アウディ 3モーターを搭載する電動クワトロ「e-トロンSモデル」解説

アウディは電動化の象徴として電気自動車モデルとして「e-tron(イー-トロン)」を前面に打ち出している。その第1弾が2019年にヨーロッパ、アメリカで発売したミッドサイズのクロスオーバーSUVの電気自動車「e-トロン クワトロ」だ。そして、第2弾が2020年内に登場が計画されている「e-トロン クワトロ スポーツバック」となる。

Audi e-tron S e-トロン クワトロ スポーツバック S」のプロトタイプ

電動化の第1弾「e-トロン クワトロ」

「e-トロン クワトロ」はMLBプラットフォームをベースに開発され、全長4901mm、全幅1935mm、全高1616mm、ホイールベース2928mmというEセグメントのサイズだ。前後アクスルにモーターを配置した電動クワトロで、フロント・モーターの出力は170ps/247Nm、リヤ・モーターは190ps/314Nm。動力性能は0-100km/h加速は5.7秒、最高速は200km/hというスペック。

「55クワトロ」は95kWh容量のバッテリーでLG化学製のセルを採用し、「50クワトロ」はサムスン製のセルを採用し71kWhのバッテリーを搭載している。ただ、バッテリーメーカーの供給体制に問題が生じ、「e-トロン クワトロ」の生産ペースは予定より縮小されている。

そのため、2020年に登場する「e-トロン クワトロ スポーツバック」と、より高性能な「Sモデル」、つまり「e-トロン クワトロS」、「e-トロン クワトロ スポーツバックS」とで、e-トロンのイメージの挽回を図る。

3モーターの「e-トロンS」モデル

「e-トロン クワトロ」、「e-トロン クワトロ スポーツバック」の両モデルに設定される「Sモデル」は、高性能バージョンと位置づけられる。電気モーター駆動のスポーツモデルにふさわしい、傑出した運動性能、俊敏性、圧倒的なトラクション性能を目指すモデルだ。

Sモデルは、電気自動車として世界初となる3個の電気モーターを搭載する。フロントに1個、リヤに2個搭載している。3個のモーターの合計ピーク出力は503ps、合計トルクは973Nmに達する。そのため0-100km/h加速は4.5秒、最高速210km/h(リミッター付き)いうスポーツカー・レベルの動力性能を持っているのだ。

3個のモーターのうち、フロントはAPA320型で、出力は169ps(ブーストモードで204ps)、リヤはAKA250型×2で、133ps(ブーストモードで179ps)×2となる。そしてこれらのモーターはモジュラー設計された非同期型・誘導式モーターであるのが特長だ。

この3モーターによる駆動システムは、十分な冷却システムを備えており、8秒間にわたって503psのフルブーストパワーと973Nmのトルクを繰り返し発生させることが可能だ。一方で、Dポジションで、ブーストモードでない場合は公称出力が435ps、最大トルクは808Nmになる。

3モーターによるクワトロ+駆動トルクベクタリング

「e-トロン S」モデルの駆動システムは、日常走行においては効率を最重視している。つまり通常の運転モードでは、リヤの電気モーターのみが駆動を担当し、フロントのモーターは休止状態になっている。ドライバーがより多くのパワーを求めた場合、瞬時に4輪駆動に移行する。

また、タイヤのグリップ低下を検知した場合も4輪駆動となる。つまり路面が滑りやすく摩擦係数が低い場合やスポーティなコーナリング中などに4輪駆動となるのだ。電動4輪駆動は、従来のスポーツデファレンシャルの機能を、電気的に作動するトルクベクタリングという革新的なテクノロジーへと進化させている。もちろん、4WD状態では前後のモーターの駆動トルクを精密制御することで、アンダーステア、オーバーステアを抑制する制御も盛り込まれている。

リヤのモーターはそれぞれ独立して、減速ギヤを介して駆動力を直接ホイールに伝達するため、機械的なデファレンシャル・ギヤは持っていない。クワトロ・テクノロジーの発売から40年を経て、アウディは4輪駆動の原理を、まったく新しいレベルへと引き上げたといえる。駆動トルクベクタリングが可能になった結果、より俊敏で自然なハンドリング特性が実現し、コーナリングスピードが向上している。

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