【BMW】SPECIALIST海外試乗記 新型BMW3シリーズ 328iインプレッション 質感の向上と大幅な燃費の改善 by菰田潔(こもだきよし)

マニアック評価vol75

車格感が大幅に向上

2011年12月にスペインのバルセロナで開催されたインターナショナル・プレス・ローンチでフルモデルチェンジしたBMW328iスポーツに試乗してきたのでご報告しよう。

フルモデルチェンジとはいえエクステリアデザインは先代から大きく変貌したわけではないが、見た目がワイドになりコンパクトな3シリーズというイメージからワンランク上級車の印象になっている。キドニーグリルの8本の黒色格子は横から見ると「く」の字になり、フォグランプ周辺のデザインもスポーツラインは独自のものになっている。またリヤビューではテールパイプとバンパー下のバーの色が黒いクロームにしてあり、このグレードの持ち味であるスポーティな印象になっていた。

新型BMW3シリーズ試乗会はスペインで行われた

室内のスペースは広くなった。横幅はちょっと広くなり、後席のレッグルームもゆとりができた。全長が+93mm、ホイールベースが+50mmとなっているのが効いている。室内高は+8mmである。インテリアやダッシュボードの見た目の印象は、かなり質感が高められ、これならアウディに負けない品質感といえよう。iDrive用の大きなモニター画面はダッシュボード上面に突き出した薄くおしゃれなデザインで、直射日光が当たっても画面が見ずらくなることはない。

ダウンサイズ&低回転化された4気筒ターボ

イグニッションキーを挿す鍵穴はもう無くなった。キーはジャケットのポケットに入れたままで、あとはいつも通りシートベルトをして、ブレーキペダルを踏んだまま丸いエンジンスタート・ストップスイッチを一回押せば自動的にエンジンが目覚める。

今回試乗したのは328iという名称だが、エンジンは直列4気筒2.0Lのツインスクロールターボだ。このエンジンに組み合わされるのは8速ATで、セレクターは電子シフトになっている。3シリーズより先にフルモデルチェンジした1シリーズ、さらにその前に5シリーズも8速ATの電子シフトになっていたが、順当に3シリーズにも与えられたわけだ。

親指でセレクターレバーの横のボタンを押しながら一度後方に引けばDレンジに入る。きわめてストロークが短いので手首の動きだけでセレクトできる。反対にPレンジから横のボタンを押しながら前方に動かせばRレンジだ。エンジンを止めるときには、DレンジもRレンジでも、あるいはセレクターを横に倒したSでもMでもギヤが入ったままエンジンスタート・ストップボタンを押せばエンジンが止まり、同時に自動的にPレンジに入るのも電子シフトのメリットだ。エンジンを掛けたままPレンジに入れるには、セレクターレバーの頭のPボタンを押せばよい。

リヤビュー
大きなデザインチェンジはないが、質感は大きく向上した新型328i

低回転でのトルク感は2.0Lの排気量を感じさせない

セレクターをDレンジに入れてブレーキペダルをリリースすればクリープが始まる。トルクコンバータ式のメリットでこの辺の動きはスムースだ。アクセルペダルを踏み込んでいくと2.0Lとは思えない、まるで大排気量エンジンの感覚を思わせるトルク感で背中を押され加速が始まる。アクセルペダルを踏み込む分だけ加速力が高まる感触はなかなか良い。たった1250rpmという低い回転で350Nmという最大トルクを発揮できることを実感できる。

高速道路を100km/hで走っている時のエンジン回転数はわずか1700rpmだ。市街地走行では1200rpm〜1300rpmくらいで走るから、普通に走っている範囲では室内はとても静かだし、当然燃費もよいわけだ。

 

テストはスペインの一般道、サーキットで行われた

信号で停止中はもっと静かだ。オート・スタート/ストップ機能が作動して、アイドリングストップしてくれる。ブレーキペダルを緩めるとエンジンが掛かり、さらにブレーキペダルから足を放すとクリープが始まる。再始動のときの音もずいぶん静かになっている。

4気筒を感じさせないエンジンサウンド

サスペンションは従来モデルよりしなやかさを感じる。1シリーズと同様にダンパー/バネが入力分離方式によって、しなやかさとしたたかさを兼ね備えた感じだ。路面の不整にもしなやかな脚の動きでうまくいなし、ゴツゴツしないから快適性は格段に向上したといえる。

今回の試乗会ではカタルーニャサーキットも走ることができた。一般道を試乗しているクルマそのままでサーキット走行もどうぞ、というのはいつものBMW流である。

真横走り
ワンランク上の上級車クオリティとなった新型3シリーズ

ドライビング・パフォーマンス・コントロール(セレクターレバーの横のスイッチ)でスポーツプラスを選んで走る。DSC(ESP)はDTC(トラクションコントロール)優先になって、少々の横滑りは許容してドライバーに任せる。またATのシフトプログラムは高回転で変速するようになり、パワーステアリングは重く手応えが強くなる。

アクセルペダルを深く踏み込んでいくとエンジンが高回転になってビーンというサウンドになる。もちろん6気筒のサウンドとまではいえないが、普通の4気筒エンジンと比べサウンドが心地よく、回転も滑らかにしてある。これまでの6気筒を意識したBMWらしい4気筒サウンドである。ちなみに、タコメータは6500rpmからゼブラゾーン、7000rpmからがレッドゾーンになっている。

エンジン
新型BMW328iには2.0Lの4気筒ターボエンジンが搭載される

 

ピットロードエンドからアクセルペダル全開で加速していくと、7000rpm直前で自動シフトアップしていく。しかしここまで引っ張るより6300rpmくらいで、右手でパドルを操作してシフトアップする方がトルクの繋がりがよく、シフトアップしても加速力が持続する感じがした。走行を終わってからこのエンジンを担当したエンジニアに聞いたら、6500rpm以降は馬力の制御のためにトルクが急激に落ち込んでいるから、もっと手前でシフトアップするのは正解だという。つまりは、低回転での最大トルクを生かしてスポーティに走ることができるのだ。

サーキットでのコーナリングは常に安定性が保たれていた。最終コーナーは深く回りこんでおり、4速で走る高速コーナーだ。そこで緩いブレーキで前荷重にしてターンインしていくと、リヤがゆっくりと流れ出す。予定のラインに乗ったところでそのままアクセルペダルを踏み込むと、カウンターステアを当てなくてもゆっくりとリヤの滑りが収まっていくというドライビングができる。

タイトコーナーでもターンインが楽だった。フロントが軽い4気筒エンジンを搭載し、50:50にしてあることで確実にターンインはスムースだし楽なのが実感できる。これはワインディングロードでも感じることができた。ハンドリングの軽快感は抜群である。

コーナリングはしり
スペイン カタルーニャサーキットでテストドライブする 

 

今回の328iスポーツはオプションの前225/40R19、後255/35R19サイズのBSポテンザS001を履いていたが、前後同サイズの225/40R18を装着した「モダン」で走っても、この安定性とコントロールのしやすさは共通だった。

328iは350Nmを発揮できるが、ドライビング・パフォーマンス・コントロールでECOPROモードを選択すると最大トルクは250Nmに制限され、エアコン、シフトプログラムなどが省燃費のためのプログラムに切り替わる。だから、サーキットの激しい走りもできるが、250Nmのトルク、低ブーストに抑えたエフィシェントなドライビングも可能なのだ。

ちなみに250Nmとは通常のNA2.5Lエンジン相当のトルクは出ているわけだから遅いわけではないし、我慢のエコドライブをするという感覚にはならないのはいうまでもない。

菰田
モータージャーナリスト菰田潔氏

ニューBMW328i主要諸元

●排気量1997cc 4気筒ツインスクロールターボ ●全長4624mm×全幅1811mm×全高1429mm WB2810mm ●最大出力180kw(245ps)/5000rpm-6500rpm 最大トルク350Nm/1250rpm-4800rpm ●タイヤ&ホイール 225/50-17 7.5J(18,19インチ設定もあり) ●最高速度 250km/h ●CO2排出量 149g/km

COTY
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