走行時のインテリアでは、エンジンが高回転となっても静粛性が高く、風切り音やロードノイズは低く抑えられている。これは遮音フロントウインドウの採用やエンジンルーム内に配された吸音材の効果が高いと言えるだろう。

実用面や安全性能の向上も抜かりなし

さらに日常使いのメリットとして挙げられるのは、クラス最大級のトランクルームの大きさだ。VDA計測法で380Lの容量があり、60対40の非対称分割シートを倒せば1.5mを超す長尺物の積載も可能で。これらはライバルたちに対して、ユーティリティにおいてのアドバンテージのひとつである。

↑従来型より30Lも広い380Lというラゲッジ容量はライバルを圧倒するほど

セーフティ・テクノロジーでは、斜め後方の死角に入った車両を超音波センサーで検知し、ドアミラー内のランプで知らせるブラインドスポットモニターシステムが搭載されている。また、坂道発進のアシストとなるヒルスタートアシスタンスや、縦列駐車が可能なスペースがあるか否かを知らせてくれるパーキングスペースセンサーなどがエクスクルーシブには標準装備されている。そして全車に6エアバックを装備し、欧州の自動車衝突安全テストであるユーロNCAPで最高評価の5スターを獲得している。

新型C4は右ハンドル車のみの設定で、価格はセダクションが256.0万円(消費税込み、以下同)、エクスクルーシブが299.0万円となっている。

文:編集部 髙橋 明

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シトロエン公式WEB

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