BMW i8で箱根ターンパイクを突っ走る レポート:桂伸一

マニアック評価vol300

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短い試乗時間だったが、i8を味わい尽くした

箱根にある観光道路「マツダ ターンパイク箱根」をBMWジャパンが貸切占有し、BMWオールラインアップ試乗会を開催。そこで注目のi8に試乗してみた。

スクリーンデビューが先だったBMWi8は、映画の影響なのか、どこか未来的なスタイリングに目がいく。とくにリヤビューはエアの流し方に気を使い、リフトを抑えてダウンフォースとしている。個人的には気流をきれいに流すよりも、やはりスポイラー、ウイングの類による空力付加物によるダウンフォースのほうが説得力はあるし、造形的にも好み。速度に応じて競り上がるタイプに、BMW流の技を期待したが…。

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さて、コックピットに潜り込むと、前衛的なスタイリングからは一変、ビジネスライクというか、質実剛健というかBMW、いやジャーマンテイスト。ここはイタリアンに全面協力依頼したほうが魅力も色気も、味も香りも出ただろうに、と思う。外観から思い描く内装は…という意味では残念である。

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外観のイメージとは裏腹にインテリアは質実剛健。いかにもBMWらしいといえばらしいが…

電子音で起動しスタート準備OK。ドライバーの身長に関わらず、ベストなドラポジが得られるところは、さすがだ。モーターのみでスルスルと動き出す一連は、映像を見る方が実感が湧く。

エンジンが始動すると、十年くらい前にBMWのエンジニアから教えられた『エンジンサウンドは造るもの』というコメントが蘇る。3気筒が発する吸排気音ともメカニカル音とも違う、壮大なサウンドはBMWならではのもの。それは聞く人の感性に任せて、BMW的には何の音とは正式発表してないそうだが、エンジンサウンドフェチの身から言えば、間違いなくストレート・シルキー6の、ちょっとだけレーシング仕様的な快音だ。そのサウンドはアクセルペダルの微妙な開度と完璧にリンクして、まさにBMW M1レーシングあたりを操るかのようだった。

操縦性は、カーボンファイバーによる上屋の軽さと、バッテリーその他の類による低重心は過去に乗ったことのないフィール。腰から下で走りのすべてが決められた操縦安定性には、開いた口から漏れる言葉は、『すごい』しかない。

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ドライ路面のターンパイクをクルマの上から強力に押さえつけられた! のではなく、まるで路面から=地面から、引っ張られたかのように吸い付けられたまま旋回する運動性能の違いは過去のスポーツカーと一線を画す。

ブレーキ性能もノーズダイブとかテールリフトという印象ではなく、ブレーキペダル操作により路面と平行に引き戻されるような感覚。ペダルの踏力とストロークによる減速Gの立ち上げ、強弱のコントロール性の絶妙で繊細な操作性の上手さは、何においても操作系はこうあるべき、という手本。

当Webの枠と合わせても30分にも満たない試乗時間。しかしこれだけ充実した時間をクルマとともに味わえたことが過去にあっただろうか。そう思えるほど操作すること、そこから返ってくることのすべてが味わい深いひとときだった。

とはいえ、2000万円のi8のこの感覚が、一般庶民に味わえるようになるまで何年を要するのか、i3が進化してそうなるのか? 技術の進化が体感できる今日この頃だけに期待したい。

BMW公式サイト

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