トヨタ 美容器具からのヒントで静電気塗装機を開発

トヨタは2020年3月12日、車体塗装工程で従来から使用しているエアスプレー式の塗装機に代わり、静電気を活用し空気を使わない新型の塗装機(エアレス塗装機)を開発したと発表した。

高効率のボディ塗装

このエアレス塗装機は、世界初の新技術を駆使することで塗着効率(塗装の際に噴霧した塗料に対して実際に車体に塗着する塗料の割合)を従来型の60%〜70%程度から、世界最高の95%以上に向上させる画期的な技術だ。

従来のエアスプレー式の塗装機は、主に空気の力で塗料を微粒化し、微粒化した粒子を車体にエアスプレー塗装する。このため車体から跳ね返った空気によって塗料の粒子が吹き飛ばされる現象が発生するため、塗着効率は60〜70%程度と留まっていた。

従来のエアスプレー式塗装

これに対して新型のエアレス塗装機は、電気で塗料を微粒化(静電微粒化)するとともに、静電気を帯びた粒子が車体に引き寄せられるように塗着(静電塗装)する。静電微粒化および静電塗装の技術により、微粒化された粒子の飛び散る量が大幅に減少し、塗装効率95%以上という高い効率を達成した。

新開発のエアレス静電気塗装

新開発のエアレス塗装の技術

開発された静電微粒化技術は、極少量の液体を吹き出す美容器具などで用いられているが、今回はその技術を車体塗装に応用した。

具体的には、塗装機の先端にある塗料の吹き出し口を円筒型にし、その先端に約600本の特殊な溝を作るとともに、円筒型ヘッドの回転で生じる遠心力により、塗料を溝に流れ込ませた上で静電微粒化。これにより、微粒化された塗料の粒子を静電気で車体に塗着させるという世界初の技術が実現している。

塗装機の先端の円筒型回転ヘッド

また車体の凹凸により円筒型ヘッドと車体の距離が変動することで、電流が不安定となるが、このエアレス塗装機は電流のばらつきを常時監視して、電圧を自動制御することで、円筒型ヘッドと車体の距離を約10cmに保ちながら、一定の電流で静電微粒化と静電塗装ができるようになっている。これにより、塗料粒子の大きさのばらつきを回避することができ、高品質な塗装を実現している。

高精度な電流制御による高品質塗装

この新開発のエアレス塗装機の導入により、トヨタ・グループの塗装工程におけるCO2排出量が7%程度削減できる見込みだ。さらに塗装ブース(塗料を吹き付けるエリア)の下部にある未塗着塗料の回収装置を小型化することができるため、今後は塗装ラインのコンパクト化が可能となるというメリットもある。

Twitter:https://twitter.com/autoprovenet
facebook:https://www.facebook.com/autoprovepage/
Youtube:https://www.youtube.com/user/autoprove/

トヨタ 関連記事
トヨタ公式サイト

ページのトップに戻る